温泉クンの旅日記

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最強のタンメン

2014-11-26 | 食べある記
  <最強のタンメン>

 横浜の名物といえば、まずシウマイが思い浮かぶのではないか。
 シウマイが名物で別に文句はないのだが、浜っ子としては横浜を語るにどうしてもタンメンの話を避けて通れない。決してサンマ―麺ではないのだ。

 その昔、横浜には「三幸苑(さんこうえん)」派と「一品香」派のタンメン二大派閥があった。まあ、わかりやすく言えばスタミナ志向の肉食系男子、オジサン達はワイルドな三幸苑派に、女性と草食系男子が若干洗練された一品香派に属していたのだ。基本的にどちらのタンメンもあとを引き美味しいのだが、ニンニクの量がまるで違う。



 三幸苑派オジサンのなかにはタクシー運転手も実に多かったのは、明け方まで眠らずに車を転がす元気な体力を付けるためだろう。
 わたしは、もちろんバリバリの三幸苑派である。麻雀に十年間くらい打ちこんでいたので、徹夜前に食べ、徹夜明けにまた食べたりしたのだ。

 たいていは大盛タンメンに餃子二人前、たまに餃子ライスにタンメンスープとか、焼きそばに餃子にタンメンスープを頼んでいた。若いから良く食べたものである。タンメンスープは、タンメンの麺なしで、いまはメニューにはないかも知れない。
 最近ではタンメンと餃子を注文し、焼きそばを土産で一人前頼む。焼きそばは持ち帰って温めれば翌日の夜くらいまで旨い。ライスを付ければ最高だ。



 いつも餃子が先に届くので、熱々のニンニクが効いた餃子を自家製のラー油たっぷりの醤油を付け、はふはふ齧りながらタンメンを待つ。



 白菜、ニラ、もやし、豚肉を炒めて、長葱や林檎が浮きたぶん生姜も入った寸胴からニンニクたっぷりのスープを注ぎ、野菜がしんなりするまで煮たところで、用意した麺の上にどっさりと載せる。東京のタンメンのシャキシャキ野菜とはまるで違うのだ。



 三幸苑のタンメン、餃子、焼きそばの三つはどれも野性的でニンニクパンチがもの凄い。それに白菜、韮なども加わるので、翌日の昼過ぎまで恐ろしく臭い息が続くのだ。二日酔いならぬ二日臭いのである。
 あの頃の横浜のタクシー運転手の多くが口数少なく無愛想だったのも、ジツは数時間前に三幸苑のタンメン餃子を喰ったためではなかっただろうかとわたしは睨んでいる。ブレスケアなんて洒落たモノなかったしね。

 日本酒の二日酔いと重なって翌日の朝に通勤電車に乗ろうものなら冗談抜きで悶絶者が続出する。ドラキュラ伯爵などひと息で昇天するくらい臭い。歩く毒ガス兵器みたいなものだ。
 デートで待ち合わせしてひと言「はーい! お待たせ」と言えば、顔色変えた彼女は鼻を押さえ、次の瞬間くるっとまわれ右して、あっぱれ飛脚に変身、一陣の風となって駆けだして雑踏に紛れ、二度と携帯がつながることはないだろう。
 カップルで食べるためには、まずは一品香から入門して三幸苑に進むのがよろしい。

 そんな知る人ぞ知るだった三幸苑も、タンメン焼きそばがマスコミに度々取り上げられて、行列のできる有名店になってしまった。そうして、野性味ワイルド味が多少薄れていってニンニクの量もだいぶ減ったようだ。まあ、それでもオリジナルな部分も残っていて充分旨い。洗練されてきた、と理解するしかない。

 どうしても、あの頃のワイルドな原型タンメンが食べたいのなら、本店で寡黙に餃子を焼き続けたお兄さんが平塚に暖簾分けした店があるのでそちらで試すのがいいだろう。

 食べある記を書き始めてからだいぶ経つ。
 当初は旅先でのことに限定していたのだが試行錯誤を繰り返し、酒場の話を書いたり、東京とか横浜とかの近場の食べものも書くようになってしまった。

 であれば、この横浜の野毛にあるどえらく長い付き合いの「三幸苑」はもっともっと早く登場してしかるべきであった・・・。
 とにかく、いつも皿や丼が運ばれてくると、画像を撮るのをコロッと忘れて夢中で食べ始めてしまったためである。(記事にした今回ですら画像が少ない! しかも餃子は半分ランチセットでした)


  →「一品香の湯麺餃子」の記事はこちら


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