
気を張り詰めて行なう刀剣の手入れをする時にはそれなりに気が引き締まる掛物を展示室に飾ってみたりします。今回は下記の作品を飾ってみました。
最も有名な漢詩? 獄中有感 伝西郷南洲筆
紙本水墨軸装 軸先塗 桐野利義鑑定箱
全体サイズ:縦2175*横1075 画サイズ:縦1680*横910
紙本水墨軸装 軸先塗 桐野利義鑑定箱
全体サイズ:縦2175*横1075 画サイズ:縦1680*横910

すでに詳細はブログに投稿してある作品ですので、詳細はそちらを参考にしてください。
読み
朝蒙恩遇夕焚抗 人生浮沈似晦明 縦不回光葵向日 若無開運意推誠
洛陽知己皆為鬼 南嶼俘囚独竊生 生死何疑天附与 願留魂魄護皇城


この作品を調べた資料は都度改訂して、収納箱に追加しています。
訳
朝に恩遇を蒙り、夕に焚抗(ふんこう)せらる。人生の浮沈、晦明(かいめい)に似たり。
縦(たと)い光を回らさずとも、葵は日に向かう。若し開運無くとも、意は誠を推さん。
洛陽の知己、皆鬼と為る。南嶼(なんしょ)の俘囚、独り生を竊(ぬす)む。
生死何ぞ疑わん、天の附与なるを。願わくば、魂魄を留)めて皇城を護らん。
朝に恩遇を蒙り、夕に焚抗(ふんこう)せらる。人生の浮沈、晦明(かいめい)に似たり。
縦(たと)い光を回らさずとも、葵は日に向かう。若し開運無くとも、意は誠を推さん。
洛陽の知己、皆鬼と為る。南嶼(なんしょ)の俘囚、独り生を竊(ぬす)む。
生死何ぞ疑わん、天の附与なるを。願わくば、魂魄を留)めて皇城を護らん。
*刀剣の手入れは基本的に油の塗り直しですが、少なくても年1回くらいは必要なのでしょう。ときおり状態を見てやることも必要なようです。大して価値の高い刀剣ではないのですが、先祖や知人からの預かり物なのでメンテナンスはきちんとしています。

解釈
朝に厚いもてなしを受けても、夕べにひどい仕打ちを受けることもある。
人生の浮き沈みは、昼と夜の交代に似ている。
ヒマワリは太陽が照らなくても、いつも太陽の方を向いている。
もし自分の運が開けなくても、誠の心を抱き続けたい。
京都の同志たちは皆、国難に殉じている。
南の島の囚人となった私ひとりが生き恥をさらしている。
人間の生死は天から与えられたものであることは疑いない。
願うことは精魂を込めて京都を守護することだけである。
「ヒマワリは太陽が照らなくても、いつも太陽の方を向いている。もし自分の運が開けなくても、誠の心を抱き続けたい。」・・・という部分がこの漢詩の勘所かな・・。
さて本日の作品紹介です。郷里出身の画家平福百穂の作品紹介ですが、「その112」となります。
平福百穂は1919(大正8)年8月、世田谷三宿に画室を建て、画塾白田舎を創設し塾生をおきます。さらに1927(昭和2)年1月、隣接して新居が建てられています。
落款や印章に用いられる「白田草堂」やその後の「三宿草堂」が画塾のことなのか住居のことなのかは不明ですが、ここでは「白田草堂」は画塾の可能性が高いのでしょう。本作品の印章には「白田舎」と関連のあると思われる印章が押印されています。これらの印章は晩年の作に多いと推定されます。

松下渓流双鹿図 平福百穂筆 昭和5年頃 その112
紙本水墨淡彩軸装 軸先象牙 合箱
全体サイズ:縦2100*横450 画サイズ:縦1400*横320


本作品は前述の記述のように少なくとも大正8年以降の作と推定されますね。

墨に淡彩で描かれた平福百穂の新南画と称される作品群のひとつでしょう。

それほどのまだ熟練度や端正さには乏しい作です。

作品は共箱や鑑定書はなく、真贋の根拠としては落款と印章のみですが、作行きからも違和感はまったくありません。

*ただしこの印章にも2種の印影がありそう?で、かつ贋作もあるようですので要注意ですね。