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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

貧富の差が拡大する世界・・・ストック市場の拡大が意味するもの

2014-04-03 11:12:00 | 時事/金融危機
 

■ 先進国の成長力の低下 ■

日本の貿易赤字が定常化しています。
短期的な原因は二つあります。

1) 原発停止によって天然ガスの輸入量が増大
2) 海外の消費が回復していないので円安でも輸出量が減っている

アベノミクスの支持者達は、上記の短期的理由に着目して、世界経済が回復すれば輸出も回復し、原発が再稼働すれば天然ガスの輸入量も減るから問題無いと主張するでしょう。

一方、歴史的に見れば先進国の製造業が衰退するのは避けられません。
同じ製品が出来るのならば、コストの安い国に創造設備が移転する事は止められないからです。

1) イギリスはかつての工業国であったが繊維産業は海外に移転した
2) アメリカもかつての工業国であったが、日本やドイツにその座を譲り渡した

工業が隆盛で加工貿易によって外貨が流入する時期は、貿易収支は大幅に黒字になります。同時にその様な時代は、国家のインフラ整備が盛んな時期に重なるので、内需も大幅に拡大します。

インフラ整備には財政出動が伴いますが、経済成長による税収の増加と高いインフレ率によって財政状態は良好に保たれます。

しかし、製造業が海外に流出し、さらには国内にさらなる生産性向上になる新規インフラ投資が少なくなるにつれて、経済は停滞を始めます。

1) 製造業の海外移転で貿易黒字が減少しやがて赤字が定着する
2) 新規公共事業による生産性の向上がゼロかマイナスに転じる

多くの先進国がこの様な経緯を辿って、低成長時代へと突入して来ました。

■ 製造業から金融業へのシフト ■

イギリスは大英帝国時代に世界中から富を簒奪します。
彼らはその富を金融という手段を用いて運用して来ました。

イギリスはアメリカを成長させる事による、アメリカを介して世界の富を集めるシステムを構築します。

アメリカの銀行の株を通して、アメリカの利益の上米を効率欲ピンハネする方法を編み出したのです。

アメリカは基軸通貨ドルの力を使って世界の富を集めています。
ドルはニクソンショック以降は単なる紙切れに過ぎませんが、人々の幻想によってその価値は保たれています。そしてFRBがドルを発行すれば、アメリカは世界中の物を買う事も出来ますし、世界中に投資する事も出来ます。

その代償として財政赤字が膨らみますが、その借用書としての米国債ですら、世界中で大人気です。

こうして、かつての覇権国家は、製造業が衰退した後も利益を確保する方法を生み出しています。


■ お金でお金を稼ぐのは効率が良い ■

製造業は生産を拡大する事で利益を拡大します。
その為には設備投資や雇用の拡大が必要で、資金を借りれば金利負担も生じます。
作った商品が思い通りの価格で全部売れる訳では無いので、損失も発生します。
この様に製造業が利益を上げるには大変な労力や計画性が必要です。

一方、お金でお金を稼ぐ方法は効率的です。
経済が安定して成長している国に投資すれば高い金利が得られます。
業績が確実に上昇する企業に投資しても、それなりの金利が得られます。

■ 見せかけのお金がお金を生む ■

資産(ストック)の美味しい所は、相場の上昇によって生まれる「見せかけの利益」がさらなる利益の源になる事です。

例えば保有する株価が上昇すれば資産総額は増大します。この「見かけ上増えた資産」と担保にさらにお金を借りて投資する事も出来ます。

土地も価値が上昇している時には担保価値が上昇するので銀行は沢山のお金を貸してくれます。

■ ストック経済はやがてバブル化して崩壊する ■

ところが相場が過熱すればいつかはバブルが弾けます。

ストックに依存した経済は、さらなる利益を求めて「架空の利益」を膨らめてゆきます。「架空の利益」とは実質的な価値に裏打ちされない利益です。

ストック市場の拡大速度は、実体経済の成長速度を大きく上回っていますから、どこかで限界に達すると実体経済の規模まで縮小します。これがバブルの崩壊です。

■ ストック市場の崩壊を資金供給で食い止めるのが量的緩和政策 ■

現在、世界の中央銀行が行っている量的緩和政策は、ストック市場の崩壊を資金供給によって強引に食い止める政策です。

ストック市場の価格は「見かけに価格」なので、危機が去れば元の「見かけの価格」に徐々に戻って行きます。量的緩和の目的は、紙くず同然になったMBSなどを政府や中央銀行が買い取ったり、銀行の損失を公的資金で補てんする事で、「見かけの価格」を維持する事です。

