金曜日の生中継を聴いた。想定していたよりも名演だった。一つには音響が整えられていた。当夜のプログラムはスターロックミュージシャンのフランク・ザッパの命日に故人の曲二曲と世界初演一曲そしてドイツ初演、改訂版初演の五曲で構成されていて、大きな交響楽団とジャズ奏者そして声が組み合わされた作品が演奏されるものだった。
ジャズ奏者としてトロンボーン奏者で作曲家のアレックス・ぺクストンの二曲が自作自演で演奏されて、新曲には最後に演奏された作曲家のジェニファー・ウェルシュが声出しするという構成になっていた。毎年のようにこのシリーズを振っている指揮のエンゲルがこの企画にどのように関わっているかは分からないが、聴き甲斐があった。
ぺクストンの曲はリコルディ―で出版しているようだが、ジーメンス財団が奨励していて今年最も話題の作曲家かもしれない。ウェルシュの方は以前カールスルーへのZKMに女性作曲家として招かれていたので記憶にあったが、恐らく今後大劇場などで音楽劇場作品を発表していくような作曲家なのだろう。
そのトリの曲の演奏は感動的だった。アイルランドの人のようで英米圏の音楽には違いなく、バーンスタイン風でもあり、取り分け音楽的な新しさはないのだが、自身の声で語り歌う力強さがあって、先日言及したように自作自演の正統性でもある。そしてその曲自体がガンで亡くなった俳優の死因から今日のマイクロプラスティックや放射能のエントロピーからの影響などに懐疑の念を抱く内容となっていて、とても情感的でオペラティックな作品なのである。本人ではなくても英語圏の歌手が歌っても勿論効果があるだろうが、作曲家自身が番組で語っていたように指揮者エンゲルの肉体的な音楽を通して新たな世界が広がるというのはマイクを通じても認知された。
こうした声の入るもののエンゲルの指揮は二十年以上前から上手いのは分かっていたのだが、流石第一人者であっても英米系の音楽を此処迄上手に振るのも再確認した。既にミニマル音楽のフィリップグラスのアシスタントとしても大成功をしていて、アイヴスの制作でも有名ではあるが、初めて実感した。兎に角若いころからアジアの作曲家などとの直接の協調作業に勤しんでいて知らないものはないほどなので、賞を獲得した露西亜音楽を含めてものにしている。
そして、そこでは生中継された西部ドイツ放送協会のコンサートホールでもある大スタディオとそしてその収録技術からマイクを使った声も取り分け見事に捉えられていて、そのバランスや音響から必ずしも容易ではないこうした曲の演奏として最高音質の上演となっていた。それは一曲目の声とトロンボーンでも活きており、三曲目に演奏されたザッパの曲なども元々は楽器演奏が難し過ぎたためにシンセサイザー打ち込みによって演奏されている。そのザッパの曲が編曲されて大管弦楽が演奏するものは、そのエレキの音響などの迫力を活かしながらの演奏となっている。こうした音響の凄さは、中々放送の圧縮音源でも感知しがたいものであるが、少なくとも生放送では会場での音響を想像させるだけの中継となっていた - 残念乍ら質を落としたオンデマンドなどでは認知の難しいものであり、こうした新しい音楽での未知の要素は演繹が難しいので茶の間には伝わりにくい。(続く)
Alex Paxton | Förderpreis Komposition / Composers Prize 2023
Jennifer Walshe — XXX_LIVE_NUDE_GIRLS!!! | Klangforum Wien | Kabinetttheater
参照:
黴取り処理で備える 2023-12-01 | 生活
最早創造性がなければ 2023-11-30 | 雑感
ジャズ奏者としてトロンボーン奏者で作曲家のアレックス・ぺクストンの二曲が自作自演で演奏されて、新曲には最後に演奏された作曲家のジェニファー・ウェルシュが声出しするという構成になっていた。毎年のようにこのシリーズを振っている指揮のエンゲルがこの企画にどのように関わっているかは分からないが、聴き甲斐があった。
ぺクストンの曲はリコルディ―で出版しているようだが、ジーメンス財団が奨励していて今年最も話題の作曲家かもしれない。ウェルシュの方は以前カールスルーへのZKMに女性作曲家として招かれていたので記憶にあったが、恐らく今後大劇場などで音楽劇場作品を発表していくような作曲家なのだろう。
そのトリの曲の演奏は感動的だった。アイルランドの人のようで英米圏の音楽には違いなく、バーンスタイン風でもあり、取り分け音楽的な新しさはないのだが、自身の声で語り歌う力強さがあって、先日言及したように自作自演の正統性でもある。そしてその曲自体がガンで亡くなった俳優の死因から今日のマイクロプラスティックや放射能のエントロピーからの影響などに懐疑の念を抱く内容となっていて、とても情感的でオペラティックな作品なのである。本人ではなくても英語圏の歌手が歌っても勿論効果があるだろうが、作曲家自身が番組で語っていたように指揮者エンゲルの肉体的な音楽を通して新たな世界が広がるというのはマイクを通じても認知された。
こうした声の入るもののエンゲルの指揮は二十年以上前から上手いのは分かっていたのだが、流石第一人者であっても英米系の音楽を此処迄上手に振るのも再確認した。既にミニマル音楽のフィリップグラスのアシスタントとしても大成功をしていて、アイヴスの制作でも有名ではあるが、初めて実感した。兎に角若いころからアジアの作曲家などとの直接の協調作業に勤しんでいて知らないものはないほどなので、賞を獲得した露西亜音楽を含めてものにしている。
そして、そこでは生中継された西部ドイツ放送協会のコンサートホールでもある大スタディオとそしてその収録技術からマイクを使った声も取り分け見事に捉えられていて、そのバランスや音響から必ずしも容易ではないこうした曲の演奏として最高音質の上演となっていた。それは一曲目の声とトロンボーンでも活きており、三曲目に演奏されたザッパの曲なども元々は楽器演奏が難し過ぎたためにシンセサイザー打ち込みによって演奏されている。そのザッパの曲が編曲されて大管弦楽が演奏するものは、そのエレキの音響などの迫力を活かしながらの演奏となっている。こうした音響の凄さは、中々放送の圧縮音源でも感知しがたいものであるが、少なくとも生放送では会場での音響を想像させるだけの中継となっていた - 残念乍ら質を落としたオンデマンドなどでは認知の難しいものであり、こうした新しい音楽での未知の要素は演繹が難しいので茶の間には伝わりにくい。(続く)
Alex Paxton | Förderpreis Komposition / Composers Prize 2023
Jennifer Walshe — XXX_LIVE_NUDE_GIRLS!!! | Klangforum Wien | Kabinetttheater
参照:
黴取り処理で備える 2023-12-01 | 生活
最早創造性がなければ 2023-11-30 | 雑感