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DNAはデジタルプロセス・・・リードソロモン符号によるエラー補正

2011-12-25 09:53:00 | 福島原発事故
 




■ DNAの一本鎖切断は簡単に修復できる ■

放射線による被爆の影響は、細胞の遺伝情報DNAの破壊によるものです。

放射線はそれ程危険で無いという研究者達が根拠とするのは、
DNAの修復が従来考えられていたよりも
高度で精密なシステムで働いている事が近年判明した事です。

DNAが2重螺旋構造をしている事は良く知られています。
これは、DNAのバックアップ機能と考えられています。
活性酸素や放射線によって、二重螺旋のどちらか一方が切断されても
正常なもう片方から、修復する事が可能です。

これはDNAをコードする4種類のタンパク質、
アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)が
かならず1対を成している事に起因します。

G-C
T-A

上手の様に、結合する相手が決まっているので、
どこかのタンパク質が欠損しても
残された一方のアミノ酸に対を為すアミノ酸を修復するだけで済みます。

この様にDNAのどちらか片方の鎖の切断は、
ほぼ完璧に修復されます。

これはアミノ酸一個だけの欠損だけでは無く、
連続する何十個単位の欠損の修復にも有効です。
修復後にチェックする機能も備えています。

■ 二本鎖の修復はちょと複雑だ ■

DNAの2本鎖の両方が欠損した場合の修復は一筋縄では行きません。
DNAは2本鎖切断も巧みに修復している事が近年判明してきています。

1)相同組換え(homologous recombination: HR)

  DNAのアミノ酸配列は繰り返しが多い
  欠損したアミノ酸群の相当するアミノ酸群をコピーして修復
 
  時々、異なるアミノ酸群をコピーするというエラーも発生する

2)相同末端再結合 (Non-Homologous End-Joining: NHEJ)

  切断されたDNAの末端同士を結合するという強引な修復
  DNA情報の70%はジャンク情報だと言われ、
  相同組換えよりも、実際的な問題の発生は少ないとされる。

  (最新研究では70%が必要な情報だとする説もある)

3)SOS修復

  大腸菌(下等だが、環境対応に優れた生物などで確認される修復)
  DNAが大量に損傷すると、応急処置的に大量のタンパク質が作られる
  DNAの損傷箇所に結合する塩基対は通常の塩基対で無い場合もある
  必然的に修復エラーが含まれるが、遺伝子変異による環境適合を促す

  これは、DNAの破壊による「死」よりも、
  「テキトー」な修復による「変異」を選択する「生存戦略」ですね。

■ 修正エラーまで修正するDNA ■

一本鎖切断や二本鎖切断の修復は、エラーが無い訳ではありません。
そこでDNAは修復された後、さらに修復エラーを検出して修復を行います。

ちょっと複雑なので簡単に書くと
DNAの修復を担うDNAポリメラーゼはエラー箇所で停止してしまいます。
すると、損傷の状態によって、いくつかの違う方法の修復が始まります

1) エラー箇所を単純に取り外す
2) 二本鎖修復と同様に似た配列のDNA群を結合する
3) 強引に適当な修復をして乗り越える
   (TLS: Translesion Synthesis, 損傷乗り越え複製)

エラーを単純に切り離しても、DNA情報の97%はジャンクですから、
その影響は限定的と言えます。
むしろその様な修復が行われという判断は、
DNAのその箇所がジャンクであるという判断の元に行われるのでしょう。

TLSは誤謬を含むDNAを鋳型に修正を行うので、
エラーが発生する危険性が高くなります。


■ エラーデータから正常データを再現するデジタルデータ ■


最近のDNAの研究の発展により、
DNAがデジタルエラー修正を行っているのではないかという研究者も居ます。

デジタル通信などでは、エラーを検出する信号がデータに付加されています。
一般的なデジタル通信では、通信エラーを皆無にする為に
通信エラーを検出すると、データの送り元に
データを再照合して、正しいデータを受け取ることで、
データのエラーを防止します。

これはデータの正確な鋳型を用いるので、
DNAの一本鎖切断に似た修復の方法と言えます。


一方、デジタル画像に転送や、CDの再生など
データを照合していては、再生が間に合わないデータの修復には
「リードソロモン符号」というデータ修正方法が用いられます。

詳しい話は難しいので下を参照して下さい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%BD%E3%83%AD%E3%83%A2%E3%83%B3%E7%AC%A6%E5%8F%B7

これは元データにある法則に則った付加情報を加える事で、
データに欠損が生じても、前後のデータから
欠損データを修復する機能を有しています。

CD上の1mmのホコリは、LPレコード上の10円玉に匹敵します。
アナログデーターであるLPでは、10円玉のデータの欠損は、
音楽信号の欠落として再生されます。
10円玉大のキズは基本的に針はトレースできませんが、
仮にトレースしたとして、ボバゴゴオオオンーーーとう
盛大なノイズが発生するでしょう。

一方、CDではデータは適当に分散配置され
(時系列的にシャッフルされ)
さらに適当な変調が掛けられた上で、
リードソロモン符号によるエラー修正が為されています。

結果として1枚のディスクには様々なキズやホコリが付着していますが、
CDで音楽信号の補完を必要とする様なエラーは殆ど発生しません。
1枚のCDを掛けて1回あるか無いかです。

