夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

臥乕之図 大橋翠石筆 その8

2018-09-11 00:01:00 | 掛け軸
大橋翠石の真作を蒐集することは至難の業・・・。贋作が多いこと、値段が高いこと、人気があることが大きな理由ですが、当方では懲りることなく、弛まぬチャレンジしています

さてそこで今までに蒐集した大橋翠石の作品を再び改めて整理してみました。

小生が最初に入手した大橋翠石の虎の作品は下記の作品です。

正面之虎 大橋翠石筆 その1
絹本着色軸装収納箱二重箱 所蔵箱書 軸先本象牙 
全体サイズ:横552*縦2070 画サイズ:横410*縦1205

*写真は部分写真ですので詳しくは投稿されている他の記事を参考にして下さい。



出来が良い作品だと思いますが、それほど高価な金額でもない価格で入手したものです。

投稿したブログへのコメントや調べた結果:
大橋翠石の分類A:青年期から初期の頃の作品と断定しました。大橋翠石の明治時代作品で、箱書は大正時代初期の為書であり旧作と箱に題しています。

大橋翠石の分類A 

A.青年期から初期 :1910年(明治43年)夏まで  ~46歳
点石翠石 :「石」字の第四画上部に点が付されている。
       1910年(明治43年)夏まで翠石の字をみると石の上に点がある。
       つまり明治43年の46歳までこの点が入っている。
画風   :南画画法によって虎の縞で形を作り描いている。
     (輪郭線を描かない)毛書きは白黒で描かれているために全体には薄く白っぽく見える。
      さらなる特徴として背景がない。

当方の所蔵作品 :「正面之虎」(青年期) 真作          
         「狸図」(初期)    真作 
         「狸図」はブログ記事参照・・「鍵石」という「石」の書体
   

分類Aの次の時期を分類Bとし、さらにその中を1期、2期と文献では分類しています。

B.中間期:1期ー1910年(明治43年)~1922年(大正11年)46歳~58歳 
      2期ー1922年(大正11年)~1940年(昭和15年)58歳~66歳

1期の特徴
翠石   :二文字とも同じ大きさ 
( 1期 )1910年(明治43年)~1922年(大正11年)
*大正元年、須磨に移住。
画風( 1期 ):墨で縞を描くのは変わらないが、地肌に黄色と金で毛書きをし腹の部分は胡粉で白い毛書きがしてる。全体には黄色っぽく見える。背景は少ない。
所蔵作品 :本日紹介する「臥乕之図」…後述の作品です。

2期の特徴
翠石   :石の文字が太い
( 2期 )1922年(大正11年)-1940年(昭和15年)
*須磨様式時代直前
画風( 2期 ):虎に赤い綿毛が下に塗ってある上に金で毛書きが施されており、全体に赤っぽく見える。この当時に描かれたものは「樹間之虎」「月下之虎」「山嶽之虎」など背景があり、樹木や岩山や笹などの描写は洋画的雰囲気がある。

所蔵作品  須磨様式初期 「双虎之図」        真作            
             「親子虎」 明治40年?  (調査中)
             「福羊之図」玉置頼石鑑定箱 真作 
*須磨様式

双虎之図 大橋翠石筆 その5
絹本水墨着色軸装 軸先本象牙 東京美術倶楽部鑑定証 共箱 
全体サイズ:横633*縦2155 画サイズ:横500*縦1373

*写真は部分写真ですので詳しくは投稿されている他の記事を参考にして下さい。



こちらの作品は東京美術倶楽部の鑑定書が付いています。
ときおりきちんとした鑑定書のある作品を購入して正規の作品を手元に置いて参考にすることは必要だと思います。むろんお値段はそれなりにしますが、信頼のおける骨董店などでは100万を超えるでしょうが、通常は100万を超えることはなくその半額程度で入手できます。

