■ 1号機では比較的早期に核燃料は圧力容器の底を溶け破っていた? ■
<東京新聞から引用開始>
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011120190070459.html
「福島1号機の溶融燃料 底部コンクリ65センチ侵食」
東京電力は三十日、最も早く炉心溶融が進んだ福島第一原発1号機では、溶けた核燃料の大部分が原子炉圧力容器から格納容器に落ち、床面のコンクリートを最大六十五センチ溶かしているとする解析結果を公表した。核燃料は格納容器内にとどまっているが、外殻の鋼板まであと三十七センチに迫っていた。
2、3号機でも溶けた核燃料の一部が同様に格納容器内に落ち、コンクリート床を侵食している可能性があるとの解析結果だった。廃炉で最重要なのが核燃料の回収だが、困難さがあらためて浮き彫りになった。
炉内は直接観察できないため、シミュレーションソフトを使って解析した。
1号機は冷却できなかった時間が最も長いため、核燃料のすべてが溶融して圧力容器を壊し、格納容器内に落下したと想定して解析した。
落ちた核燃料の高温で、球形をした格納容器の底に施されたコンクリートを熱分解する「コア・コンクリート反応」が起きたとの結果になった。
ある程度の時間は炉心を冷却できた2、3号機では、それぞれ最大で57%と63%の核燃料が溶けたと説明。この場合、底部のコンクリートの侵食は、2号機で最大十二センチ、3号機で同二十センチになるとした。
東電の松本純一原子力・立地本部長代理は同日の会見で「格納容器内は水位が三十~四十センチあり、落ちた核燃料は水に漬かっているとみられる。仮にコンクリートが侵食されていたとしても容器の強度面での問題はない」との見解を示した。
解析結果は経済産業省原子力安全・保安院が開いた研究会で報告した。参加した岡本孝司・東京大教授(原子力工学)は「コンクリートの侵食の度合いについてはなんとも言えないが、格納容器に落ちた燃料が冷やされていることは確実だと思う。複数の機関の解析を持ち寄ることで炉の状態が少しずつ分かってくる」と話した。
(東京新聞)
東電は、「一号機の核燃料は、制御棒の穴の周辺を溶かして、
一部格納容器内に解け落ちている可能性がある」としてきましたが、
この記事によると、事態はもっと深刻だった様です。
溶融した核燃料が厚い鉄板で出来てる圧力容器を溶かすには、
核燃料が高温である必要があり、核燃料が高温を保つのは
臨界停止後のしばらくの間となります。
それ以降は、再臨界が起きなければ、
後反応の収束と共に、核燃料は冷却され低温になります。
という事は、1号機では事故後、比較的早い時期に
核燃料は圧力容器を突き破っていたことになります。
■ 凡そ軽水炉型原子炉の考えられる大規模再臨界以外の最大の事故 ■
福島原発事故は、大規模再臨界を覗けば、
凡そ軽水炉型原子炉で起こりうる最悪の事故だったとも言えます。
格納容器の床には、メルトダウンを想定して役1mのコンクリートが敷かれていますが、
後、37cmでそのコンクリートも溶かし、
格納容器の底から外部に燃料が溶け出していたかも知れません。
この状況は、「チャイナシンドローム」と書き立てることも出来ますが、
格納容器の下には7.6mものコンクリートが打設されており、
高温の燃料でも、簡単には溶かす事が不可能です。
裏を返せば、圧力容器い注水が出来ない事故が発生しても、
格納容器内で冷却できれば、
格納容器を燃料が貫通しない事が立証されたとも言えます。
(若干楽観的な考え方ですが・・・)
軽水炉型原子炉でチャイナシンドロームは起きないという事を福島事故は図らずも立証したのかも知れません。
(これも楽観的観測ですが・・・)
尤も東電の事だから、2ヶ月後くらいに、
「やっぱり燃料は格納容器を突き抜けていました」
なんて発表をする可能性も無きにしも非ずで・・・。
<追記>
コメントとして載せた物ですが、上の記事が舌足らずなので追記します。
■ チャイナシンドロームは20世紀最大の科学的ジョーク ■
アメリカで原子炉の炉心溶融が起きれば、
高温の核燃料が地殻を溶かして地殻を突き抜け
中国に到達すると脅されたチャイナシンドローム。
とこえろが、良く考えたら、地球の中心を過ぎれば
重力はマイナスのベクトルで働きます。
真空中で摩擦力が無ければ、確かに中国まで到達しますが、
地殻との巨大な摩擦力が働き、
加速度は限りなくゼロに近いので、
地球の中心で止まるハズです。
その前に、マントルの対流で押し流されてしまうでしょう。
私はチャイナシンドロームは温暖化に匹敵する
報復絶倒の「科学的ジョーク」だと思うのですが、
こんなのにコロっと騙されていた時代があったのです。
実際には、炉心はたった1mのコンクリートも
溶かす事は出来ませんでした。
あたり前です。
アメリカは溶融した核燃料を実際にコンクリートに
落とす実験を砂漠の真ん中で行っています。
この様に、原子炉の安全性はある程度の裏付けがある物ですが、
チェルノブイリの様な爆発的な再臨界に関してだけは、
技術的データが不足しています。
福島の事故に関しても、事故当初に恐れられたのは
爆発的再臨界です。
実際には水素爆発は発生しましたが、
核燃料の熱エネルギーは低く、水素爆発による
圧力容器の破損という事態は発生していません。
核燃料がコンクリートと反応すると、
水蒸気爆発と同様の爆発が起こるとも言われていましたので、
1号機の爆発が水素爆発なのか、それとも他の要因なのかは
今後の調査の結果を待ちたいところです。
原発は最も古いマーク1でさえ、
従来言われていた程の重大事故が起こらない事を、
福島の事故は実証したのではないかと私は考えます。
福島で大規模な再臨界や、チャイナシンドロームが起こらなかった事は「科学的事実」ですが、
一般的には「チャイナシンドローム」の様な「科学の妄想」ばかりが強調される事に注意が必要です。
私は1(mSv/年)という「LNT仮説」に基ずく放射線防護の基準を採用する限り、
地震国日本に原子炉が存在する事で、国民は不幸になると考えます。
ですから、現状は古い原発から、段階的に停止する事が最善の策だと考えます。
一方で、最悪の事故に近い福島原発事故ですら、
「LNT仮説」を信用したとしても、統計的誤差程度の死亡率の上昇という
被害の発生である事も事実です。
武田先生の主張はとても正しくて、
(福島県民には負担を強いていますが)
「被害が統計的誤差の範囲だから、原発を稼働させ続けても良い」
これは、間違った見解で、何の解決も得られません。
「福島で最悪の事故でも原発の破損規模がこの程度であるならば、
LNT仮説に白黒はきり結論付けて、低線量率の放射線の健康被害が否定されるなら、
原発は化学プラントと同等の危険度の施設となる」
というのが、科学として正しい判断です。
暴論の様に聞こえるかも知れませんが、科学や法律はシンプルであれというのが、
武田先生の一貫した主張であるのです。