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経済の熱力学

2009-11-04 09:05:00 | 時事/金融危機
■ エントロピーは常に増大する ■

一見複雑で、自然科学とは何の相関も無い様に見える社会現象や経済活動も
自然科学や物理の法則を無視する事は出来ません。

例えば、熱力学第二法則という物理の法則があります。
これは宇宙の真理よ様な法則で、「エントロピーは常に増大する」という法則です。
「エントロピー」とは「乱雑さ」の事で、
片付いた部屋よりも、散らかった部屋の方がエントロピーが高い状態です。

例えば、コップ一杯のお湯を、風呂桶1杯の水に混ぜると、
エントロピーは拡大します。
単純に言えば、熱が局所的に存在する状態がエントロピーが低い状態。
この熱が周囲に拡散して均一になれば、エントロピーが高い状態となります。

自然界においては、外からエネルギーを加えない限り
エントロピーは常に増大する方向に進みます。

エントロピーが低い状態は価値を生み出します。
コップ1杯のお湯は、コップ1杯の水よりも、様々な価値を生みます。
コーヒーを入れる事も出来ますし、湯たんぽに入れれば体を温める事もできます。

一方、エントロピーが高い状態の水は、
飲むか、花に水をあげる程度の価値しかありません。

■ 熱力学第二法則に反抗する生物の活動 ■

一見、宇宙の真理とも思える熱力学第二法則ですが、
この法則に抗う存在があります。
それは、生物です。

生物の活動は、短期的、局所的に見れば、
エントロピーを低める活動です。

植物が太陽エネルギーと水から、木を生み出せば、
大気中に拡散した二酸化炭素と、太陽エネルギーを利用可能な形に凝縮出来ます。
この過程で、エントロピーは減少します。

人間の経済活動もこれに似ています。
太陽エネルギーという広く薄く分布するエネルギーを
生産活動と経済の各過程において凝縮し、
最後はお金という非常に流通に適したエネルギーに還元する活動が経済活動です。
富を生じる経済活動とは、効率的にエントロピーを減少させる活動です。

さて、経済活動においてエントロピーの減少が起きると世界はどうなるのか?
それはエネルギー(富)の局在化が発生します。
様は、経済活動の本質とは、富と貧困の発生に他なりません。

■ 社会主義はエントロピーを増大させる ■

社会主義は古来より続いてきた富の偏在を、
人道的観点から是正しようという崇高な思想です。

社会主義以前は宗教がその役を担っていました。
「貧しさは神の試練」として、社会の安定装置となっていたり、
教会が富の再配分のシステムを司っていました。
貧しい人を救う事は徳のある行為として推奨され、富が再配分されたのです。

思想としては崇高な社会主義は、しかし失敗に終わります。
社会主義の目指す世界は、均質化された世界です。
この世界はエントロピーが高く、経済的に価値の低い社会となってしまいました。
その結果、効率的に富を生み出す事が出来ず、
誰もが貧しい社会が出現しました。

■ 社会主義の成立を後押しした資本家 ■

マルクスによる思想の樹立期はいざ知らず、
社会主義の歴史は、資本家に利用された歴史であるとも言えます。
真に意味を持つ事象は、総括される事無く、歴史の闇に葬られますが、
社会主義の発展と衰退の歴史も、きっと明かさる事が無いでしょう。

ソビエト連邦の樹立のきっかけとなったロシア革命ですが、
それを後押ししていたのは、イギリスを始めとする資本家達でした。
彼らは、南進を続ける帝政ロシアと、ヨーロッパやアジアで利害が対立しました。
そこで、帝政ロシアの足を引っ張る形で、革命化達に資金援助しました。

日露戦争当時の日本も、同様に革命家達に資金援助をしています。
そして、日露戦争はロシアの内政不安から、日本の勝利に終わります。
尤も、日露戦争で日本を後押ししていたのも、イギリスとアメリカのユダヤ資本です。

■ 冷戦を経済の発展に利用した資本家 ■

ソ連発足後、ソビエト政府は社会主義革命を輸出して行きます。
これは宗教的なプロパガンダと見る事が一般的でしょう。
しかし、資本家達が社会主義の輸出を後押しした形跡もあります。

何故でしょう?
それは、世界のエントロピーを低く保つ為です。
第二次世界大戦後、世界が同時に経済拡大期に突入すれば、
当時は限られていた石油を始めとした資源は、
瞬く間に世界に拡散して消費され、
世界は程ほどに貧しい状態で安定してしまう恐れがあったからです。

