温泉クンの旅日記

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釧路、幣舞橋界隈(1)

2020-05-03 | ぶらり・フォト・エッセイ
  <釧路、幣舞橋界隈(1)>
 
「ぬさまいばし、ぬさまいばし、ぬさまいばし・ぬさまいばし・ぬさまいばし・・・」
 呪文のように、繰返し繰返し呟いた。

 

 周りに人がいないからいいようなものの、真昼間から酒臭い息を撒き散らしてひたすらお題目を唱える狂信者みたいで、もしも聞かれたら、相当アブナイ奴とドン引きされるだろうな。

 

 釧路川の下流に架かる、釧路駅前に続くメインストリートの橋「幣舞橋(ぬさまいばし)」である。<幣>という字は実に難しいのだが、気を抜くとわたしは別の読み方の「しで」と読んでしまう。だからこの際一気に覚えてしまおうと、声にだして唱えたのである。

 台風などの天気中継で、新潟は萬代橋(ばんだいばし)、釧路はこの幣舞橋からの映像を定番で流すので行ったことがなくても馴染みがあるだろう。
 幣舞の名前はアイヌ語の「ヌサ・オ・マイ(幣場の・ある・ところ)が由来で、幣場とは、神を祀るためのイナウ(木幣)を立てて並べて祭祀などの儀式を行う場所だそうだ。
 明治22年(1889年)、全道一長い有料の木橋として架けられた「愛北橋」を前身として、明治33年(1900)に初代の幣舞橋が誕生、現在の橋は五代目として昭和51年(1976年)に建設された。

 

 

 ヨーロッパスタイルの橋で、レトロな街路灯と欄干に配置された「春夏秋冬」のブロンズ像をアクセントとして、黄昏時の夕陽、夜のライトアップ、霧に包まれた橋影など、撮影スポットと腕とカメラしだいで幻想的な画像をものすることができそうだ。札幌の豊平橋、旭川の旭橋と並び北海道三大名橋(日本百名橋も)のひとつである。

 

 今日は素泊まりのため、朝食用の焼き立てパンをゲットしようと、橋のたもとにある洒落た建物「釧路フィッシャマンズワーフMOO」に寄ることにした。
 施設の名称が、釧路と同じく霧で有名なサンフランシスコのフィッシャマンズワーフに由来しているので、行ったことが一度だけあるわたしはついつい期待してしまったが、道の駅の大型バージョンくらいと思ったほうがいい。
 広い館内はなんともがら空きでひと気がなかった。曜日か時間帯のせいなのかもしれない。二店舗あるというパン屋も目当てにしていたほうの一軒は撤退してしまっていた。
 一階裏側に喫煙室をみつけて入っていくと、エキゾチックな顔立ちのアジア人の若者一団が屯していた。酪農関係の技能実習生かもしれない。釧路にはあの「よつ葉」もあるしね。
 隅っこに座り一服だけすると、とりあえずチェックインして軽い昼寝でもするかと橋の下を潜りホテルに向かった。

 

 

 おっ! 川の対岸の、あのあたりの建物からだったら望遠使えば橋のいい画像が撮れそうだな・・・。

「ん!」

 

 頭の上あたりでアラームがぶるぶると振動して、目をパッチリ覚ます。

 

 熟睡したおかげで、和商市場で呑んだカップ酒もすっきりと抜けたようである。
 では、釧路の夜の街に繰り出すとするか。
 外で呑むのも久しぶりである。懐に余裕があれば(もちろん無い)、豪勢に釧路発祥の炉端焼き老舗店の暖簾を潜ってキンキでも焼いてもらい毟りながら一杯といきたいところだ。


   ― 続く ―


  →「釧路、和商市場で昼餉」の記事はこちら


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