人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

<読者参加企画> 経済学部の大学生に出してみたい冬休みの宿題

2011-12-26 08:27:00 | 時事/金融危機
 

■ 経済学部の大学生の諸君に実践的な冬休みの宿題を出すとすれば ■

クリスマス、正月と大学生諸君もプライベートで急がし時期でしょう。
ところで、今の大学生は冬休みの宿題などは在るのでしょうか。

私が学生の頃は長期休暇に際して、
かならず「~をテーマにしてレポートを書け」という宿題が出されました。
私は工学部だったので、「治水をテーマにシステムを論ぜよ」などというテーマでした。

不真面目な学生だった私は、本や資料など読まずに、
わざと本質を外した、システムに否定的なレポートを書いたりした記憶があります。
昔から、へそ曲がりで、勉強は大嫌いでした。

ところで、私が経済学部の教授だったら、
この冬休みは学生達にこんなレポートの課題を出してみたいと思います。

「世界経済の今後に与えるCDSの影響を論ぜよ」

野村證券の騒ぎの発端と、
アメリカとヨーロッパの駆け引きあたりを主軸に構成すれば、
現在の世界情勢を分析する良いレポートが書けそうです。


皆様の考察をドシドシ募集します。
コメント欄に投稿いただければ、
随時アップして行きます。


・・・んん、何かこの企画、外しそうな気もしますが・・・。
いつも、一方的に風評を撒き散らすだけなので、
たまには、皆さんの意見もお聞きしたいと思います。


DNAはデジタルプロセス・・・リードソロモン符号によるエラー補正

2011-12-25 09:53:00 | 福島原発事故
 




■ DNAの一本鎖切断は簡単に修復できる ■

放射線による被爆の影響は、細胞の遺伝情報DNAの破壊によるものです。

放射線はそれ程危険で無いという研究者達が根拠とするのは、
DNAの修復が従来考えられていたよりも
高度で精密なシステムで働いている事が近年判明した事です。

DNAが2重螺旋構造をしている事は良く知られています。
これは、DNAのバックアップ機能と考えられています。
活性酸素や放射線によって、二重螺旋のどちらか一方が切断されても
正常なもう片方から、修復する事が可能です。

これはDNAをコードする4種類のタンパク質、
アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)が
かならず1対を成している事に起因します。

G-C
T-A

上手の様に、結合する相手が決まっているので、
どこかのタンパク質が欠損しても
残された一方のアミノ酸に対を為すアミノ酸を修復するだけで済みます。

この様にDNAのどちらか片方の鎖の切断は、
ほぼ完璧に修復されます。

これはアミノ酸一個だけの欠損だけでは無く、
連続する何十個単位の欠損の修復にも有効です。
修復後にチェックする機能も備えています。

■ 二本鎖の修復はちょと複雑だ ■

DNAの2本鎖の両方が欠損した場合の修復は一筋縄では行きません。
DNAは2本鎖切断も巧みに修復している事が近年判明してきています。

1)相同組換え(homologous recombination: HR)

  DNAのアミノ酸配列は繰り返しが多い
  欠損したアミノ酸群の相当するアミノ酸群をコピーして修復
 
  時々、異なるアミノ酸群をコピーするというエラーも発生する

2)相同末端再結合 (Non-Homologous End-Joining: NHEJ)

  切断されたDNAの末端同士を結合するという強引な修復
  DNA情報の70%はジャンク情報だと言われ、
  相同組換えよりも、実際的な問題の発生は少ないとされる。

  (最新研究では70%が必要な情報だとする説もある)

3)SOS修復

  大腸菌(下等だが、環境対応に優れた生物などで確認される修復)
  DNAが大量に損傷すると、応急処置的に大量のタンパク質が作られる
  DNAの損傷箇所に結合する塩基対は通常の塩基対で無い場合もある
  必然的に修復エラーが含まれるが、遺伝子変異による環境適合を促す