そこで、資本家達は、社会主義を使って世界のエントロピーの減少を進めます。
社会主義を輸出させ、世界の1/3を社会主義国家とします。
「社会主義の輸出」は、一般の資本家にとっては迷惑な話です。
当然、アメリカを筆頭に、資本主義国家と社会主義国家の対立が起きます。
この対立を固定化したのが、マーシャルプランです。

マーシャルプランによって決定付けられた東西冷戦は、
「核の均衡」という安全装置によって、戦争の抑止としても機能しました。
冷戦を維持する為に、キューバ危機やベトナム戦争。
アフガン戦争などが企画されますが、全面戦争には発展しませんでした。

東側諸国の経済発展の足を止める事で、
西側諸国の生活水準は大幅に向上します。
本来なら、東西両陣営で分け合うはずの、
アフリカやアジアから吸い上げた富を西側が独占したからです。

■ 冷戦終結によりエントロピーを減少させる ■

しかし、戦後50年で、西側諸国のエントロピーが増大します。
皆そこそこに豊かになり、富の偏在が小さくなってしまったのです。

そこで、資本家達は、貧しい状態にしておいた社会主義国家群を
資本主義経済に統合する事で、世界的な富の流動性を回復させます。
冷戦は人道的な見地から崩壊したのでは無く、
経済的理由において崩壊させられてのです。

資本主義経済に統合された社会主義諸国は、
資源の供給と、労働力の供給において西側諸国に貢献します。

しかし、垣根が取り除かれたので、
西側諸国の富も東側に流出し、富の偏在化は緩和されて行きます。

■ 敵として残されたイスラム国家 ■

東西冷戦が解消しても、各国には軍事産業も軍隊も残っています。
そこで新たな敵として、イスラム国家が標的とされました。
ただ、現代的に国家対国家の対立は古臭いので、
「テロリスト」と「テロ国家」という役割が振られる事となります。

緊張は社会の維持と結束の為には重要です。
西側諸国と東側諸国の共通の敵として、「テロリスト」が生み出されました。
そして、対立を決定付ける為には、「911」のテロは不可欠でした。

■ 眠れる獅子 中国 ■

東側諸国に富が流出した分だけ西側諸国は貧しくなります。
東西統合後に旧西ドイツの所得は伸び悩みます。
この点を撮れば、東西冷戦の解消は、エントロピーの増大です。

しかし、東側諸国の安くて豊富な労働資源は、
新たな生産を促進するエネルギーとなります。
こうして、経済はあさらに大規模のエントロピーを縮小させて行きます。
アメリカには以前にも増して富が集中し、
各国の国内では貧富の差が拡大して行きます。

この間、新たな方法で資本主義社会に取りこまれた国があります。
「アジアの眠れる獅子 中国」です。
中国は社会主義独裁を維持したまま、どっぷりと資本主義化します。

中国の体制が維持された理由は、「調整」でしょう。
あまりに急激な変化は副作用を伴います。
中国13億人は、西側諸国にも無視出来ない人口です。
ですから、中国は社会主義という外交上のブレーキを効かせながら、
資本主義経済に仲間入りして行く事となります。

■ 新たなエンジン BRIC'S ■

通信技術と輸送手段の近代化は、
人・物・金 の動きを加速化し、
その結果、エントロピーの増大は急激に起こるようになりました。
冷戦終結後20年で、世界は再び「熱的平衡」に近付きます。

この間、それぞれの国の中では「貧富の差」が拡大して行きます。
これは「世界規模での均質化」のミクロな事象として現れたものです。

世界は新たな熱元を探し求めます。
それが、今まで「貧しい状態にされていた多くの人口と資源」を持つ国です。
即ち、ブラジル・ロシア・インド・中国です。

リーマンショック後、世界は無条件でBRIC's諸国の発展に期待します。

■ 統合のブースターとしてのリーマンショック ■

東側諸国の統合でもそうですが、今まで垣根のあった世界の統合には
強い力の後押しが必要です。

東西統合のブースターは、「冷戦の終結」でした。
東西統合は西側から東側への富の移行が最初に起こります。
当然、西側では抵抗が予想されますが、
安全保障上の安定、即ち生命の保障が対価となって東西統合は進みました。

