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楽観と悲観・・・意識されない危機は無視される

2014-06-24 05:18:00 | 時事/金融危機
 

■ 危機を意識させない中央銀行総裁 ■

FRBのテーパリングが順調に進んでいます。

アメリカはリーマンショック以降QE1,QE2,QE3と量的緩和を続けて来ましたが、QE2とQE3ではFRBが米国債やMBSを大量に買い入れて金利上昇を抑制して来ました。

昨年5月にはQE3の段階的終了を予測した市場が米国債を売却して米国債金利が上昇しましたが、バーナンキはテーパリングを年末に先延ばしすすると同時に、政策金利の利上げは当分先である事を市場にアナウンスする事で、テーパリング開始時に市場は大きな混乱はありませんでした。

短期筋は、市場が荒れてポラティリテーが高まる事でより大きな利益を上げるので、テーパリング開始に合わせて米国債売りを仕掛けたと思われます。この際、若干の米国債金利の上昇が見られましたが、10年債で3%の金利を上限として、米国債金利は下降に転じています。

日銀の異次元緩和のスタート時にも若干の混乱が見られましたが、市場は冷静に判断し、次第に「異次元」に順応しています。

この様に中央銀行の大きな政策変更に際しては、短期筋が仕掛けて若干の混乱はありますが、市場に政策変更の目的を充分熟知させる事で、パニックは発生していません。

現在の中央銀行総裁には「市場との対話能力」が重要視されていますが、この点バーナンキは非常に優れていたと評価されています。日銀の黒田総裁に関しては、アベノミクス効果(?)の景気景気回復やある程度のインフレ進行という実績が、彼への信頼を生みつつあると言えます。

日銀に関しては「成功」は多分に結果論的で、円安に大きく助けられているとも言えます。安倍政権が誕生する2012年11月頃にはユーロ危機が沈静化して円からユーロやドルへの資金移動が起き、円安が始まっていました。そこに日銀が通貨供給を拡大すると大きくアナウンスしたので、ヘッジファンドを中心に円安誘導が発生し、それに続く日本株高を演出していったというのが現実的な見方ではないでしょうか。

アベノミクスや異次元緩和はある意味「期待に働き掛ける」政策ですが、それに先行して答えているのはヘッジファンドを中心とする短期筋で、長期筋や個人はその動きにつられて行動しているとも言えます。

結局、中央銀行の大きな政策転換においては、タイミングと短期筋への牽制が大きく効果を発揮するのでしょう。

■ 市場の意思には「慣性」が働く ■

「市場の意思」と良く言われますが、短期筋の意思と、長期筋の意思には隔たりがあります。短期筋は市場が荒れた方が儲けが拡大しますが、長期筋は市場が安定成長する事で利益を拡大します。

規模的には長期筋の方が大勢を占めるので、結果的には市場は長期筋の意思によって動いており「安定」を好みます。これは市場の「慣性」とも言える現象です。

リーマンショック時には金融市場が大きく今来しましたが、長期筋も含めてポジションの解消が進んだのでさらにパニックが拡大しました。

「安定」という「慣性」が働いている市場でパニックを起こす為には、ほぼ全ての市場関係者が「危険」と認識する状況が発生する事が必要で、この様な事件は「〇〇ショック」と後に言われる様になります。

■ 現在の市場は「安定」している? ■

現在の市場が株式も債権も高値を維持しており、一件「安定」している様に見えます。
一方でリスク資産の株式と、リスク回避資産の国債が同時に変われるなど、少々不思議な様相を呈しています。

リーマンショック以降の金融緩和で市場は資金が飽和しており、金利は低く抑えられています。その結果、金利とリスクの相対関係が崩れているとも言えます。端的な例が社債市場ですが、ジャンク債の金利が5%を切るなどリスクに対する金利が不当に低い状態になっています。

この結果企業は安いコストで資金調達できるので、その資金が自社株買などという形で株式市場に流入して株高を後押している一面もあるかと思います。

こうした「低金利に支えられた循環」が今の市場を「好調」に見せているのかも知れません。実際に日経やダウの出来高を見ると株価程の活況は見られません。薄商いの中で、公的資金や自社株買などが株高を演出しているのが現在の株式高の要因では無いでしょうか。

■ アメリカは金利上昇を意識して来た ■

テーパリングに成功したFRBはQE3を年内中に終了させ、今度は政策金利のアップを試みて行くでしょう。

現在の「異常な低金利」に慣れた世界は金利上昇に脆弱ですが、アメリカの金利上昇の時期に日本やヨーロッパの景気が悪ければ、資金は金利に釣られてアメリカに流れて行き、FRBの金利上昇を後押しするはずです。

円やユーロを調達通貨としたキャリートレードを発生させる為には、アメリカの金利はある程度高い必要があります。

もしFRBが混乱を招くことなく金利アップを乗り切ったならば、アメリカへの資金流入が加速し、アメリカ経済は成長軌道に乗る可能性は低くありません。こうなればチャレンジャーな国民性全開で一気に市場が過熱して行きます。FRBの描く未来像は「金利の正常化」です。これこそがアメリカの「勝利の方程式」なのでしょう。

■ リスクは大して変わらない ■

問題は市場に供給された大量のマネーをFRBが市場から吸収出来るかに掛かっています。一度マネーサプライの歯車が回り出すと、過剰流動性が一気に高まります。こうして市場はピーキーな状態になりバブルが形成されて行きます。

一方で既にQEを終了した米国債市場は、好景気が意識される事で金利上昇が発生します。ここでも金利に釣られて日本などの資金が米国債市場に流れ込み、金利上昇に歯止めが掛かります。

一見、バラ色の未来の様に感じますが・・・やっている事はリーマンショック以前と大して変わりません。怪しい自動車ローン債権や、クレジット債権や住宅債権が不当に高い値段で売買されて行くのでしょう。

こうして、リーマンショック前夜の状況がアメリカに出現するのかも知れません。
そして、過去の経験から言えば、日銀が異次元緩和を縮小する時点で綻びが見え始めるのかも知れません。

■ 儲かるのはいつも果敢にリスクを取る人達だけど・・・ ■

リーマンショックの余韻が薄まると同時に、「危機感」も消えて来ました。
リスクを果敢に取る人達の収穫時期が近付いています。

一方、「危機」を盛んに喧伝して来た私などは、「オオカミ少年」扱いを受けるのでしょう。

しかし、一方でソロスやロジャースらはリスクに対して果敢にチャレンジしますが、決して構造的リスクを無視している訳ではありません。彼らリスクを十分理解した上で、閾値を上手に予測して、他の市場参加者の先を走る事でリスクを低下させています。

彼らの行動がインサイダー情報によるものなのか、或いは世界の経営者の意思なのかは分かりませんが、彼らの投資行動が市場を刺激して、ある種の流れをコントロールしています。

■ 庶民が投資を活性化した時が売り時 ■

日本では年金の積立金が株式市場に投入される事が予測されるので、しばらくは個人が買い易い状況かと思います。

個人の資金が動き出したら狩りが始まるのがいつもの事。

さて、投資をされている方達の腕の見せ所になって来ました。
「オレは逃げ切れるさ」と思っているアナタ、頑張って下さい。