多分、本日の記事で多くの読者を失う事になるかも知れません。
・・・でも、書かずには居られない・・・。
■ 子供の世界から駆逐されたエロ ■
男はエロが好きです。これは生物が子孫を残す為に当然の選択です。
それが例え小学生の男子だとしても、女子のスカートの中が気になったり、クラスで一番可愛い子を授業中にチラ見してしまうのは、生物として健全な行為なのです。
現代の社会は、この健全な欲望に対して抑圧的です。抑圧されたエロは、心の底で腐敗し、やがては「不健全なエロ」を熟成させて行きます。かつて、PTAのお母さん達が、様々なアニメやマンガを「不健全」として告発した事で、「健全なエロ」は「不健全のエロ」変質してしまったのです。
アニメで女の子のハダカが見えるなんてケシカラン!!
アニメで女の子のパンツが見えるなんてケシカラン!!
こうして、子供の見る時間帯から「エロ」は一掃され、掃溜めの様に腐ったエロが深夜に積っていったのです・・・。
■ 「健全なエロ」とは? ■
私が子供の頃、アニメの中は「健全なエロ」で溢れていました。マジンガーZのヒロインの操縦するアフロダイAの武器は「おっぱいミサイル」(正式には光子力ミサイル)でしたし、デビルマンの不動明も、結構エロエロの視線をミキちゃんに向けていました。これらのエロのほとんどは永井豪の作品でした。「キューティーハニー」も「ハレンチ学園」も彼の作品です。
永井豪作品のエロの特徴は「潔い」事です。おっぱいなんてもったいぶらずにドーンと出て来る。一応ヒロインは恥じらったりしますが、陰でコソコソとするのでは無く、白日の下でドーンと出す所がアッパレでした。
「エロに健全もクソもあるか!!」と御叱りを受けそうですが、そこ重要だから!!
現在のアニメに多く見られるエロの多くは「汁系のエロ」。エヴァが良い例ですが、社会の隅に押しやられた少年達のリビドーが発酵匂を放っています。こういう感じって、実は日本映画の得意分野で、「エロのリアリズムの追求」は70年代のアングラ映画や日活ロマンポルノの得意分野でした。
一方、アングラ系の映画には、「乾いたエロ」の伝統もあって、こういった「70年代的な性の解放」の流れと永井豪の諸作は無関係ではありません。フェミニスト運動などで欧米で女性の地位向上と共に、「性の解放」が叫ばれ、その流行が日本にも反映されたのが「乾いたエロ」だったのかも知れません。
一方、「汁系のエロ」と「乾いたエロ」のどちらがエロティックかと言えば、これは圧倒的に「汁系のエロ」に軍配が上がります。永井豪作品は70年代の放送当時は、土曜日のゴールデンタイムに家族で楽しむ健全性がありましたが、これは「汁系のエロ」ではとても不可能だと思います。エヴァのシンジの問題シーンを家族で見れるかと言えば・・・とても無理でしょう。
この様に考えると(別に考える必要もありませんが)、「健全なエロ」とは、エロティズムの本質的な淫靡さを捨て去る事で、エロの持つ生命力のみを積極的に抽出したものなのかも知れません。その意味において、ある種、スポーツの開放感に通じるものがあるかも知れません。
だから、キューティーハニーの変身シーンで、お父さんも机の下でグっとコブシに力を入れてしまうのです!!
