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金融兵器CDS・・・誰に対する兵器なんだろう?

2011-12-27 01:53:00 | 時事/金融危機
 

■ 金融核兵器 CDS ■

CDSは債権の購入者が、
その債権のデフォルトリスクを回避する為に購入する
一種の保険商品です。

一定の利息を支払えば、購入した債券がデフォルトしても
CDSの発行元が損失を補てんする仕組みです。

一般的はに、債権購入者がリスクを低減する為に購入しますが、
金融商品に加工されて、債権購入者以外がCDSの購入者となる場合もあります。

一見、投資家のリスクを低減する様に見えるCDSですが
ウォーレン・バフェットはCDSを称して
「金融大量破壊兵器」「金融核兵器」と言っています。

何故CDSが「核兵器級」の脅威なのか・・・。
ギリシャを例に取った記事がありましたので紹介します。

<日刊ゲンダイ  2011.10.15より引用>

まずは欧州の経済金融危機だ。基金の拡充や銀行への資本注入論議が進み、市場には安堵感が広がっている。十分な資本を準備できていれば、ギリシャが倒れ ても、金融機関は持ちこたえられる公算が大。危機の連鎖は食い止められるというわけだ。まずは資本の増強が必要という発想である。

しかし、それだけで万全の備えとなるわけではない。東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏が言う。
「ギ リシャ国債の発行残高は3500億ドル(約27兆円)ほどです。しかし、これに対するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は、その4倍に なるとみられている。多くの金融機関が、ギリシャ国債の購入に際し、総額100兆円超の保険を掛けてリスクヘッジしているわけです。つまり、ギリ シャの債務不履行で問題となるのは、表に出ている数字の4倍ということになる。その支払いを迫られる金融機関は甚大な打撃を受けます。リーマン・ショック 時のAIGは救済されましたが、今回はスケールが違う。デフォルトしてもCDSが実行されない可能性も高いのです。

こうなると危機は世界中に広がります。CDSによるヘッジが機能しないとなれば、株や債券といったリスク商品はドッと売られる。日本の国債や株も例外ではありません。欧州だけの問題ではなくなるのです」
ギリシャ国債の元本は最大5割カットされる見通しで、事実上のデフォルトを迎える。しかし、危機は一国の破綻だけで収束しない。大量の日本国債を保有 する日本の金融機関も損失を抱え、アップアップだ。世界はコントロール不能の経済危機=恐慌に突入することになる。

<引用終わり>


■ アメリカに付きつけられる銃口 ■

問題はこのCDSを誰が販売し、受け取り手が誰かという事です。

ユーロ危機はギリシャのデフォルト危機をきっかけとしています。
世間ではこれはユーロ圏の弱体化の様に報道します。

ヨーロッパの国債にCDSを発行しているのはアメリカの銀行です。
JPモルガン、ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー、リーマンブラザーズ
と言った、アメリカの投資銀行の名前が挙がっています。

ギリシャ国債は民間は50%ヘアカットされ
本来ならばデフォルト認定です。
ところが、不思議な事に損失分を国が肩代わりする形で、
デフォルト・イベントは発生していません。

もし、ギリシャがデフォルトと認定されれば、
アメリカの投資銀行は、CDSの支払い義務が発生します。
受け取り手は、ギリシャ国債を購入したヨーロッパの銀行です。

ゲンダイの記事ではありませんが、
ギリシャ一国だけでも100兆円の支払いが発生します。
これは、とても民間銀行の手に負える額ではありません。

ですから、ギシリャのデフォルトは、
アメリカの銀行の破綻を引き起こします。
これは、ヨーロッパからアメリカに突き付けられた銃口です。

■ バーセルⅢを受け入れるFRBと、日銀特別融資を視野に入れる野村 ■

FRBはバーセルⅢをアメリカ国内の銀行に適用する準備をしています。
バーセルⅢは、自己資本の質を強化する事で、
金融危機発生時に備えて銀行の基礎体力を高める処置です。

しかし金融株の下落が著しい現状、
増資で自己資本を補強すると、株価下落という副作用が発生します。
「みずほ銀行」が良い例です。

バーセルⅢが適用されたら、アメリカの銀行は資産を売却したり
投資を引き揚げて、自己資本を積み上げるしか方法がありません。

これは今話題の野村證券とて同じです。
野村證券はリーマンブラザーズのヨーロッパ部門を買い取りましたが、
彼らはギリシャなどの国債のCDSを発行しています。

ヨーロッパは野村證券が経営破綻した場合に
日銀か国家が野村證券を救済する事を求めています。
これは、ヨーロッパの国債で、デフォルト・イベントが発生した場合、
野村證券は旧リーマンブラザーズが発行したCDSを、
日本国民の税金を投入しても、きっちり支払えという要求です。

■ 勝者は存在しない ■

ここまでの説明では、勝者はヨーロッパ、敗者はアメリカに見えます。

しかし、アメリカの銀行や財政は巨大なCDSの支払いに耐えられません。
これは、アメリカが世界に突き付ける銃口です。

要は、ヨーロッパで国債が破綻してCDSの支払い義務が生じたら、
アメリカ発の金融危機が世界を襲うぞと、脅しているのです。
結局、勝者は存在しません。

本日、昨日の課題に対する、私なりのレポートでした。


■ ブラック・クリスマスは回避された ■

今回、世界が「ブラック・クリスマス」を回避出来たのは
EUの首脳達が、格付会社に対して、
ヨーロッパの格下げを、2012年の1月まで延期する様に頼みこんだ結果
という記事がネットに出ていまいた。

来年1月には再びユーロ危機がクローズアップされて来ます。

野村證券は今回の騒動に対して、
広報部長が告訴を匂わせる脅しをTwitterに発表するという
前代未聞の対策をしています。

本来ならネットのガセネタなど無視が正しい対策ですが、
何を慌てているのかと、むしろ憶測を呼ぶ結果となっています。

ガセネタなどと言っていられるうちは平和な証拠です。
来年からは、ガセネタにも世間は敏感に反応せざるを得なくなるでしょう。