こうしてリーマンショックによって減少したストック市場の価格は、近年、リーマンショック前の水準かそれ以上に回復しています。

■ 実体経済の成長を犠牲にするストック市場 ■

近年問題なのは巨大化し過ぎたストック市場が実体経済本来使われるはずの資金を吸収してしまう問題です。


1) 人々が労働の対価となる賃金の一部を預金する
2) 銀行は金利が高い投資を選好する
3) 実体経済への投資より、資産市場での運用が高利回りならば資金は資産市場に集まる
4) 実体経済で必要な資金が不足するので、結果的に需要が圧迫される。

近年、先進国で問題となっているのは「潜在需要の不足」です。
本来、人々の物欲は再現が無いので、資金が実体経済で循環していれば、人々の旺盛な購買行動が経済を発展させます。

しかし、資金が資産市場に滞留すると、一部の資産家が資金を独占する為に一般の労働者の賃金が伸び悩む事になります。一部の資産家の消費出来るモノの量は限られていますので、富が資産家に集中すればする程、実体経済は停滞します。

■ 投資によって成長力の高い国が発展する ■

資産家は金利の高い投資を好みます。

成長が鈍った先進国よりも新興国の資金需要は旺盛なので、金利も当然高くなります。こうして本来国内で循環するはずの資金は、資産家や銀行の投資によって国外で運用されます。

先進国の経済成長率が低下する分だけ、新興国の経済が拡大します。

資産家や銀行は投資利益を国内に還元せず、新興国に再投資するので、新興国経済は過熱しながらも拡大を続けます。

■ 先進国の量的緩和は新興国を発展させている ■

FRBのテーパリングで新興国経済が最初にダメージを受けるのは、新興国経済を支えていう資金が量的緩和に供給されているからです。

一方、新興国の国民がせっせと働いて生み出した製品の多くは先進国の国民、特にアメリカ国民が買っています。

新興国には貿易黒字のドルが積み上がりので、外貨準備は米国債へと姿を変え、アメリカがさらなるドルを刷る手助けをする事になります。

■ 新興国の経済成長をドルを支えている ■

米国債の海外保有分の40%がコンスタントに日本と中国によって保有されています。
かつての新興国である日本と、現在の新興国である中国は、米国債とドルをせっせと買い支えています。

特に中国は為替をドルに緩やかにペッグさせている為、香港市場で大量のドルを買って元を売っています。

■ 日本は金融では損をしてばかり・・・ ■

日本の実体経済の成長が鈍化する中で、「貯金から投資」への変換を促したのが小泉政権でいした。

老人達は老後の資金を「投資信託」に投資する様になります。
その結果、利益を上げた人は居るでしょうか・・・・・。
多分、リーマンショックで皆さん損をしてしまいました。

世界はバブルを成長させたり、あるいは崩壊させたりしながら巨大な資金を生み出したり、消失させたりしています。

その過程で成長力の低い国の資金は、「投資」を通して成長力の高い国へと誘導されます。市場を拡大するにはある程度の資金が必要ですから、日本の老人の資金までもが「投資」として利用されます。

そして、バブルが弾ける直前に「相場を作った人達」は一足先に売りけ、巨大な利益を手にします。後には可哀そうな逃げ遅れた人達が残されます・・・・。

こうして、日本の老人の様な「小金持ち」の資金をも吸収しながら金融資本家達は巨大になり続け、日本の若者達は、「スカンピン」になった老人達を押し付けられる事になるのです。



アベノミクスはNISAによって、ささやかな庶民のお金までも投資市場に投げ込もうとしています。



確かに「お金でお金を稼ぐ」投資は儲かります。しかし、それは「見せかけの利益」である事が世界の真理です。


人々のささやかな欲望が、貧富の差を生み出している事に私達は気付いていません。そして最大の欺瞞は、中央銀行が失業率を金融緩和の理由にしている事です。金融緩和こそが貧困を生み出しているという歪みに気づくべきなのでしょう。


日銀の異次元緩和の生み出したものは、賃金の上昇無き物価上昇でした。要は、私達の実質賃金は下がったのです!!