■ ユーロ危機はやはり「財政統合」の口実 ■
ヨーロパ首脳会談で決まりそう事
先ず「アメ」の部分です
1) EU版IMFである欧州安定メカニズム(ESM)を2012年7月までに稼働させる
2) ESMは5000億ユーロの資金力を持つ
3) 既存の安全網である欧州金融安定基金(EFSF)を13年半ばまで存続させる
4) EFSFは4400億ユーロの資金力を持つ
5) 並行してIMFも資金援助を行う
次に「ムチ」の部分は
1) ユーロ加盟国は、将来の財政赤字をゼロにする「均衡予算」の達成・維持を
各国憲法や基本法などで義務づける。
これだけでは「ムチ」にならないので、水面下での折衝では
2) 財政赤字の上限をGDP比で決定する
3) この上限を破った国の予算は、自動的に承認されない
4) 上限を超える為には、加盟国の2/3以上の同意が必要
「ムチ」の部分は、各国政府から「財政決定権」をはく奪する事。
各国政府や議会が基準を超えた財政赤字を増やそうとしても、
EUとしてこれを認めないというもので、
これは国家主権の一部をEUに譲渡するのと同じ意味を持ちます。
もめているのは・・・
1) EUの法改正無しに「財政統合」が実現できるかどうか
2) メルケルは「法改正が必要」として抵抗している
法改正の為には各国議会の議決が必要だと思われます
3) 「EU共通債」の発行は今回は盛り込まれず、将来目標とされる様です
■ ユーロは救われるのか ■
大分スッキリとした案がまとまったので、
ユーロが今日明日にも崩壊する様な危機にはならないでしょう。
しかし、9400憶ユーロとIMFで凌げるのはしばらくの間で、
時間稼ぎの時間についても、
この案に対して市場がどう反応するかに掛っています。
市場が満足せずに、各国国債の金利が高止まりしていれば、
いずれ近い将来、危機は再発します。
特に、ユーロ共通債の様な恒久的な財源を持たなければ、
危機が再発する度に、ESMへの拠出金を廻って、
今回の様な茶番劇が繰り返される事になります。
■ S&Pは格下げを断行して、揺さぶりを掛けるのでは ■
財政統合案としては、まだまだ中途半端な感じなので、
多分S&Pが米国債と同様に、15カ国の格付けを1Pずつ引き下げるでしょう。
ムーディーズとフィッチは格付けは据え置きそうなので、
米国債で発生した状況が、ユーロ圏の国債でも発生しそうです。
これにより、ユーロ圏の国債金利は高止まりし、
さらなる財政統合を行わなければならない事態に
来年の前半に追い込まれてゆくのでしょう。
■ 困っているのはドイツなのか? ■
金を出せとせびられて困っている様に見えるドイツですが、
ユーロが拡大マルクである事を失念してはいけません。
ECBもドイツ財務省の出先機関ですし、
EUのファインロバイ大統領もドイツ人です。
気が付けば、ドイツがEUの財政の中心を握っているのかも知れません。
これは当然と言えば当然で、「金を出す代わりに、口も出すぞ」って事です。
■ 何故EUの財政統合を急ぐのか ■
ここまでドイツやフランスは、ギリシャ危機を放置して、
ユーロ危機を故意に拡大してきました。
その目的が今回、白日の下に明らかにされました。(別に隠していた訳ではないけど)
ユーロ危機はユーロ圏の財政統合の為に茶番劇です。
最終的には負担を強いられる、
勤勉な国の国民を説得する為の政治ショーでした。
国債危機によってヨーロッパの大銀行は軒並み破綻危機に直面しています。
財政統合を承認しなれば、銀行が破綻して庶民の金は消えるぞという脅しです。
何故そこまで急いで財政統合を進めるかと言えば、
来年に発生しそうな大きな通貨全般の危機を、
現在のユーロでは乗り切れないからです。
ですから来年前半までには、一応の財政統合を達成して、
来るべき世界的な金融恐慌に備えるのでしょう。
■ 危機後に復活する、強いユーロ ■
来年中ごろに世界恐慌が発生したとすると、
各国通貨は等しく信用を失います。
そこでヨーロッパ各国は、寄らば大樹の陰とばかりに、
ユーロを導入するでしょう。
こすいて、ユーロは金融危機後には、より強いユーロとなているでしょう。
ヨーロッパとアフリカの基軸通貨はユーロになるかも知れません。
そして、金融危機で結局大方の金融機関が破綻すれば、
借金もチャラになり、やけに身綺麗になったヨーロッパが復活しそうです。