温泉クンの旅日記

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両神温泉(2) 埼玉・秩父

2014-01-19 | 温泉エッセイ
  <両神温泉(2)>

 三時少し廻ったところで、国民宿舎「両神荘」にチェックインした。



 入り口を入ってすぐ右のところに喫煙室があったのを横目で確認しておく。公営は最近どこも全面禁煙にしているのにもかかわらず、喫煙場所の案内はまずしてくれないので自分で探しておかねばならないのだ。



 わたしに用意された部屋は本館の一階の部屋だった。年季のはいった建物だが、掃除の行き届いた広さも充分な部屋だ。窓の外は、内庭が静かに広がっている。
 窓を開けると、そこにあるのは山の冷気だけである。
 距離的にそれほど遠く旅してきたわけでもないのに、人里離れた山間の宿でいかにも静かだ。

 荷をおろし、あっという間に着替えるとまずは温泉に向かった。
(なんだ、ずいぶんと先客がいるなぁ・・・)
 脱いであるスリッパの数をみて、ちょっと、というより一番の客だと信じていたわたしは思い切りがっかりする。
 脱衣所のなかをざっと視線を走らせると浴衣が見当たらない。両神荘は客がチェックアウトしたあとの昼前から午後八時まで日帰り客を受けいれているのである。



(うわっ! つるつると滑る。これは気をつけないと危ないぞ!)
 タオルを持って浴室にはいって、歩きだしてすぐ転びそうになって慌てた。さすがに強アルカリ性(PH9.2)のメタホウ酸の温泉である。
 内湯のへりまで辿りつくと、いつも通りにたっぷり掛け湯をしてから浴槽に身体を沈めた。日帰りの湯とは違い、濃密な温泉に抱きすくめられた。

 内湯には先客がひとりしかいない。ということは、他の先客はみな露天風呂ということになる。まあいい、露天は日帰り客が帰ったあとにゆっくり楽しむことにして部屋で一杯やることにしよう。

 朝の露天風呂は、檜風呂であった。



 内湯は温泉の泉質のせいでだが、露天は浴槽までの通路の白いマットがところどころ凍っていて、こちらも危なく転倒しそうになる。



 温泉での朝風呂は、なんとも贅沢きわまりない。
 枝に、しぶとく残った季節はずれの赤い柿の実にまだ小さな晩秋がしがみついている。



 顔と首筋をなぶる山の冷気が、わたしをどうにも温泉を去りがたくさせる。

 内湯も露天風呂もかけ流しということであるが、内風呂より露天風呂の温泉のほうが断然いい。
 到着後にいったときに露天から誰も戻ってこなかったのも、そりゃそうだとわかる。昨日の露天は岩風呂で、予想通り、日帰り客が引きあげた夕食後に独占状態ではいったのであった。

 

 この宿だが全面禁煙、風呂は滑りやすいのと部屋の暖房の効きが良くないの三つが要注意事項だ。
 あと、食事を簡単に書いておく。
 夕食はご想像通り、山の幸、川の幸など地元の素材を使ったヘルシーかつシンプルなものである。
 ただ他にもバイキングで食べられる料理がいくつか用意されていて、そのなかの鉄鍋でぐつぐつ煮えている「おっきりこみうどん」が熱々なので寒い日にはなんともありがたく、丼で二杯も平らげてしまった。
 朝食は和食のバイキングで、こちらも悪くない。ご飯がすすむ菜が揃っておりわたしは二杯食べた。

 格安の料金では、申し訳ないような温泉旅を満喫してしまった。秩父もこれでちょいと見直してしまったので、ときどき秩父方面を訪れてもいいな、と思う。

 そうだ。どうせ、今日の予定は所沢で呑むだけだし、昨日寄った日帰り温泉施設の大広間で、寝転がってゆっくりその作戦でも練るとするか。




   →「両神温泉(1)」の記事はこちら
   →「所沢で痛飲」の記事はこちら

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