■ 年金が減るの? ■
「2015年度から公的年金が減額される!?」という報道されています。
年金受給世帯にとっては年金の減額は生活を直撃するので、高齢者の方々は戦々恐々しているかも知れません。
■ デフレで減るべき年金が減らされなかった ■
小泉政権下で実施された年金改革の目玉の一つが「マクロ経済スライド方式」という年金支給額の決定方式です。ただ、この制度実施に当たり、「年金が減る事への抵抗」が大きかった為に、年金の減額は行わないとさました。その結果、物価上昇率の低りデフレの時代には、年金が払われ過ぎるという欠点を残していました。
1) 2005年以前は「物価スライド方式」で物価上昇分に相当して年金支給額も上昇
2) 一方、少子高齢化によって年金の負担者は減り受給者は増大する
3) 従来の物価スライド方式では年金財政はいずれ破綻が確実
4) 年金精度改革で「マクロ経済スライド方式」を採用
5) 「マクロ経済スライド方式」は将来的な物価予測や所得予測、年金受給関係を反映
6) 厚生労働省の予測では物価スライドで算定した金額に0.991の係数が掛かる
7) 「物価スライド方式」では物価下落時に年金支給額は下がる
8) 「マクロ経済スライド方式」では物価下落時には年金の支給額は据え置かれる
9) デフレが続いた為、本来減額されるはずの年金の支給額は据え置かれたまま
10) デフレが続いた為、「マクロ経済スライド方式」による調整は1回も行われてていな
11) デフレ調整が事実上行われない為に年金は7兆円程払われ過ぎたと言われている
■ 評価されるべき改善だが・・・ ■
以前より問題となっていた「払われ過ぎた年金」ですが、老人票の力を恐れて、どの政権も年金制度の欠点に手を付ける事が出来ませんでした。
先日、麻生財務大臣が「年金の減額を検討している」と発言した事で、安倍政権は年金制度のタブーに手を付ける様です。これは評価されるべき改善です。
一方で、特殊出生率が小泉政権時の予測より低い為、年金制度は当時の予測よりも厳しい状況にあります。「100年持つ」と言われた年金制度改革は既に破綻し始めています。元々、国民年金の支払い義務がありながら、減免されていたり、支払っていない人が4割にも達する現在の国民年金は公正性の欠片も無く、根本的に崩壊しています。
さらに、非正規雇用が全労働者の4割に達する状況にあって、厚生年金も破綻が確実になりつつあります。
この様に、将来的な年金の受給関係の悪化が「マクロ経済スライド方式」に反映されるので、時間が経つにつれて調整率は徐々に上昇し、将来的な年金の支給額は大きく減る事が予想されます。
■ 都合の悪い事を書くすインフレの進行 ■
物価上昇が抑制的で、マクロ経済スライド方式が厳格に運用されると、年金の支給額は将来的には減少するはずです。
しかし、ある程度の物価上昇がる場合、年金の支給額は物価スライド分が上昇するので、名目支給額の減少は抑制的です。日銀や財務省がインフレの実現に必死になるのは、年金の名目支給額が顕著に目減りしない一方で、実質支給額を減らす作戦なのでしょう。
リフレ派はインフレが全てを解決すると主張しますが、実はそれは「政府や財務省にとって都合の悪い事を解決する」と言い換えた方が良いのです。
■ 「年金には頼れない」という空気を作り出す作戦では ■
実際的に将来的な年金に期待している現役世代は少ないはずです。
余裕のある方達は貯蓄に勤しみ、投資で資産を増やし、個人年金で足りない年金を補おうとしています。
これらの資金は金利に引かれて、新興国投資やアメリカへの投資に流れて行きます。公的年金の将来的な縮小はこれらの流れを加速するはずです。
ある程度富裕な人達は、公的年金に頼らないでも生活出来ますが、一般庶民には死活問題です。しかし、金融界は資産の無いパンピーには全く興味がありません。彼らが興味が有るのは、「投資」に積極的なある程度豊な人達なのです。
彼らが「年金の崩壊」を意識して投資を活性化させる事が、金融界には大切なのです。
しかし、投資は自己責任なので、これを責める理由は見当たりません。
■ 国民の年金をギャンブル経済の火にくべる愚行 ■
問題なのは、ただでさえ不足する年金の積立金の運用を株式や債券、さらには海外株式や外債に移行しようと企む者達が居る事です。
本来は年金は安全な日本国債で運用するのが好ましいのですが、日銀の異次元緩和で日本国債は超低金利が定着しています。年金の積立金を日本国債で運用しても金利は限定的です。そこで、金利の高い株式や他の債権、あるいは米国債などで運用するという流になります。
日銀が日本国債を市場から大量に買う事に既に抵抗感は無くなって来ましたが、日銀が米株や米国債を積極的に購入する事に国民は疑問を持たないはずがありません。ですから、日銀は日本国債を積極的に購入する事で、実施的に日本国債市場から年金資金などを締め出そうとしています。さらには、年金の積立金の運用緩和という後押しを財務省が実施します。
こうして、国民の大事な年金積立金は、安全な日本国債からギャンブル経済の火の中に投入されて行くのでしょう。
日本国債が安全かといえば・・・疑問もありますが、しかし、大規模な金融危機で暴落が確実な現在のリスク市場に投資すれば、将来的な損失は免れ得ません。
老人の皆さんは、「年金が減る」事よりも、「年金の運用」にこそ目を光らせるべきですし、個人資産を投資信託などでリスク運用する事のリスクこそ注意が必要なのです。
そして若者は・・・ガラガラポンが起きても生き残る知性と体力を身に着けるしか無いのでしょう。