DNAを4種類のアミノ酸でコードされたデジタルデータだとすると、
二本鎖切断によってDNAの欠落が多数発生しても、
原理的には、元のデータを修復する方法が皆無という訳ではありません。

■ DNAは速度優先の修復を行っているのではないか ■

DNAの修復の必要なのは「正確性」と「迅速性」です。
複数のDNAの切断が発生した時、
本来の組み合わせでない箇所でのDNAの結合が起こる可能性があります。

それは重大なエラーですから、DNAはその様な重大エラーを防ぐ為に、
先ずは不正確でも良いので、適当でも鎖の修復を優先するでしょう。

ですから、ジャンクデータの箇所では、
データを数十塩基すっ飛ばして鎖を修復したり、
適当な塩基でとりあえず間に合わせたりします。

しかし、DNAがリードソロモン符号の様な
エラーの自己修復データを備えているならば、
かなりの確立で、修復後修復によってデータは完全な形に修復されるでしょう。

■ 大腸菌は「変異」が大切、高等生物は「変異しない事」が大事 ■

DNA修復の研究は大腸菌など単純なDNAを持つ生物からスタートしています。
それらの単純な生物では、DNAの修復機能も単純です。
当然エラーも多くなりますが、これらのエラーは「変異」として表れます。
単純な生物においては「環境に変化」への対応は、
固体単体の防衛能力で行われると同時に、
「変異」による環境適応によっても行われます。
抗生物質の耐性菌が生まれやすいのも、「変異」が起こるからです。
これら単純な生物においてはDNAが環境によって変化する事が
生き残るためには大切な事なのです。

一方、高等生物では、固体全体が環境対応能力を有しています。
代謝や免疫を調整しながら環境変化に対応します。
ですから個々の細胞や遺伝子が、環境変化で簡単に「変異」してしまっては
固体の秩序立った働きが維持出来ません。

ですから、高等生物のDNAは、修復機構を複雑に高度化させました。
DNAがデジタルデータである以上、
その修復も当然デジタルプロセスだと考えるのは自然な事です。

そして、デジタルプロセスはアナログプレセスよりも
エラーに対して圧倒的な正確性を持ています。

1個の細胞で1日、100万回のDNA修復が発生しながらも、
私達が生き続けていらえれるのは、
私達のDNA修復能力の高さを証明しているとも言えます。

一部の学者はDNA修復の不確性を指摘します。
「DNA修復は完全には行われない」と。
しかし、私はそれはDNA修復の一部しか見ていないのだと思います。

ジャンクデータを適当に修復しても問題は発生しませんが、
それらの学者は、その事をしてDNA修復はエラーだらけだと指摘するのでしょう。
これは、情報工学的知識の欠如に他なりません。

DNAがデジタルデータである以上、
重要なデータは必ず制度の高い修復な為されるはずです。
リードソロモン符号は一つの例ですが、
デジタルデータ修復には冗長性なども含め、
様々なエラー訂正の方法が存在します。

今後の研究は、DNAの高度のデジタル修復の性能を明らかにしてゆくでしょう。

■ 生き物はデジタルデータでコードされたナノマシーンである ■



最近の分子生物学の進歩は、
タンパク質と生命の全く異なる姿を描き出しています。

上の図はタンパク質の構造を表しています。
生体に必要なタンパク質や酵素は、
DNAに記録された長大なデータをRNAが読み取って、
RNAを鋳型に、一本の長いアミノ酸の鎖が作られる所からスタートします。

アミノ酸の鎖は、アミノ酸の配列の仕方によって
複雑に折れ曲がり、立体構造を取ります。
そして、その構造の「くぼみ」や「出っ張り」に生じる特定の形と電位によって、
特定の作用を持つようになります。

例えば、ヘモグロビンはその「くぼみ」で酸素を捕まえたり
あるいは、酸素能動の低い所では、結合していた酸素を「切り離し」たりします。

この様に、タンパク質や酵素は特定の条件化で、
特定に元素や分子、あるいはその結合に
特定の機械的な働きをしる「ナノマシーン」なのです。

このナノマシーンの構造が大きく異なればその機能を失われますが、
多少の変異は、機能に支障をきたさない可能性があります。
DNAの配列が一つ乱れたからと言って、
それが致命的であるはずはありません。

■ 最新の分子生物学の成果を無視するLNT仮説 ■

生物を「生き物」として捉えると、掴みどころが無く
グチャグチャ、ビチャビチャした存在に見えます。

ところが、ミクロの世界では生物はデジタルデータにコードされた
アミノ酸を材料とする、タンパク質というナノマシーンの集合体です。

そこには、生命の神秘などは存在せず、
ゲノムの配列と、合成されるタンパク質の機械的働きが存在するだけです。

生命をこの様な器械の総体と捉えた時、
それらが備える放射線や活性酸素への防御機構を軽視する事は
非常に非科学的な行為だと私は考えます。

「放射線はとっても危険」とは、「非科学的」と同義では無いかと思うこの頃です。



フェリックス・ガタリは今読むと新鮮かもしれません。
「人間は器械だ!!」・・・ちょっとカッコイイかも・・。
「人造人間キャシャーン」みたいな乗りになってきたぞ・・・・。

ついでに「女は子供を生む器械」・・・ウワァァ・・・
これはヤバイ。柳澤大臣の様に袋叩きだァーーー!!