BRIC'sとの経済統合は既に資本主義圏内の統合です。
BRIC's諸国が求める変化の代償は、「多極化」です。
今までアメリカと一部の西側諸国が独占していた経済的な覇権を、
自分達にも分けろというのは正等な要求です。

そこで、「多極化」に正当性を与える為にリーマンショックが演出されます。
アメリカや西側諸国を納得させる為に仕込みには手が込んでいます。
第一段階として、金融の自由化を行い、バブルの種を蒔きます。
同時にテロとの戦争によってアメリカの財政を痛めつけておきます。
頃合を見てバブルを崩壊させ、世界的な金融危機を起します。

アメリカが自立的に覇権を維持出来ない情況を作り出したのです。
アメリカだけではありません、日本もヨーロッパもアメリカに頼れない情況です。

事ここに及んで、世界は一気に「多極化」に舵を切ります。
G7は有名無実となり、BRIC's諸国が主催するG20が世界を動かし始めました。

■ ドル覇権の終焉 ■

今、「多極世界」への移行は阻んでいるのはドルの一極体性です。
ドルが機軸通貨である限り、いつ何時「覇権の巻き返し」があるかも知れません。
戦争などの有事を利用して、ドルの依存を高めれば
世界はアメリカの一極体制に瞬時に戻ってしまいます。

そこで、なるべく穏便に「ドル」の終焉を迎えたいのですが、
「ドル」の崩壊は世界的な信用不安を引き起こし、
「信用通貨」自体の崩壊も招きかねません。

■ 兌換性の復活 ■

そこで、「金」の登場です。
本日のロイターで、IMFがインドに200トンの金を売却したという記事があります。
インドは元来「金」が好きな国民で、
装身具として「金」を財産とする習慣があります。
これはアラブ諸国も同様です。

しかし、この時期にIMFからインドに「金」が売却されれば、何か匂います。
同様に中国も「金」の備蓄を殖やしています。

昨年あたりアメリカは手持ちの金を安く貸し出して
「金」キャリートレードの様な状態を作り出し、
金相場を意図的に安価に誘導していました。

これは、見方いよればドルの防衛の様ですが、
アメリカ及び、アメリカの意を受けた国が安く金を調達する事に役立ちます。

各国がある程度「金」を備蓄した時点で、
新たな世界通貨の枠組みを「金」を基準に作り出せば、
全く一から信用を創造するよりも安心です。

多分、BRIC's諸国が提唱するIMFの特別引出権(SDR)のシステムを使用するのでしょうが、
「金」の備蓄である程度価値が裏打ちされた通貨で通貨バスケットを構成し、
世界通貨として流通させるのでは無いでしょうか。

1国の通貨を機軸にするよりも公平ですし、
金という実物に裏打ちさせる事で、中国などが勝手に紙幣を増刷する事も防げます。
紙幣を増刷すれば、兌換レートが下がりますから、通貨価値は低下します。
一国の通貨が原価しても、通貨バスケット内のレートの増減で、
SDR自体は安定しています。

■ 金の兌換性に拘らない「金本位制」 ■

「金本位制」の問題点は、金が有限の資源であり、
「金兌換性」が経済発展の足かせにもなりうるとおう事と、
工業資源としての金の価格の高騰を招く事にあります。

そこで、」新しい「金本位制」は、
必ずしも旧来の「金の兌換性」を維持する必要は無いのかもしれません。

例えば、通貨バスケットに参加する各国に、
経済レベルに相当した金の備蓄を義務付けます。
各国の通貨のレートは金の備蓄量と通貨の発行量で決定します。

国内経済に関しては、ある程度の通貨量の増減によって経済をコントロールし、
国際通貨としては「金」にペッグさせれば、通貨の価値は自然に調整されます。
通貨の発行量を増やしたければ、経済を発展させ金の備蓄を増やせば良い訳です。

新しい「金本位制」は、無尽蔵なお金の増刷に歯止めを掛け、
各国政府の財政規律を正常化する効果を持つと同時に、
過剰流動性の発生を防ぎ、バブルの発生を抑制します。

■ 安定的に世界を統合する ■

金に裏打ちされた世界は、比較的安定していると予想されます。
例えば、中国が急激に経済成長しても、
金の保有高を増やさない限り、国債通貨としての元は増えません。
これによってドル(あるいはアメロ)の暴落は防げます。