  これは、DNAの破壊による「死」よりも、
  「テキトー」な修復による「変異」を選択する「生存戦略」ですね。

■ 修正エラーまで修正するDNA ■

一本鎖切断や二本鎖切断の修復は、エラーが無い訳ではありません。
そこでDNAは修復された後、さらに修復エラーを検出して修復を行います。

ちょっと複雑なので簡単に書くと
DNAの修復を担うDNAポリメラーゼはエラー箇所で停止してしまいます。
すると、損傷の状態によって、いくつかの違う方法の修復が始まります

1) エラー箇所を単純に取り外す
2) 二本鎖修復と同様に似た配列のDNA群を結合する
3) 強引に適当な修復をして乗り越える
   (TLS: Translesion Synthesis, 損傷乗り越え複製)

エラーを単純に切り離しても、DNA情報の97%はジャンクですから、
その影響は限定的と言えます。
むしろその様な修復が行われという判断は、
DNAのその箇所がジャンクであるという判断の元に行われるのでしょう。

TLSは誤謬を含むDNAを鋳型に修正を行うので、
エラーが発生する危険性が高くなります。


■ エラーデータから正常データを再現するデジタルデータ ■


最近のDNAの研究の発展により、
DNAがデジタルエラー修正を行っているのではないかという研究者も居ます。

デジタル通信などでは、エラーを検出する信号がデータに付加されています。
一般的なデジタル通信では、通信エラーを皆無にする為に
通信エラーを検出すると、データの送り元に
データを再照合して、正しいデータを受け取ることで、
データのエラーを防止します。

これはデータの正確な鋳型を用いるので、
DNAの一本鎖切断に似た修復の方法と言えます。


一方、デジタル画像に転送や、CDの再生など
データを照合していては、再生が間に合わないデータの修復には
「リードソロモン符号」というデータ修正方法が用いられます。

詳しい話は難しいので下を参照して下さい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%BD%E3%83%AD%E3%83%A2%E3%83%B3%E7%AC%A6%E5%8F%B7

これは元データにある法則に則った付加情報を加える事で、
データに欠損が生じても、前後のデータから
欠損データを修復する機能を有しています。

CD上の1mmのホコリは、LPレコード上の10円玉に匹敵します。
アナログデーターであるLPでは、10円玉のデータの欠損は、
音楽信号の欠落として再生されます。
10円玉大のキズは基本的に針はトレースできませんが、
仮にトレースしたとして、ボバゴゴオオオンーーーとう
盛大なノイズが発生するでしょう。

一方、CDではデータは適当に分散配置され
(時系列的にシャッフルされ)
さらに適当な変調が掛けられた上で、
リードソロモン符号によるエラー修正が為されています。

結果として1枚のディスクには様々なキズやホコリが付着していますが、
CDで音楽信号の補完を必要とする様なエラーは殆ど発生しません。
1枚のCDを掛けて1回あるか無いかです。

DNAを4種類のアミノ酸でコードされたデジタルデータだとすると、
二本鎖切断によってDNAの欠落が多数発生しても、
原理的には、元のデータを修復する方法が皆無という訳ではありません。

■ DNAは速度優先の修復を行っているのではないか ■

DNAの修復の必要なのは「正確性」と「迅速性」です。
複数のDNAの切断が発生した時、
本来の組み合わせでない箇所でのDNAの結合が起こる可能性があります。

それは重大なエラーですから、DNAはその様な重大エラーを防ぐ為に、
先ずは不正確でも良いので、適当でも鎖の修復を優先するでしょう。

ですから、ジャンクデータの箇所では、
データを数十塩基すっ飛ばして鎖を修復したり、
適当な塩基でとりあえず間に合わせたりします。

しかし、DNAがリードソロモン符号の様な
エラーの自己修復データを備えているならば、
かなりの確立で、修復後修復によってデータは完全な形に修復されるでしょう。

■ 大腸菌は「変異」が大切、高等生物は「変異しない事」が大事 ■

DNA修復の研究は大腸菌など単純なDNAを持つ生物からスタートしています。
それらの単純な生物では、DNAの修復機能も単純です。
当然エラーも多くなりますが、これらのエラーは「変異」として表れます。
単純な生物においては「環境に変化」への対応は、
固体単体の防衛能力で行われると同時に、
「変異」による環境適応によっても行われます。
抗生物質の耐性菌が生まれやすいのも、「変異」が起こるからです。
これら単純な生物においてはDNAが環境によって変化する事が
生き残るためには大切な事なのです。

