Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

生中継される「三部作」

2022-08-14 | 文化一般
承前)今晩はザルツブルクからプッチーニ作「三部作」の第四回公演が生中継される。その前に初日をもう一度振り返っておこう。更に当日のプログラムにも目を通した。そこには、大きく三つの文章しかなく、その一つは演出のロイへのインタヴューと彼自身による粗筋である。その演出同様に必要最小限での表現を意図しているのだろう。

インタヴューで本来のダンテの神曲「地獄」、「煉獄」、「天国」の作品順番の入れ替えについて、指揮者のヴェルサーメストと話した結果決めたと語っている。その理由として、今迄の上演での様子を見るからに最も印象に残る作品は「煉獄」である筈の「修道女アンジェリカ」であって、最も単独上演機会の多い「天国」の喜劇「ジャンニスキッキ」ではなかったとして、「修道女アンジェリカ」を最後に、そしてその前に「地獄」である「外套」を持ってきたとある。

ロイの粗筋では、それで始める「ジャンニスキッキ」の貴族の悲劇のドナティの死のベットに取り敢えず集まる親類は、個人の資産が修道会に寄付されると知り、従妹のリヌッチョの恋人で法的整理を扱う父親スキッキの助けを借りることにする。そのリヌッチも父親がフィオレンツェ出身ではない平民の娘との結婚が儘ならないことからその芝居に乗ることになる。そして元々役者でもあるスキッキは声色を使って公証人を騙し、ベットから遺言を筆記させる。その前に、先ずは娘を部屋から出して無関係として、「全ての財産を友人のスキッキに」と遺言を残す。一同騒然とするも、不正を働くことによって、右手を切断、街を追放の罰を受ける事を改めて、皆を所払いする。残るは戻ってきた娘ロレッタとリヌッチとなり、スキッキは観客に向かって許しを乞う。

「外套」はセーヌに岸付けされた曳き船、その船長と嫁のジョルジェッタは幼い子供を亡くしてからその影を背負っている。彼女は旦那に、船を売って、パリに、彼女の育った小さな町ベルヴィーユへと引っ越そうと勧める。このところ船を手伝うルイージとの浮気に落ちていて、その腕に抱かれることで不幸から解放される。旦那のミケーレも不審に気が付いているのだが、相手が誰なのかは分からない。晩に嫁さんに嘗ての幸せを思い出すようとするが、嫁さんにとっては想い出は痛みを伴うものでしかない。彼女自身も縁りを戻そうと思うのだが、それが出来ない。ジョルジェッタはルイージとの逢引きを約束している。ミケーレは呆然として嫉妬から床に付けない、そしてパイプに火を点ける。それを潜んでいたルイージがジョルジェッタからの合図と勘違いして、ミケーレの逆鱗に触れる。嫁は起きて来て旦那に近づくと、彼自身の外套の覆いをのけるとルイージの骸。驚愕するジョルジェッタ、未来を破壊したと悟るミケーレ。

女子修道所、侯爵の娘アンジェリカは成人前に両親を亡くしている。その直後に私生児を生み、後見人である叔母にその子供を取り上げられて、修道所に送られている。七年が経過している。そして子供からの知らせを待ちつつ、その為にも難しい試練に挑んでいる。取り分け、修道所において医者として薬草の仕事を任せられている。そして年に数日しか修道所に光の当たらない日々がやって来た今、待ちに待った訪問客である。しかしそこには侯爵の叔母が、遺産相続の署名を迫ってやってきた。堪忍袋の切れたアンジェリカに、叔母は二年前に患った息子が亡くなってしまったことを告げる。底無しの苦しみに、もはやあらゆる祝福は朽ち、死に至る薬草を合わせるアンジェリカは息子のいるパラダイスにありたいと願う。最後の死との戦いにおいても、自殺への永遠の罪を恐れ、その時に聖母によって息子が送られる。

あらすじは、粗筋なのだが、その演出の骨格がよく分かる。そうした仔細諸共を除いた所に劇の本質があるとするのが演出家ロイの仕事とされている。初日からのち細かな微調整は演出にも為されていると思われる。全般的に横長の舞台における集団の扱いはより整理されてくるのだろう。若干焦点が暈けていた。同様の経験は復活祭でもあったので事情が分かる。

歌ではやはりなんといっても一人三役のアスミク・グリゴーリアンが特に最後のアンジェリカで高音で更に冴えた声を出してこれるかどうか。その薬草園のカメラを通さない見え方なども課題であった。その他、既に健闘していたミケーレとルイージに若いスキッキの準主役までが手馴れた歌として来れるかどうか。管弦楽のヴィーナーフィルハーモニカーがもう少し繊細な味を出してこれるかどうかも注目される。(続く



参照:
地盤沈下の音楽の都 2022-02-09 | 生活
オペラのメソード 2022-06-21 | 女
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