夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

桜井の別れ 蓑虫山人筆 その9

2016-09-10 00:01:00 | 掛け軸
銀座にある刀剣店に立ち寄ってみたら、拵えの修理が終了しているとのことでしたので、受けとってまいりまいした。



切羽部分が不完全であったものを今回修理した拵えです。「切羽」・・・、切羽がつまると刀が抜けなくなるのが「切羽詰まった」の語源のようです。鍔を抑えている座金なようなものです。



「相槌を打つ」、「しのぎを削る」、「頓珍漢」も刀剣用語が語源のようです。骨董というより、趣味はたくさんのことを教えてくれます。趣味を持つと持たないでは知識の巾は大いに違うかもしえません。当方のようにマニアックな知識ばかりも困りものですが・・。





NHKの大河ドラマで真田父子の「犬伏の別れ」が話題になっていますが、もっとも有名な父子の別れは 楠木正成・正行父子の「桜井の別れ」です。

その別れに際して楠正成は形見にかつて帝より下賜された菊水の紋が入った短刀を楠正行に授け、今生の別れを告げたそうです。よって本日は刀と「桜井の別れ」の作品紹介です。



桜井の別れ 蓑虫山人筆 その9
紙本淡彩軸装 合箱 
全体サイズ:横455*縦1760 画サイズ:横335*縦1130



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「桜井の別れ」は、西国街道の桜井の駅で楠木正成・正行父子が訣別する逸話。桜井の駅で別れた後、正成は湊川の戦いに赴いて戦死し、今生の別れとなった。



建武三年五月(1336年6月)、九州で劣勢を挽回して山陽道を怒濤の如く東上してきた足利尊氏の数十万の軍勢に対し、20分の1ほどの軍勢しか持たない新田義貞を総大将とする朝廷方は兵庫に陣を敷いていたが、正成は義貞の器量を疑い、今の状況で尊氏方の軍勢を迎撃することは困難なので、尊氏と和睦するか、またはいったん都を捨てて比叡山に上り、空になった都に足利軍を誘い込んだ後、これを兵糧攻めにするべきだと後醍醐帝に進言したが、いずれも聞き入れられなかった。そこで正成は死を覚悟し、湊川の戦場に赴くことになった。



その途中、桜井の駅にさしかかった頃、正成は数え11歳(一説では20歳頃)の嫡子・正行を呼び寄せて「お前を故郷の河内へ帰す」と告げた。「最期まで父上と共に」と懇願する正行に対し、正成は「お前を帰すのは、自分が討死にしたあとのことを考えてのことだ。帝のために、お前は身命を惜しみ、忠義の心を失わず、一族郎党一人でも生き残るようにして、いつの日か必ず朝敵を滅せ」と諭し、形見にかつて帝より下賜された菊水の紋が入った短刀を授け、今生の別れを告げた。



その後正行は亡父の遺志を継いで、楠木家の棟梁となって南朝方として戦った。正成の嫡男だけあって、南朝から期待されていたという。足利幕府の山名時氏・細川顕氏連合軍を摂津国天王寺・住吉浜にて打ち破っている。

住吉浜にて足利方を打ち破った際に敗走して摂津国・渡部橋に溺れる敵兵を助け、手当をし衣服を与えて敵陣へ送り帰した。この事に恩を感じ、この合戦で楠木勢として参戦した者が多かったと伝えられている。

楠正行は正平3年/貞和4年(1348年)に河内国北條(現在の大阪府四條畷市)で行われた四條畷の戦い(四條縄手)において足利側の高師直・師泰兄弟と戦って敗北し、弟の正時と共に自害して果てた。嘉暦元年(1326年)生まれだとすれば、享年23。但し、享年に関しては諸説があり、前述の通り、父の戦死時に20歳前後だったとすれば、享年は30歳前後となる。

楠木正行は「大楠公」と尊称された正成に対して「小楠公(しょうなんこう)」と呼ばれる。


左写真:皇居外苑にある楠木正成像   右写真:櫻井之驛址にある父子別れの像

 

明治維新の尊王思想の模範とされ、その誠忠・純孝・正義によるとして、楠木正行は明治13年(1880年)には正一位を追贈され、楠木正行は明治9年(1876年)に従三位を追贈された。さらに明治22年(1889年)には殉節地の地元有志等による正行を初め楠木一族を祀る神社創祀の願いが容れられ別格官幣社として社号を与えられ、翌明治23年(1890年)に社殿が竣功し正行を主祭神とする四條畷神社が創建された。さらに明治30年(1897年)には従二位が追贈された。

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蓑虫山人については本ブログで何度も紹介していますので説明は省略します。

 

最近になり日曜美術館で紹介された蓑虫山人ですが、まだまだ忘れ去られた画家の一人でしょう。

生死や家族との別れも、人生の非常な試練も気丈に乗り越えられる者を「もののふ」というのかも、日本人なら「もののふ」になりたいものです。刀剣類を見ていると「もののふ」になったような気がしてくるから不思議です。だから危ないのかも、「きちがいに刃物」・・・



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