■ 世界の統合スピードは恐ろしく速い ■

リーマンショック以降、世界の統合のスピードは恐ろしく速まっています。
表面的には経済危機脱却の為の多国間の協調ですが、
実質は、「多極化」世界の構築に他なりません。

普通ですと、富が流出する西側諸国の国民が反対しそうですが、
非常に巧妙にカモフラージュされています。
きっと優秀なシナリオライターが居るのでしょう。

役者もそろっています。
最後のアメリカ大統領として、黒人のオバマは象徴的ですし、
民主党政権は中国の台頭を黙視するでしょう。
台湾の馬政権も親中です。台湾海峡有事を心配する必要は最早ありません。
朝鮮半島から米軍は撤退を余儀なくされますが、
北朝鮮をクッションに韓国と中国もバランスを取るに違いありあません。

■ 金融資本家は常に安定した成長を演出する ■

こうして考えると、陰謀論の悪者にされてきた金融資本家達は、
意外と世界の安定成長を持続させる原動力なのかもしれません。

第一次世界大戦は、多国間戦争が甚大な被害を人類に与える事を証明しました。
第二次世界大戦は、原爆の登場とともに、次の世界大戦が人類滅亡を意味うる事を教えました。

第二次世界大戦以降、冷戦という緊張状態はありましたが、
世界は滅ぶ事も、大きな戦争を経験する事も無く、
さらに爆発的な経済発展による不安定化も経験する事無く、
21世紀を迎えています。

とかく金の亡者の様に言われるロスチャイルドやロックフェラーですが、
銀のスプーンを咥えて生まれて来た方達は、
私達の想像を超える義務を負っているのかもしれません。

それは、各国のエリート達も同様で、
アメリカ外交評議会の目的は、アメリカの覇権では無く、
世界の安定成長なのでしょう。

先日、ゴルバチョフのインタビューが読売新聞に掲載されていましたが、
彼はソビエトの代表では無く、世界の一員として行動した事が良く分かりました。

■ 「陰謀論」は「神の見えざる手」の裏の顔 ■

ケインズは人間の欲という「神の見えざる手」が経済をコントロールすると考えました。
しかし、ケインズ経済学はそれゆえに戦争を否定出来ませ。

しかし、実際の世界においては、「神の見えざる手」は資本家達の意志と努力であり、
そして、それは思われている程は貪欲なものでは無いのかも知れません。

「陰謀論」とは、「神」に対する「悪魔」の様な存在で、
「陰謀論」は「世界の神々」達の深遠な行動の負の側面を覆い隠しているのかもしれません。

尤も、ウォール街の金の亡者達はそんな事は知らずに神の手の上で踊らされているだけでしょうし、
世界経済の発展を、好むと好まざるとに係わらず、貧富の差を拡大して行きます。

人間という存在が、自然の摂理に反して、
エントロピーの減少を目的としているので、
自然科学の「良き平等」とは「熱的死=エントロピーの拡散」を意味し、
それは即ち「誰もが等しく貧しい世界」の現出に他なりません。

■ 田中宇の「隠れ多極主義者」論と、武田邦彦の諦めた社会 ■

田中宇氏の言う所の「隠れ多極主義者」とは、現在の「神の見えざる手」の事でしょう。
「多極化」の目的に「最大の利益」を当てはめると、大局を見失う気がします。
「最大の利益」即ち「エントロピーの縮小」を指向するのは、大衆を含めた我々人類で、
「多極主義者」達は、急激なエントロピーの変化の調整を行っていると考られます。
ここら辺は、「性善説」と「性悪説」にも近いものがありますが、
金融資本家達がもっと「利己的」であれば、世界はもっと荒廃した姿になっていたでしょう。

一方、武田邦彦氏は著書「リサイクルしてはいけない」の最終章で、
「熱死」した世界を説いています。
「ほどほどの物を所有し、最小の消費で、ほどほどの幸せ」・・・。
これは、社会主義の末路と同じ世界です。

武田邦彦氏は、最近の著書では「技術的イノベーションが継続的発展を生む」と言い、
いささか主旨変えをしたようにも見えます。
社会的影響力が大きくなったので、仙人の様な事も言ってられなくなったのでしょう。


・・・今日は仕事が忙しいので、息抜きに書き始めたら
ヨタ話が長くなってしまいました。
きっと、明日には恥ずかしくなって、削除かな。