<京都・鞍馬、貴船神社(1)>
「出町柳」駅からえいでん(叡山鉄道)に乗り込んだ。
目指す「貴船口」駅までの所要時間は、約三十分である。いつものように本を取り出すことはせずに、車窓を過ぎる風景をぼんやり眺めていくことにした。
「あれっ!」
ひとつ手前の「二ノ瀬」駅近く、見覚えのある四阿(あずまや)が配された日本庭園が右側に現れて驚く。
たしか紅葉の穴場スポットとしてテレビ番組で観たことがある「白龍園」だ。
ふむ。こんなとこにあったのか・・・、いつか来てみようと心に刻む。ただしこの庭園だが年に二回、桜と紅葉の時期(春と秋)しか公開されない。
貴船口駅を降りると、運よくすぐバスがきたので迷わず乗りこんだ。徒歩で二キロ(約30分)だが、昇りの坂道である。歩くか悩むなら、帰りの下りのときがよさそうだ。ちなみに大原の三千院から貴船神社は、車だと二十分足らずの距離である。
バスを降りると、鴨川の源流のひとつである、清らかな流れの貴船川沿いの道を上っていく。
貴船川では、夏は耳を澄ませば鹿に似たカジカガエルの鳴き声が聞こえ、夜になれば、闇の中にほのかに浮かぶゲンジボタルの光がみられるそうだ。
(あ、鳥居! あそこだ・・・)
全国に約五百社の分社を持つ、貴船神社の総本宮である。水の神を祀っていることから、神域に湧き出す清らかな水がいつまでも濁らないようにという祈りを込めて、「きぶね」ではなく「きふね」と呼ぶ。
創建は不詳だが、千三百年以上前といわれている。ご利益は、心願成就、縁むすび、家内安全など。
参道の石段、朱塗りの春日燈籠が遥か山門までずらりときれいに並んでいる。
(シャッターチャンスとはこのことだな)
後ろには参拝客が迫っているが、前は山門まで人の気配が消えた偶然の一瞬だった。この燈籠に火が灯るころはきっと幻想的なことだろう。
若いカップルが追い抜いて石段を勢いよく上がっていく。この時間帯の参詣とは、二人とも早起きだなと感心する。ミニスカートからスラリと伸びた足元が厚底靴なのをみて、今にも足首を捻りそうだなぁと心配してしまう。
そういえば昨日も今日も、厚底靴を穿いた女性を四条とか祇園とかの街中で見かけた記憶がある。今年の流行りかしらんが、寺社参りの多い京都観光に厚底は絶対にむかんぞ。
山門をくぐると前方に、手水舎と、拝殿、奥に本殿、さらにその奥に權殿がある。
手水舎横の白馬と黒馬の像だが、歴代天皇が勅使を派遣して、晴れを望む時には白馬を、雨を望む時には黒馬が奉納されていた。後になり、生きた馬に変わって木の板に描かれた馬が奉納されるようになったことから「絵馬」が始まったといわれている。
貴船神社の参拝には三社詣という慣わしがあり、貴船山の麓にある「本宮」、「奥宮(おくみや)」、「結社(ゆいのやしろ)」の順番でお参りする。
本宮は、創建の地である奥宮が洪水で流され、天喜三年(1055年)に移築された。御祭神は、水の神様といわれる“タカオカミノカミ”。
拝殿前の石垣から溢れ出る御神水に浮かべると、文字が浮かぶ「水占(みずうら)みくじ」が有名だ。吉凶が表われたおみくじは、乾くとまた文字が見えなくなる。
本宮における休憩所の役割だという「龍船閣」。
北門を抜けて北参道を次の奥宮に向かう。奥宮までの距離はたしか五百メートルと聞くが、傾斜のある昇りなので思った以上に時間が掛かる。
途中で見事な御神木やら大石に出逢ったが、その都度いかにも観賞するような顔で、ちゃっかり休憩タイムとして活用したのだった。
幹回り約十メートル、樹高三十五メートル、樹齢千年という仲良しの相生杉。
「貴船石」は火山の噴火物が固まったもので、「鞍馬石」「紅賀茂石」などと同じく賀茂七石のひとつであり、“庭石の最高級品”とされる貴重な石だそうだ。
高さ四メートル半、重さ四十三トン以上もの、「つつみヶ岩」と呼ばれる貴船石。
― 続く ―
→「京都、大原三千院(1)」の記事はこちら
→「京都、大原三千院(2)」の記事はこちら
「出町柳」駅からえいでん(叡山鉄道)に乗り込んだ。
