夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

怪しき作品 早春 平福百穂筆 大正10年(1921年)頃

2021-04-16 00:01:00 | 掛け軸
息子が通っているサイエンスという実験の教室が一年間のコースが修了しました。これ以外には英会話とプログラミングの教室には率先して出かけていきます。これらには継続的に通いたいようですが、スポーツへの興味はまだのようです。これは遺伝かな?



さて当方では同郷の画家である平福百穂の作品を蒐集していますが、本ブログでも記述しているように平福百穂の作品を蒐集での悩みの種が工芸印刷の作品が多いことです。その中でも数が多いのが、「峠を越えている人物を描いている作品」と「牛に乗った牧童(童子)を描いている作品」です。本作品も「牛に乗った牧童を描いている作品」ですが、共箱仕立であることとお値段がインターネットオークションにて5000円という落札の値段であったことから、勉強材料や資料となると判断して入手しました。



もともと「峠を越えている人物を描いている作品」は数が多いのかもしれません。秋田の角館に帰郷する際に峠越えがあり、その風景を描いた作品が多々あるとされています。

また「牛に乗った牧童(童子)を描いている作品」は平福百穂の父である平福穂庵も描いているようです。牛の背に乗り笛を吹く牧童は、画の意匠として中国では既に宋時代には作品がありますが、宋時代の廊庵禅師によって始められたといわれる禅の画題である「十牛図」には人が悟りに至る十段階を、詩と短文によって解説するものです。このうち第6番目の段階をあらわす画として、自分自身を馴らし、操ることができるまでに精神的に成長した姿とされます。「牛に乗り笛を吹く牧童(騎牛帰家)」が描かれています。このような禅的な経緯から「牛に乗った牧童(童子)を描いている作品」は多くの画家が描いたのでしょう。ただ一方で騎牛笛吹童子の図像は、山水画、とりわけ農耕図の中の点景としても描かれ、また独立した画題としても描かれますが、この場合は「十牛図」における「騎牛帰家」のような禅的な内容は失われているとされます。

怪しき作品 早春 平福百穂筆 大正10年(1921年)頃
絹本水墨淡彩軸装 軸先欠損 共箱 
全体サイズ:縦1350*横655 画サイズ:縦390*横510



人物の描き方が簡略過ぎるかな? とはいえ南画風の描き方を平福百穂がしていた時期なのであり得ないことではない??

平福百穂が大正14年(1925年)に描いた「牧童」(平福百穂展画集 作品NO48)という牛に乗った童子を描いた作品の解説によると「平福穂庵の作品にも牛の乗った後ろ向きの童子を描いた作品があり、同じような構図から父の作品を意識して描いているのであろう。ただ穂庵のようなアクの強いところはすっかり洗い流されてみずみずしく尚か澄み切った画面に仕上げられている。文人画のもっとも良質な部分に触れる心地がする。」と記述されています。

「平福穂庵の作品にも牛の乗った後ろ向きの童子を描いた作品」という記述がありますが、残念ながら平福穂庵でこのような作品を小生はまだ観たことがありません。



この構図は冒頭に記述したとおり平福百穂の工藝作品に多い画題など多くの作品があるようです。本作品については工藝作品を疑ってたのですが、まずは共箱である箱書の書体が間違いないこと、作品中の落款と印章も同一作品が存在することから真作の可能性があるかもしれません。

*なお平福百穂の工藝作品に所定鑑定人の子息である平福一郎氏の鑑定箱書きのある作品があるので要注意です。

  

こういう判断に必要なのは、数多くの作品を観てきたことからの知識の積み重ねと最後は勘によるものですが、当方はまだ未熟・・・。

ついでに童子を描いた作品で工藝作品ではないかと判断を躊躇している作品に下記の作品があります。

舟上笛吹童子 平福百穂筆 昭和年間?
絹本水墨淡彩 
画サイズ:横318*縦504



入手時からまくりの状態で、それ以外に判断する材料が今のところありません。



出来はいい・・・、



落款もいい・・・、



疑問点は印章です。この印影は真印では二重印はない・・??? 正確には「ありそうなのですが、まだ詳細は未確認」です。

*他の似た印影のものは二重印はあることは確認できています。



んん~、彩色版画の工藝作品?? 小生の眼力をもってしても肉筆にしか見えない とりあえず簡単な額装に仕立てることにしました。



さて冒頭の作品ですが共箱はあるものの軸先は無くなっており、剥離が多い痛みのひどい掛け軸・・、改装する価値あるや否や 小生の修了コースもまだ一年生か・・・。

この作品を入手後まもなく、同じような構図で筋の良い作品を入手しました(近日本ブログにて紹介予定)。お値段は多少高かったのですが、この作品を入手して得た経験値からの入手です。失敗も含めた基礎を積まないとなかなか筋のいい作品が入手できないもののようです。

このことは資金の有無もありますが、心がけ次第だとも思います。資金がふんだんにあっても筋の良い美術商と付き合う必要があるでしょうし、またお小遣い程度の入手は処分に困るガラクタの山を築きます。ある程度の資金と心がけ・・・、未だに息子の学習を見習う日々です



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