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「グレート・リセット」・・・今年のダボス会議の不気味なテーマ

2020-06-05 04:10:00 | 時事/金融危機
 

■ 今年のダボス会議のテーマは「グレート・リセット」 ■

<6月3日 日経新聞 ネット版より引用>

世界経済フォーラム(WEF)は3日、2021年1月に開催する年次総会(ダボス会議)のテーマを「グレート・リセット」にすると発表した。世界的な新型コロナウイルスの感染が広がるなか、資本主義を軸とする既存の体制には不備も目立つ。どんなふうに立て直していけばいいのか。WEFを創設したクラウス・シュワブ会長に聞いた。

<引用終わり>


以前は「ダボス会議」も「ビルダーバーグ会議」も秘密会議でした。その存在を知る一部の人が「世界の有力者達がダボスやビルダーバーグに集って秘密の会議を開いている」と語ると、陰謀論者のレッテルを貼られました。それが今では新聞やTVニュースで報道される様になりました。

米ソ冷戦の期間でも両国の高官はこれらの会議で顔を合わせていたと言われ、陰謀論者にしてみれば、これらの会議は「世界ってこんなモンなんだよ」と語るには便利でした。

そのダボス会議の今年のテーマは『(資本主義の)グレート・リセット』。



1971年からダボス会議を主催して来た経済学者クラウス・シュワブ氏はこう語っています。

「第二次世界大戦後から続くシステムは異なる立場のひとを包み込めず、環境破壊も引き起こしている。持続性に乏しく、もはや時代遅れ」「資本主義という表現はもはや適切ではない。金融緩和でマネーがあふれ資本の意味は薄れた。いまや、成功を導くのはイノベーションを起こす起業家精神や才能」

そして、コロナ後の世界についてこう語っています。

シュワブ氏は、2021年の年次会議のテーマを「資本主義のグレート・リセット」にすると述べた。パンデミックにより、インフラ、ヘルスケア、社会保障システムをおざなりにしていた「古いシステム」の欠陥が明らかになったためという。
シュワブ氏は「今と同じことを続ければ、反乱が起きるだろう」と述べた。




■ 資本主義の限界 ■

シュワブ氏が「資本主義の限界」について語った事で、コロナを巡る世界中の「過剰で不自然な対応」が何を目的といているのか、陰謀論的には合点がいきます。そして、アメリカの暴動も「予定されていたもの」と妄想出来ます。

かつて「理想の社会」と思われていた社会主義は、非効率と腐敗と恐怖によって崩壊します。一方、勝者と思われていた資本主義も、リーマンショック以降、システムとしての欠陥が目立つ様になった。

資本主義の限界は「金利がゼロ」になる事で、実体経済が麻痺する現象として現れています。金利は実体経済に資金を行き渡らせて経済を発展させる血圧の様な働きをしますが、これがゼロになる事で、経済は末端から壊死を始めます。日本の地方経済を見れば一目稜線です。


■ 金融緩和というカンフルは「格差」を拡大して社会を不安定にする ■

資本主義経済は実はオイルショックの頃から機能不全の兆候を示していました。オイルショックによって、先進国は不景気とインフレが同時に進行するスタグフレーションに陥った。不景気を解消する為に財政を拡大するとインフレも拡大するという悪循環でケインズ経済学の限界が露呈します。

そこで1980年代にレーガンやサッチャーが登場し、「新自由主義」的政策を取り始めます。財政出動に頼るのでは無く、中央銀行の金融政策によって経済を活性化させる。同時に金融市場の改革が始まります。「債券の証券化」など投資の環境が急速に整備されます。

ところが、「マネタリズム」的な金融政策は直ぐにその欠点を露わにします。それは「バブル崩壊を繰り返す」事です。金融市場の投資によって実体経済に資金供給をするという目的が充分に果たされる前に、市場はバブル化して崩壊し、安定的な成長を阻害する。

ほぼ10年周期でバブルが崩壊する度に、中央銀行は金利を下げて来ました。そして、金利がゼロに貼り付くと、量的緩和で強引の市場に資金を供給し始めます。

こうして、金融市場は実体経済を遥かに凌ぐ大きさに拡大し、実体経済が必用とする資金までも投機的な取引の燃料として吸い上げ始めます。本来ならば地域経済を活性化させる為に必要な資金が、金利というエサによって金融市場に吸い取らて行ったのです。結果的に経済効率の低い地域(金利の低下した地域)から世界は衰退を始めます。そして、それは先進国全てに広がって行った。

本来、地域経済の活性によって生み出される雇用が消失し、労働力が過剰供給となった為に賃金もどんどん低下して行きます。一方で、資産を持つ人達は投資によって「お金がお金を生む」恩恵に浴します。

