温泉クンの旅日記

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人の盆

2006-06-22 | 旅エッセイ
 < 人の盆 >

 風の盆。
 ・・・・・・なんという魅惑的で痺れる祭りの名称であろう。
 字づらにもため息がでる。だらだら祭り、がま祭り、へそ祭りとかと比べて
欲しい。(スミマセン)

 昨年の<おわら風の盆>は、九月の最初の三日間が週末に運良く重なった。
 夕方の富山駅の混雑は、休日のディズニーランド状態と化していた。四列で番が
くるまで羊のようにおとなしく一時間ほど待って、やっと乗車した臨時電車は、
朝の山手線のラッシュと変わらない。冷房は無く、カラカラ空しく回る扇風機の
下で汗だらだらで八尾の駅に向かう。すでに超満員なのだが途中駅で続々と人が
乗り込んでくる。

 駅に転げ降り立ち、道一杯に隙間無くウジャウジャぞろぞろ同じ方向に歩き
出す。
 道の両側には屋台が連なっている。延々長蛇の列で、どえらく繁盛している店が
あちこちにあるなと思ったら、仮設トイレであった。
 これを見た瞬間、祭りの楽しみのひとつである屋台の飲食物のことは頭からスッ
パリと締め出した。秒読みの最終臨戦態勢でありながら、長い列の最後尾に悠揚に
並ぶなどという気は自分には毛筋ほども無い。



 八尾は細い坂の町である。
 人の群れがびっしり広がってその坂を上がっていく。
 見終わって満足した帰りの少数の人群れが、その流れに逆らって駅方向に下って
くる。足を踏まれる。前方のどこかで<おわら>が踊りはじめると、人の川が急激
に滞留して溢れ、フラッシュや、止まるなあ進めどうなってるんだあ、と怒号が
飛び交う。やむなく神社のようなところで遠くから<おわら>をちょっとだけ
見て、わき道に逃げ込んで帰ったのだ。

 胡弓の澄んだ音色、唄い手、囃子方、太鼓、三味線が、<おわら>を奏で、揃い
の浴衣に顔を絶妙に隠した編み笠の女性の踊り手たちが、夜の坂の町をゆっくり
典雅に流す。
 そんな心に残る幻想的な風の盆をみるには、深夜とか前夜祭とかがよさそうで
ある。

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