夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

面白き作品 雪の且 伝葛飾北斎筆 その1

2022-11-07 00:01:00 | 浮世絵
掛軸の作品だけで当方の所蔵作品はおそらく1500作品は超えているでしょう。整理する場所が足りなくなり追加した棚ももはや満杯・・。



中軸専用の桐箪笥は上下2段の箪笥4棹を越えて、下記の写真のような専用の棚を制作してももう満杯です。



大きな掛け軸用の棚も・・・。



特大用の棚も・・・。写真は掲載しませんが、そのほかに小さな掛け軸用の棚もすでに満杯。



どこにどの作品があるかほとんど把握しています。これは額作品、陶磁器の作品、塗の作品、刀剣類も同様ですが、そのためには一定の収納のセオリーと表示方法が肝要ですね。

蒐集した作品を整理せず放置しているのは当方では蒐集家として失格かと思います。



さて本日は面白そうなので入手した作品です。有名な北斎の肉筆画・・??? そんなことはあろうはずもないと思いながらも落款の確かさ、写生の妙もあり入手した次第です。



まくり(表具されていない状態)で放置されていた状態での入手です。これもそのままにしておくのも蒐集家として失格・・、この作品は当方で表具しています。




面白き作品 雪の且 伝葛飾北斎筆 その1
絹本水墨淡彩(まくりの状態で入手) 合箱
画サイズ:縦954*横413→表装予定
→表具サイズ 全体:縦1820*横462 作品サイズ:縦942*409

 

かなり日に焼けた状態ですので、洗いをしてもそれほど鮮明には作品は蘇りませんでした。それでもきちんとしておくのが蒐集家の務めです。



作品はまくり(表具がされていない状態)で痛んでしました。日に焼けているようで状態はそほど元には戻りませんでしたが、痛みは補修できれいになります。



改装前と改装後を比較しています。

















本作品の落款は「葛飾前北舟 為一筆 押印」とあります。「葛飾」まで記された同様の落款は少ないですが、「岩上の鵜図」(右下写真)にあります。

なお本作品の印影は定かではありません。

 

真作なら「北舟為一」時代から「画狂人」時代にかけての作か?(文化・文政時代の頃か?) この頃の似たような書体の落款を図集からピックアップしてみました。

 

ところで葛飾北斎が「雪かき」を描いた作品には下記の有名な作品があります。



上記の作品には興味深い解説がありますので紹介します。

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解説より:「雪の且(あした)」と題する作品については、三十六景「礫川雪ノ且」が先行しており、共通する制作意図があると考えられます。

*北斎は、「旦」(あした)を「且」と表記するようです。

三十六景作品では、料亭で遊ぶ内、気付けば降り積もった雪の朝を迎え、富士も江戸も白銀に覆われ、富士と一体化した世界が出現した驚きを描いた作品と理解されます。

この三十六景の世界観を前提にして、上記の作品の百景「雪の且の不二」を見ると、本作品の仕掛けがより明確になります。雪かきをする男が積み上げた雪山を雪の富士塚と看做し、富士と見立てる趣向であり、雪を載せた簑笠の男と頭巾姿の男が見つめる様子は、実は三十六景作品の料亭から雪の富士を眺める粋客と同じ心情のでしょう。

また、その雪山に喜び駆け上る2匹の犬は、前作品「月下の不二」の狼を受けているらしく、江戸を守る(雪)山の神に見立てているようです。その喜ぶさまは、江戸の里が平和と安寧の世界にあることを暗示していると理解できます。北斎がこれらの作品の流れを意識しており、百景2編を「想の趣くままに作成した」のではないと思われます。



なお、雪の積もった大きな笠を被った酒買いの小僧は、この前後宴会か何かの会があったことを想像させます。酒徳利には「四方」(よも)とあり、神田新和泉町の酒屋四方久兵衛の銘酒「瀧水」と推測されます(下掲『江戸買物獨案内』文政7・1824)。天明期の文人太田南畝(蜀山人)が狂歌師として「四方赤良」(よものあから)を名乗ったことは有名で、その連を「四方連」と呼んだことを考えると、この日、狂歌の会があったのかもしれません。とすればこの雪山は狂歌の題材にするために意図的に制作されもので、静謐な雪景色とは対照的に酔狂な世界を描いていると読み解くことができます。雪かき跡や雪中の足跡もその感をいっそう強めます。

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葛飾北斎の肉筆画は数多くの模写が存在しますが、この作品は単なる模写として片づけるには面白い点が多い。

さて印影が不鮮明なので、さらに解像度を上げてみました。
 

どうも上部の印は朱文白方印:「ふもとのさと」らしい。この印は図集の「桔梗図」に押印されており、この作品は文化年間後期(1810年~17年)の作のようです。その印章は下記のものです。ひらがなの印は2種類ありますが、こちらの印章は非常に珍しい印章です。

 

そもそも「為一」の落款は文政3年から使用し始めており、年代は絞れます。真作なら落款からその頃の作であろうと思われますが、印章は一致しているとは言い難く、よくできた模写と判断するのが妥当でしょう。下に白文朱印がうっすらと見えますが不鮮明で印影は不明です。小さな印は扇面の作品などに押印されていますが、このように累印とする例は見られません。



ともかく「まくり」の状態で廉価での入手、元手はとったくらいの調査資料にはなったようです。そのままとするか、洗ってきれいにして表具するか、このまま表具してみるか・・・・、またまた悩みは尽きない。→記事作成時期の文ですが、現在は洗って表具してあります。



「面白き作品 雪かき 伝葛飾北斎筆 その1」・・・、「その1」なら「その2」もあります。


なお葛飾北斎の門下の作品では「曹次郎像自賛 魚屋北渓筆」(真作)や「関羽・劉備玄徳図 葛飾北一筆」という作品を本ブログで紹介しています。



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