温泉クンの旅日記

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梅ヶ枝餅 福岡・太宰府

2010-12-08 | 食べある記
  <梅ヶ枝餅>

 ご存知、学問の神様「菅原道真」公を祭神として祀り、日本全国から参詣者を集める大宰府天満宮である。





 道真は梅がことのほか好きだったという。ちなみにこの天満宮のお神酒は梅酒だ。
 飛梅(とびうめ)は、太宰府天満宮の神木として知られる梅の木である。



 大宰府へ左遷された道真が京の都を発つときに、庭に立っている梅に対して、

   東風ふかば にほひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ

 と歌った。

 その梅は、道真のあとを慕って京の都から一夜にして飛んできたという。
 白梅で樹齢千年を超え、太宰府天満宮に植えられた梅のなかではいちばん先に咲き始めるとされている。

 梅つながりではないが、この大宰府天満宮の名物だが梅ヶ枝餅という。
 梅ヶ枝餅(うめがえもち)は薄い餅の生地で餡子をくるみ、梅の刻印のある鉄板で焼く焼餅である。梅の味や香りはしない。
 餅の名前の由来はいくつかあるが、道真が左遷された直後に軟禁状態で、食事もままならなかったときに、軟禁されていた部屋の格子ごしに老婆が道真の好物の餅を差入れする際に手では届かず梅の枝の先に刺して差し入れたといい、これは絵巻にものこっているそうだ。



 太宰府駅から続く表参道から境内の奥まで梅ヶ枝餅を扱う店が多い。



 わたしの贔屓の店は、裏手にある茶屋「お石茶屋」である。

 ある年、九州出張を終えてめったに九州など来られないからと、二日市温泉の大丸別荘という割と高級なところに泊まったことがある。
 突然の雨に打たれてずぶ濡れの黒っぽいスーツにぱんぱんに膨れたビジネスバッグ、それに飛び込みのひとり客だったせいなのか宿がひどく警戒したようで、部屋の係りが食事中もずっとつきっきりであった。
 もしかしたら会社の金を横領しての逃避行で、首でもくくられたらいけないと思ったのかもしれない。そのころはまだ、ひとり旅が珍しいころだったのである。
 係りの女中はいろいろと探りをいれてきていたのだが、やがて誤解もすっかりとけたのだろう打ち解けてきて、東京に帰る前に近いので大宰府天満宮でも寄っていかれたらと薦められたのだった。
 そのときに梅ヶ枝餅を食べるならぜひ一番奥にある「お石茶屋」でと言われたのだった。以来、この茶屋に来たのは三度目か四度目になるのだ。

「あら、もう営業終了!?」



 本日閉店の看板をみて蒼くなった。勘弁してくれよ、もう、そんな時間か。
 焼き場あたりのガラス戸越しにきょろきょろ覗いてみていると、店のひとがでてきた。
 はるばる横浜から来たのでぜひとも食べさせてほしい、と泣きつこうとしたら、



「いま最後の客の分焼いているけど、いくつ焼きますか」
 いやあなんと、助かった。たまらなく嬉しい。
「えっ、いいんですか。では、二個お願いします」
「では、店のなかで待っていてください」
 いそいそと店にはいって待つことにした。
 最後の客は親子連れの二人であった。出来上がって持ってきたのは紙包みであり、どうやら持ちかえるようだ。

「はい、こちらは二個お待たせしました」
 熱々の出来立てが二個だ。
 焼きたてをそのまま食べると、周りの餅の表面がパリっとしてとても香ばしい。
 中の餡子の甘さもほどよくて、餅にマッチしてくどくない。いかん、つい写真をとるのを忘れて一個パクついてしまった。



 わざわざ入れていただいたありがたいお茶で、あっというまに平らげた。大満足だ。

 この「お石茶屋」について、歌人吉井勇は次のような歌を詠んだそうだ。

   太宰府の お石の茶屋に 餅くへば 旅の愁ひも いつか忘れむ

 吉井勇のほかにも野口雨情、犬養毅、佐藤栄作などがこの茶店を贔屓にしたという。



 ここが有名な茶店かどうかはともかく、わたしはここの梅ヶ枝餅がとにかく気に入っているのだ。


  →「二日市温泉」の記事はこちら


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