目指す「貴船口」駅までの所要時間は、約三十分である。いつものように本を取り出すことはせずに、車窓を過ぎる風景をぼんやり眺めていくことにした。
「あれっ!」
ひとつ手前の「二ノ瀬」駅近く、見覚えのある四阿(あずまや)が配された日本庭園が右側に現れて驚く。
たしか紅葉の穴場スポットとしてテレビ番組で観たことがある「白龍園」だ。
ふむ。こんなとこにあったのか・・・、いつか来てみようと心に刻む。ただしこの庭園だが年に二回、桜と紅葉の時期(春と秋)しか公開されない。
貴船口駅を降りると、運よくすぐバスがきたので迷わず乗りこんだ。徒歩で二キロ(約30分)だが、昇りの坂道である。歩くか悩むなら、帰りの下りのときがよさそうだ。ちなみに大原の三千院から貴船神社は、車だと二十分足らずの距離である。
バスを降りると、鴨川の源流のひとつである、清らかな流れの貴船川沿いの道を上っていく。
貴船川では、夏は耳を澄ませば鹿に似たカジカガエルの鳴き声が聞こえ、夜になれば、闇の中にほのかに浮かぶゲンジボタルの光がみられるそうだ。
(あ、鳥居! あそこだ・・・)
全国に約五百社の分社を持つ、貴船神社の総本宮である。水の神を祀っていることから、神域に湧き出す清らかな水がいつまでも濁らないようにという祈りを込めて、「きぶね」ではなく「きふね」と呼ぶ。
創建は不詳だが、千三百年以上前といわれている。ご利益は、心願成就、縁むすび、家内安全など。
参道の石段、朱塗りの春日燈籠が遥か山門までずらりときれいに並んでいる。
(シャッターチャンスとはこのことだな)
後ろには参拝客が迫っているが、前は山門まで人の気配が消えた偶然の一瞬だった。この燈籠に火が灯るころはきっと幻想的なことだろう。
若いカップルが追い抜いて石段を勢いよく上がっていく。この時間帯の参詣とは、二人とも早起きだなと感心する。ミニスカートからスラリと伸びた足元が厚底靴なのをみて、今にも足首を捻りそうだなぁと心配してしまう。
そういえば昨日も今日も、厚底靴を穿いた女性を四条とか祇園とかの街中で見かけた記憶がある。今年の流行りかしらんが、寺社参りの多い京都観光に厚底は絶対にむかんぞ。
山門をくぐると前方に、手水舎と、拝殿、奥に本殿、さらにその奥に權殿がある。
手水舎横の白馬と黒馬の像だが、歴代天皇が勅使を派遣して、晴れを望む時には白馬を、雨を望む時には黒馬が奉納されていた。後になり、生きた馬に変わって木の板に描かれた馬が奉納されるようになったことから「絵馬」が始まったといわれている。
貴船神社の参拝には三社詣という慣わしがあり、貴船山の麓にある「本宮」、「奥宮(おくみや)」、「結社(ゆいのやしろ)」の順番でお参りする。
本宮は、創建の地である奥宮が洪水で流され、天喜三年(1055年)に移築された。御祭神は、水の神様といわれる“タカオカミノカミ”。
拝殿前の石垣から溢れ出る御神水に浮かべると、文字が浮かぶ「水占(みずうら)みくじ」が有名だ。吉凶が表われたおみくじは、乾くとまた文字が見えなくなる。
本宮における休憩所の役割だという「龍船閣」。
北門を抜けて北参道を次の奥宮に向かう。奥宮までの距離はたしか五百メートルと聞くが、傾斜のある昇りなので思った以上に時間が掛かる。
途中で見事な御神木やら大石に出逢ったが、その都度いかにも観賞するような顔で、ちゃっかり休憩タイムとして活用したのだった。
幹回り約十メートル、樹高三十五メートル、樹齢千年という仲良しの相生杉。
「貴船石」は火山の噴火物が固まったもので、「鞍馬石」「紅賀茂石」などと同じく賀茂七石のひとつであり、“庭石の最高級品”とされる貴重な石だそうだ。
高さ四メートル半、重さ四十三トン以上もの、「つつみヶ岩」と呼ばれる貴船石。
― 続く ―
→「京都、大原三千院(1)」の記事はこちら
→「京都、大原三千院(2)」の記事はこちら
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