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株や債券はバブル状態か・・・実体経済からの乖離

2014-06-12 09:16:00 | 分類なし
 

■ 「米経済の力強い回復」って本当? ■


アメリカの就業者数 

「アメリカの雇用が回復している」「アメリカの雇用はリーマンショック前の水準に回復した」と言われる昨今、就業者数のデータでもそれがほぼ裏付けられています。

「リーマンショックは去った」として市場はリスクオンのムードが高まっていると分析するアナリストも少なくありません。

■ アメリカの平均所得は下がっている ■


米国の世帯所得の平均(セントルイス連銀)

上のグラフはアメリカの世帯所得の平均の推移です。リーマンショック以降低下傾向が続いていた事が顕著に分かります。ようやく下打ちした様ですが、アメリカの世帯所得はリーマンショック以降、確実に減少しました。



リーマンショック以降もアメリカではインフレが進行しているので、名目所得が増えても実質所得は低下してる事が上のグラフから分かります。

■ 拡大する格差 ■

一方でアメリカは1970年代以降、所得格差が拡大し続けています。現在のアメリカでは所得の多い人達は資産運用で益々富を増やす一方で、平均以下の所得層はほとんど資産を持っていません。



上のグラフは所得階層と所有資産の割合を示しています。上位1%の富裕層が資産に占める割合が33.8%、90-99%が37.7%に達しています。上位10%の人達が70%以上の資産を独占するのがアメリカの社会です。平均以下の層の資産は2.5%に過ぎません。

この様に上位10%の人達の所得や資産が全体に与える影響が大きいアメリカでは、平均所得の数値は所得の現実と乖離しがちです。アメリカの雇用や所得の数字を見る時には注意が必要だと言えます。

■ 第一四半期のGDPがマイナス成長 ■

雇用統計の数字が回復する一方で、アメリカの実体経済の数字は芳しくありません。1-4月期のGDPも1.0%のマイナス成長となりました。

大雪の影響なども無視できませんので、今後の動向如何ではありますが、中間層の所得が低下傾向にある状況では、アメリカの消費の拡大は期待出来ません。

■ 「顕著な悪材料が無い」という理由で買われる株と債券 ■

ヨーロッパもECBがマイナス金利を導入するなど、世界経済は減速傾向を示していますが、株式市場や債券市場は高値を続けています。

リーマンショック以降、ギリシャ危機に端を発する欧州債権危機やユーロ危機など、世界は危機が続きました。しかし、危機が去ってしまうと、「意外にも世界経済や金融市場はタフだった」という印象が残ったのではないでしょうか。

危機に慣れた市場では、「顕著な悪材料が無い」という理由からリスクオンのムードが広がっています。

確かにウクライナや中国沿岸での緊張は高まっていますが、誰もが直ぐに戦争が始まる状況で無い事を疑いません。「危機は存在するけれども無視出来る」という事でしょう。

■ 市場が鈍感になるとバブル化する ■

現在の株式市場や債券市場がバブルかと言えば、過熱感が不足している気がします。危機に対する警戒レベルは下がっているものの、非常口から遠ざかりつつも、非常口を視野に入れた状態での取引が続いている感じがします。

この様な状況では、市場は一定のスパンで調整を入れながら値を上げて行くので、どこからがバブルなのかの判断が難しくなります。そのうちに、「調整」に対しても鈍感になって来ると、いよいよバブル状態になって行くのでしょう。

■ 市場を過熱させる材料はあるのか? ■

各中央銀行はバブルを警戒していますので、市場に資金を異次元に注入する一方で、市場の過熱を牽制しています。

FRBはテーパリングで、日銀は追加緩和の否定で、ECBは緩和規模を実質的に拡大しない事で、ゆるやかにブレーキを掛けながら、アクセルを踏み込んでいます。

市場関係者も、量的緩和無くして現状を維持出来ない事を誰もが理解しているので、過度なリスクを取る事をありません。

現在の市場に「イケイケ・ドンドン・マーチ」は響いていません。

■ 市場を崩壊させる要素の方が怖い ■

実体経済の回復の弱さからして、株式市場も債権市場もバブルには程遠い状況に見えます。

しかし、どのバブル崩壊も切っ掛けは思わぬ所から姿を現します。私達がノーマークの所で既にバブルは膨らんでいるのかも知れません。

「バブルは弾けてみて初めてバブルだと認識される」という言葉が事実ならば、一般の私達がバブルの匂いをかぎ分ける事は難しいのでしょう。