■ ほとばしる「健全なエロ」。『健全ロボ・ダイミダラー』 ■
前置きが長くなりましたが、今期スタートのアニメ『健全ロボ ダイミダラー』は、汁系エロが溢れる昨今のアニメ界に燦然と現れた「健全なエロ」作品です。
人類は高度な科学力を持ったペンギン達の国「ペンギン帝国」の攻撃によって「大迷惑」しています。そんなペンギン帝国に対抗する為に作られた人類側の組織が「美容室プリンス」です。始めは何の変哲もない美容室に、いつしか優秀な科学者が集い、ペンギン帝国の攻撃に対抗し得る兵器(ロボット)、ダイミダラーを完成させたのです。
ダイミダラーのエネルギーは「ハイエロ粒子」。ハイエロ因子を体内に強く持つ「ファクター」と呼ばれる限られた人間は、ハイエロ粒子を大量に生産する事でダイミダラーを操る事が出来ます。
真玉橋孝一(まだんばし こういち)は胸があれば揉みたくなるエロ高校生ですが、彼こそがハイエロ因子を持つ最強のファクターでした。美容室プリンスのエージェント楚南恭子(そなん きょうこ)にスカウトされた彼は、無理やり戦いに巻き込まれ、恭子の胸を揉む事で、ペンギン帝国の巨大ロボット「南極8号」を撃退します。
それまで、単なるエロだと思っていた自分に、そんな凄い力が秘められていた事を知った孝一は、ペンギン帝国の野望を打ち砕く為、ダイミダラーに乗って戦う事を決めたのです。恭子の胸を揉みたいが一心で・・・。
ウワーーー、書いていてすっごく恥ずかしい・・・。
本当にバカらしい作品です。(褒め言葉)
■ 「前シッポ」的逆転 ■
もう、呆れる程アホラシイ(褒め言葉)なのですが、その真骨頂が「前シッポ」。
ペンギン達の股間にそそり立つ一物、放送的に完全にアウトでしょう。しかし、ペンギン達はこう言い放ちます。
「我らの股間にそそり立つもの、我らの象徴、我らの誇り、これこそが「前シッポ」だ!!」
・・・・シッポならしょうがないか・・・・石原都知事だってそう思うに決まっています。
この華麗な「転換」は、この作品の随所に見られます。これを一般的には「開き直り」と言います。そもそもこの作品自体が、壮大なる「開き直り」です。
オッパイ出しちゃダメ!!
パンツ見えちゃダメ!!
そういう諸々に規制に、「エロの何が悪いんだ!!」とあっけらかんと開き直って見せます。その結果、この作品に突込みを入れる方がエロいヤツに思えてしまうから不思議です。
「この股間の物は何ですか!!」
「エ!?コレはシッポですよ。何だと思ったんですか・・・?」
「・・・・」
「裸を描くなんてケシカラン!!」
「あなたシャワーを浴びる時に水着を着てるんですか・・・?」
「・・・・」
「パンツが見えるなんてケシカラン!!」
「エ、あなたパンツを履いて無いんですか・・・?」
「・・・・」
もう徹底的に開き直られると、「ケシカラン」と言う方が何だかエロような錯覚に陥ります。これこそ、この作品を健全たらしめる「反転」の構造です。
■ 歴代の怪獣映画やスーパーロボ物を熟知した演出 ■
まあ、色々と酷い(褒め言葉)作品ですが、第一話の作画を見れば、怪獣映画やロボットアニメで少年時代を過ごした私達の世代は、制作スタッフの「本気」を感じ取らずにはいられません。
ダイミダラーの登場シーンですが、沖合いにダイミダラーが着水すると、時間を置いて大波が沿岸に押し寄せます。この時間の間が、空間の大きさを感じさせるのですが、かつての怪獣映画で良く使われた演出です。そして、確か、エヴァの芦ノ湖のシーンでも、こんな演出がされていた様な・・(うる覚えですが・・・)
前景のビルの背後にダイミダラーが右手から画面に入って来る前に、手前の電線がダイミダラーの歩行の振動に合わせて揺れます。電線が揺れると言ったらエヴァの演出ですが、エヴァはヒュンヒュン揺れるのに対して、こちらはビリリ、ビリリと揺れ、より怪獣映画のそれに近い感じです。電線を揺らす事で重量感を作り出しています。
これも怪獣映画の定番。ミニチアセットをアップで前景に入れる事で、等身大の着ぐるみの怪獣の巨大さを引き立てるシーンに使います。