こうして、世界中で格差はどんどん拡大し、アメリカを見るまでも無く、「持たざる者の不満」が社会を崩壊させつつある。


■ コロナショックのドサクサで実行される「ニューノーマル」の実験 ■

シュワブ氏だけで無く、聡明な経済学者や政治家、そして中央銀行も「資本主義の限界」に自覚的でしょう。

日本はゼロ金利に世界で最初に到達した国ですが、日銀の異次元緩和は事実上の財政ファイナンスですから、世界で最初に「ニュー・ノーマル」の実験をしていたとも言えます。

異次元緩和によて得られた答えは、「均衡は保てるが、成長は出来ない」というもの。財政ファイナンスで警戒すべきはインフレによる金利上層ですが、少子高齢化の日本ですら、為替の下落によるコストプッシュインフレが発生し、財務省は消費税増税によってこれを抑え込みます。結果として、経済は悪化しました。

この様に「財政ファイナンス」的な政策は、自由な為替市場を持つ世界では通貨安を引き起こすので、生活物資を輸入に頼る国ではコストプッシュインフレを起こす可能性が高い。これでは「隠れ財政ファイナンス」の継続は不安定となります。

そこで、コロナショックのドサクサに紛れて世界の多くの国が、こっそり「日本化」を達成して「隠れ財政ファイナンス」に突入します。大量の国債を発行し、中央銀行がこれを市場から吸収して資金を配る。コロナによって経済成長率は大きく低下していますからインフレの心配は要らず、各国が等しく財政を拡大し、通貨を増やすので為替にも大きな変動は起こりません。


■ 邪魔な金融市場をブッ壊す=グレート・リセット ■

各国が財政を拡大してお金を国民に配っても、余剰資金の多くは消費には向かわず資産市場に吸収されるでしょう。日本の高齢者も配られた10万円を貯蓄に回す人がおおいはずです。

将来の生活に不安を抱えた社会では、「お金を貯める」「「お金を増やす」というインセンティブが働き、資金は自体経済を刺激する事無く、資産市場に吸い上げられて行きます。

先進国は同様の悩みを抱えています。(アメリカ以外)

ではどうすれば良いか・・・簡単です。アメリカと巨大化し過ぎた資産市場をぶっ壊せば良いのです。

『グレート・リセット』でリセットされるのは、「アメリカを中心とした現在の資産市場」だと私は妄想しています。

■ MMT的政策に資産市場は邪魔な存在 ■

資本主義は限界に達しましたが、その次の経済や社会の構造は未だ不明です。少なくとも社会主義が台頭する事は有りません。

昔なら「世界大戦」によって人口と生産設備を破壊すれば、世界は次の成長軌道に乗れた。そして、戦争はイノベーションをもたらしました。

しかし、現在では「戦争によるグレート・リセット」は禁じ手です。核兵器や高い破壊能力を有する数々の兵器でオーバーキルとなってしまうからです。

楽観的な人達は「AI化や自動化が人々を労働から解放する」と言いますが、それはかなり先の話です。それまでの間、社会の混乱を最小限にして人々を飢えから救うには、どうしても財政拡大によって社会を支える必要が有ります。

MMTが注目されるのは、「失業者の群れで溢れ返る近未来」が予測されるからで、既にコロナショックでそれは「確定した未来」となりつつあります。

コロナ後の暫くの間は、世界が「日本化」して、財政ファイナンスによって国民を飢えから救うしか手立ては有りません。但し、インフレやバブルが障害になるので、為替市場の変動を抑え、資産市場のバブルを抑え込む事が重要です。そして、格差の是正も必要になる・・。


・・・・何となく「リセット」の内容が見えて来ました。


1) 資産市場の徹底的破壊・・・・格差の是正(金持ちや金満国家がお金を失う)
2) 固定相場的な新たな通貨体制・・・新しい基軸通貨と各国通貨の緩やかなペッグ体制
3) 紙幣の廃止・・・マイナス金利が掛けられる電子マネーの導入(税金として機能)
4) 年金や生活保護などをベーシックインカムに統合


とっても「温い社会」が出来上がりそうですが、「リセット=フラット化」と捉えるならば、行き過ぎた資本主義が生み出した「格差」を「フラット化」して、新しい成長を生み出すと考える事も可能です。

人間のDNAの中に「人より豊になりたい」という根源的な欲求が有るならば、「リセット=フラット化」が次の成長の原動力になるのでは無いか。そして、それは「等しい貧しさ」からスタートする・・・・・。戦後がそうであった様に・・・・。



本日は貧乏人のルサンチマンを垂れ流してしまいした・・・。「弾ぜろバブル、弾ぜろ金持ち!!」