一方、高等生物では、固体全体が環境対応能力を有しています。
代謝や免疫を調整しながら環境変化に対応します。
ですから個々の細胞や遺伝子が、環境変化で簡単に「変異」してしまっては
固体の秩序立った働きが維持出来ません。

ですから、高等生物のDNAは、修復機構を複雑に高度化させました。
DNAがデジタルデータである以上、
その修復も当然デジタルプロセスだと考えるのは自然な事です。

そして、デジタルプロセスはアナログプレセスよりも
エラーに対して圧倒的な正確性を持ています。

1個の細胞で1日、100万回のDNA修復が発生しながらも、
私達が生き続けていらえれるのは、
私達のDNA修復能力の高さを証明しているとも言えます。

一部の学者はDNA修復の不確性を指摘します。
「DNA修復は完全には行われない」と。
しかし、私はそれはDNA修復の一部しか見ていないのだと思います。

ジャンクデータを適当に修復しても問題は発生しませんが、
それらの学者は、その事をしてDNA修復はエラーだらけだと指摘するのでしょう。
これは、情報工学的知識の欠如に他なりません。

DNAがデジタルデータである以上、
重要なデータは必ず制度の高い修復な為されるはずです。
リードソロモン符号は一つの例ですが、
デジタルデータ修復には冗長性なども含め、
様々なエラー訂正の方法が存在します。

今後の研究は、DNAの高度のデジタル修復の性能を明らかにしてゆくでしょう。

■ 生き物はデジタルデータでコードされたナノマシーンである ■



最近の分子生物学の進歩は、
タンパク質と生命の全く異なる姿を描き出しています。

上の図はタンパク質の構造を表しています。
生体に必要なタンパク質や酵素は、
DNAに記録された長大なデータをRNAが読み取って、
RNAを鋳型に、一本の長いアミノ酸の鎖が作られる所からスタートします。

アミノ酸の鎖は、アミノ酸の配列の仕方によって
複雑に折れ曲がり、立体構造を取ります。
そして、その構造の「くぼみ」や「出っ張り」に生じる特定の形と電位によって、
特定の作用を持つようになります。

例えば、ヘモグロビンはその「くぼみ」で酸素を捕まえたり
あるいは、酸素能動の低い所では、結合していた酸素を「切り離し」たりします。

この様に、タンパク質や酵素は特定の条件化で、
特定に元素や分子、あるいはその結合に
特定の機械的な働きをしる「ナノマシーン」なのです。

このナノマシーンの構造が大きく異なればその機能を失われますが、
多少の変異は、機能に支障をきたさない可能性があります。
DNAの配列が一つ乱れたからと言って、
それが致命的であるはずはありません。

■ 最新の分子生物学の成果を無視するLNT仮説 ■

生物を「生き物」として捉えると、掴みどころが無く
グチャグチャ、ビチャビチャした存在に見えます。

ところが、ミクロの世界では生物はデジタルデータにコードされた
アミノ酸を材料とする、タンパク質というナノマシーンの集合体です。

そこには、生命の神秘などは存在せず、
ゲノムの配列と、合成されるタンパク質の機械的働きが存在するだけです。

生命をこの様な器械の総体と捉えた時、
それらが備える放射線や活性酸素への防御機構を軽視する事は
非常に非科学的な行為だと私は考えます。

「放射線はとっても危険」とは、「非科学的」と同義では無いかと思うこの頃です。



フェリックス・ガタリは今読むと新鮮かもしれません。
「人間は器械だ!!」・・・ちょっとカッコイイかも・・。
「人造人間キャシャーン」みたいな乗りになってきたぞ・・・・。

ついでに「女は子供を生む器械」・・・ウワァァ・・・
これはヤバイ。柳澤大臣の様に袋叩きだァーーー!!