これも怪獣映画ではお馴染みのシーン。手前にミニチュアを入れ、その背後で着ぐるみがバトルします。このシーンではロボットの移動に合わせて画面が左から右に並行に移動します。こういう視点の移動(本来カメラならばレールに乗せて移動するシーン)を、アニメーションであえて描く所がミソ。
結局、1話の戦闘シーンの作画は、実写怪獣映画の撮影テクニックをアニメーションで徹底的に再現しています。これは、現代のCGアニメの動き回る戦闘シーンへのアンチテーゼとも言えます。動き回らない事で、むしろ巨大さや重量を表現しているとも言えます。
そして、真骨頂はこちら。
敵のロボットが視界に入る前にビルのガラスに写り込みます。これ、平成ガメラで樋口慎二がやった演出ですね。
『ゴジラ』以来、日本は数々の怪獣映画を作って来ましたが、特撮監督をエヴァンゲリオンの樋口慎二が担当した「平成ガメラ3部作」こそがその頂点でしょう。
1作目は古典的な怪獣映画へのオマージュ。
2作目は、SFアクションとミニタリー演出の傑作。
3作目はエヴァを経過したアニメ時代における新たな怪獣映画。
いずれにしても上で紹介した3作品の劇場予告に、過去・現在、そして未来に渡る日本の怪獣映画の全てが詰まっています。そして、この伝統に『健全ロボ ・ダイミダラー』はとても忠実です。
■ ロボットアニメとしての正統の血筋 ■
一方、アニメ的な豪快な絵動きや構図は、往年のロボットアニメを手本にしています。
アニメのロボットの魅力と言えば、パースペクティブを強調したデフォルメですが、上の様なカットにその特徴が良く現れています。
その一方で、オープニングのこのシーンは、まだまだ日本のロボットアニメの作画が平板的だった時代を彷彿とさせます。
ぱっと思いつくのはゲッターロボのオープニング。
(余談ですが、ゲッターロボの音楽って、「Gメン75」の菊地俊輔だったんですね!!)
■ 『マジンガーZ』の正統な継承者 ■
この作品が、『マジンガーZ』を明らかに意識しているのは、ダイミダラーを開発した博士達が「三博士」と呼ばれている事から明らかです。
「三博士」、懐かしいですね。元は聖書にある「東方の三博士」から来ているのでしょうが、ダイミダラーの「三博士」は御色気タップリです。
本家の『マジンガーZ』は平成に入って永井豪自身がリメイクしていますが、今の時代に永井豪のテーストはあまりにもかけ離れています。その点、今的な要素をふんだんに盛り込みながらも、しっかりオバカで健全にエロしている『健全ロボ ダイミダラー』は『マジンガーZ』の正統な継承者だと言えます。
■ 『キルラキル』とは違うのだよ!! ■
昨今のアニメ作品には『キルラキル』の様に、永井豪作品のオマージュとも言える作品が登場しています。しかし、『キルラキル』は永井豪作品の様でありながら、何かが欠けていました。
それが何であるのか『健全ロボ ダイミダラー』を見るとハッキリと理解出来ます。足りない物は「オバカ」だったのです。
所詮はアニメなど子供相手の表現作品です。ところが『キルラキル』は、オバカを演じていながら、実は相当に「賢い」作品です。脚本の中島かずきが「劇団☆新感線」の脚本家である事から、「オバカを装ったお利口さん」的な匂いがどうしても消えません。
それに対して『健全ロボ ダイミダラー』の監督の柳沢テツヤはオッパイアニメの『ハイスクールDxD』でブレークした監督ですから、オッパイとは切っても切れない関係。彼の描くエロは「汁系」的な嫌味が無く、健康的で、オッパイ愛を感じます!!
元々はサンライズでロボットアニメの作画をしていたという柳沢監督にとって、「エロxロボ」の組み合わせは最高に相性が良いのかも知れません。
そんな監督のコダワリが一番感じられるのが、OP。
もう、一日中、この歌が頭の中で響いています・・・。
今期もあまり面白い作品の無いアニメですが、唯一、『健全ロボ ダイミダラー』だけは別格です。実はアニメ嫌いの家内も、この作品は好きみたいで、ノリノリで見ています。娘と家族3人で、ゲラゲラ笑いながら見ています。これこそが永井豪の全盛時代のお茶の間の風景です。
健全なエロこそが日本を救います。
少子高齢化対策として、文部科学省の推薦作品にすべきです!!