温泉クンの旅日記

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武雄温泉 佐賀・武雄

2006-06-22 | 温泉エッセイ
 < 楼門のある温泉 >

 あれほど激しかった雨脚も熊本、福岡を過ぎ、佐賀県にはいったところで小雨
ていどに落ち着いた。

 サービスエリアで雑誌をパラパラめくって、朝食つきで一泊五千五百円の宿を
みつけ電話した。一回の電話で予約がとれて、なぜか心が弾んでしまう。いかにも
単純であるが、素直に嬉しかった。武雄の温泉街にある楼門を目印に来てくれれば
すぐ宿はわかるとのことだ。宿の名前も「楼門亭」というから同じ場所にあるのだ
ろう。



 武雄温泉の街にはいり、温泉ホテルらしい建物に沿って車を走らせていくと朱塗
りの大きな楼門があった。朱も鮮やかで、どちらかというとまだ真新しい。
 とりあえず、雨もあがったようだ。
 大きめの駐車場が楼門の横にあり、そこに車を進めていくと係員が停める場所を
案内してくれる。入浴客は駐車場に車をとめて、楼門裏の共同浴場にはいるらし
い。八割がたのスペースが埋まっている。癖で、さあっとナンバーに眼を走らせ、
横浜ナンバーの車を目ざとくみつけてしまう。おぬしもやるのう、と苦笑いが浮か
ぶ。
 係りに、共同浴場の利用ではなく今日の宿泊だ、と言うと奥のほうに一台分確保
してあるとのことで、宿泊者専用のスペースに案内してくれた。

 先払いでチェックインをすませ、部屋に案内される。
 入り口のドアが安手のものだが、部屋は八畳でトイレも完備していたので不足は
ない。さっそく宿の温泉にはいって汗を流したが、どこにでもあるありふれた湯の
ようで期待が外れ、肝心のこちらは不足がたっぷりあった。まあ、共同浴場にでも
あとでいってみよう。
 
 受付で夕食がとれそうな近場の店を尋ねると、楼門の下に小さな食堂があると
いう。雨があがったとはいえ、あいかわらず泣き出しそうな空模様であるので、
その見るからに場末の食堂でディナーをとることにした。
 四人掛けのテーブルが三つ、カウンターが四人、小上がりの座敷が六人ぐらいの
小さな食堂で夕食時というのに誰も客がいない。
 座敷にあがり、おでんを肴に芋焼酎の水割りをジョッキで呑んだ。

 この店は、どちらかというと出前でなりたっているようだ。注文の電話がはい
り、手早くチャッチャッと調理するとオカモチを持って飛び出していく。すべて
ひとりで切り盛りしているようだ。
 取り残されてひとり呑んでいるわたしは、電話が鳴ったりすると変に落ち着かな
い。電話にでて注文を受けてやろうか、などと考えて酔いが回らないのである。
 それに、走り帰ってくるタイミングを計って、こちらも呑みきってお代わりを
注文しなければならない。
 作業着のひとがはいってきて、勝手にビールをだしてコップに注いだりして
いる。きっと常連なのだろう。
 その不思議な食堂で、結局四杯の芋焼酎をおでんと焼きそばで呑み、夜食用に
おにぎりを一個持ち帰りにしてもらった。

 朝、入浴券をもらい下駄をカラコロ鳴らして元湯へいった。



 昨夜、楼門下の食堂から部屋に帰って呑みなおして寝入ってしまい、共同浴場へ
いけなかったのだった。
 平屋づくりなのに、浴場へはすこし階段をおりるようになっている。天井が
高い。
 長方形の浴槽は熱めと温め二つに分かれていた。温めでも四十二度から四十三
度、熱めは四十四度から四十五度ある。温めでも充分に熱い。生まれたての、噛み
付いてくるような活きのいい温泉だ。全身で、ゆっくり、古の歴史を持つ武雄の
温泉を満喫した。
 熱めのほうは脚の先ぐらいを沈めたあたりで、あまりの熱さに断念してしまう。
そこに、地元のひとは平気ではいっているのだから舌を巻いてしまう。

 あがると、さすがにたっぷり堪能したせいかどうにも汗がひかず、思わずよく冷
えた牛乳を買ってゴクゴク喉を鳴らして飲み干してしまう。
 宿の部屋にもどると、そのまま一時間ほどダウンしてしまった。

 湯当たりで珍しくダウンしたお陰で、いつもより一時間遅れの出発となった。駐
車場で老夫婦が写真をとっていたので車を停め、とりましょうかと二人の写真を
とってあげた。たまにはさりげなくいいこともしよう。べつに急ぎ旅ではないので
ある。

 大型の台風が近づいている。とりあえず今日は九州を出ることにしよう。
 昼前、九州最後の古賀サービスエリアで、好物である大宰府の「梅が枝餅」を
焼いて売っていたので、焼き立ての香ばしいのを一個買ってハフハフいいながら
食べた。

 めったに甘いものを食べないせいか、その甘さで身体に元気が湧いてくる。じや
あな、また来るぜ、九州。アアそう呟くわたしは、まったくもって安あがりイな
人間なのであった。

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