「親子虎」 明治40年?(調査中)は下記の作品となります。印章は真作とまったく一致します。

親子虎図 伝大橋翠石筆
絹本水墨淡彩軸装 軸先本象牙 合箱 
全体サイズ:横*縦 画サイズ:横500*縦1300



B.中間期の( 1期 )に近い・・。子虎の描き方が幼稚?と判断しており、この点が判断のネックになっています。捨ててしまいたいが捨てきれない作品・・・。

大きな時代の分類では最後はC.晩年期となります。

C.晩年期      :1940年(昭和15年)-1945年(昭和20年)66歳~81歳
糸落款翠石: 翠石が細く書いてある。3期 1940年(昭和15年)-1945年(昭和20年)
画風   :地肌に赤、金で毛書きがされ、毛書きの量も控えめになる。背景は晩年期より簡素化し、構図も前を向く虎の顔や全身に比べて尾や後身が抑えて書いてある。

晩年期の分類の作品で当方が所蔵している作品には下記の作品があります。こちらも真作と判断しています。

幽谷雙猛之図 大橋翠石筆 その4
絹本水墨淡彩軸装 軸先本象牙 共箱 
全体サイズ:横*縦 画サイズ:横420*縦1140

*写真は部分写真ですので詳しくは投稿されている他の記事を参考にして下さい。



そのほかにC「晩年期」に分類される虎以外の作品には下記の作品があります。
「華蔭遊猫図」 大橋翠石筆 真作

今回の作品「臥乕之図」が真作なら「B.中間期:1期」に分類される作品で、大橋翠石の大まかな時代分類による4つに分類される作品がすべて揃うことになります。ただここまでは紆余曲折あり、贋作と断定した作品がいくつかあり、ひとつの調査中の作品(「親子虎」)を除きそれらは処分しました。

大橋翠石の虎の画題の作品以外も蒐集し参考にしましたが、意外にそれほど手間取らずにここまで蒐集できたと思います。

さて本日の本題に入ります。

本日紹介する作品は現在調査段階です。参考となる作品は製作時期が近い「正面之虎 大橋翠石筆 その1」の作品です。

臥乕之図 伝大橋翠石筆 その8 
絹本着色軸装 軸先本象牙 自署鑑定共箱 
全体サイズ:横640*縦2140 画サイズ:横*縦



現在展示室に飾って鑑賞中です。



本作品の箱書きは下記のようになっています。

 

ここで「正面之虎 大橋翠石筆 その1」の箱書きと比較してみました。本作品が真作なら製作時期が「正面之虎 大橋翠石筆 その1」よりおそらく10年ほど後・・。



本作品の落款・印章は下記のとおりです。真印と比較すると微妙といえば微妙・・、調査中の理由はこの点によります。



作品を愉しむという基本から落ちない程度に勉強することが素人の骨董蒐集の難しいところです。



真贋というのは実は人によって様々のようです。ある程度のレベルの作品は見識のある方が全員が贋作、真作とジャッジにならないものと聞いたことがあります。ただ商売となると信用問題があるので全員が真作と認めないと真作として売りさばけないのが原則のようです。



東京美術倶楽部の鑑定書も同様で審査員が全員「真作」と認めないと発行されないと聞いています。



作品のすべてを鑑定してもらうのが一番安心なのでしょうが、そこまでお金をかけますか?



ただ自分の所蔵品は全体に真作だと思い込んでいる鑑識眼の低い蒐集家が多いのは現実です。自分もその一人ですが、レベルの低い作品を真作だと信じ込んでいる人は救いようがない・・・



「墨で縞を描くのは変わらないが、地肌に黄色と金で毛書きをし腹の部分は胡粉で白い毛書きがしてる。全体には黄色っぽく見える。背景は少ない。」

さて、本作品は印章以外はまったく問題なく真作・・・???? 大橋翠石は蘊蓄のある人が多いので迂闊に真作と出来ないのが曲者たる由縁。 

印章からおそらく最終的には真作と断定できない作品。ここが小生の素人たるところか ただこのような真贋極めるのに難しい作品は使い道があり、普段気を使うことなく愉しめるのも有難いもの。

*最終的に真作と判断(2018年9月)

日本画における近代の虎を描いた作品を入手するなら、迷わず大橋翠石です。阪神ファンは絶対に入手しておくべきものです。なんといっても関西出身の画家、人気の絶頂期には「阪神間の資産家で翠石作品を持っていないのは恥。」とまでいわれたほどです。



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