野村HD

2011-12-24 10:34:00 | 時事/金融危機
ただ一言、野村HD。
後は個人の判断でお願いします。

<追記>

今年の夏頃から株価が低迷していましたので、
やはりね・・・って感じではあるのですが、
野村が潰れると困るのは、ヨーロッパです。
今回も野村の自己資本を厚くしろ(資本注入しろ)という
ヨーロッパからの要求が事の発端です。

1) リーマンのヨーロッパ部門を統合
2) 経費の割りに稼ぎが少ないヨーロッパ部門
3) ユーロ危機でヨーロッパ部門がさらなる重荷になる
4) 夏ごろから野村が資金繰りで苦しんでいるというウワサが海外で広がる
5) 夏ごろから株価が低迷して、業界2位の大和証券の株価を割り込む

6) オリンパス事件で査察に入ったイギリスの金融庁が経営実態に危機感?
7) リーマン時代にギリシャ債券のCDSなどを大量に発行

8) ギリシャのデフォルトでCDSが支払われなければ、
   ヨーロッパの銀行の損失が拡大

9) ヨーロッパ当局は何が何でも野村の破綻を避けたい

10) 日本に資本注入させたいが、証券会社では無理
11) 野村は不動産やその他部門を急速に切り離しして日銀の支援を受ける

12) 野村に資本注入された数兆円は、CDSの支払いでヨーロッパが美味しく頂く
13) 日本人には野村救済で借金だけ残る・・・。

まあ、こんなシナリオを描いてみました。
結局リーマンが高い買い物だったということですね。

・・・と言う事は、年明けにはギリシャ辺りがデフォルト?

次は三菱UFJが筆頭株主ののモルガンスタンレーが何かやらかすのでは無いか?

何れにしても26日の月曜日には各新聞が火消しに躍起になりそうですね。
東京市場が暴落で始まらない事を祈ります。


<追記2>

先日も書きましたが、バーセルⅢの導入は、
経営が不安定化した金融機関の体力を奪いこそすれ、
強化する事にはなりません。

野村證券も自己資本増強に必死の様です。

<引用開始>

野村、不動産と総研の2社売却打診か 英紙報道
2011.11.24 09:51
 英紙フィナンシャル・タイムズは23日、野村証券グループが複数の投資ファンドに対しグループ企業の野村不動産と野村総合研究所の売却を打診していると報じた。

 証券業や投資銀行業務と関連が薄い資産を売却し、資本基盤を強化することが狙いとみられる。野村証券を中核とする野村ホールディングスは今年7~9月期で461億円の連結最終損失を計上するなど、業績が大幅に悪化している。

 同紙によると、野村は売却について米有力ファンドのKKRやTPGなどと予備的交渉を行っているが、正式提案に至っていない。

 野村不動産は大手不動産会社の一角で、親会社の野村不動産ホールディングスの株式は9月末現在、野村ホールディングス子会社の野村土地建物が50・85%を保有。野村総合研究所は野村ホールディングスなどが大株主に名を連ねる。(共同

<引用終わり>

又、社債を発行して自己資本を増強していますが、
劣後債の「免責事項」の記載が生々しく、
今回の経営破綻のウワサに繋がったとも言われています。

<引用開始>

実質的破綻状態なった場合の特約


本社債は、バーゼル銀行監督委員会によるバーゼルIII基準(金融機関に対する新たな自己資本等に関する規制)に準拠して金融庁その他の監督当局が定める当社に適用のある自己資本規制比率算入基準に照らして、当社のTier2資本として算入されることを企図しており、このため、今後段階的に実施されるバーゼルIII基準に準拠して、当社が実質的破綻状態となった場合の債務免除の特約が付されている。具体的には、以下に示す実質的破綻事由が生じた場合、原則として、当社は、本社債の元金及び実質的破綻事由が生じた日の翌日(同日を含む)以降の利息の支払義務を全て免除され、以後、本社債の元利金の支払いは行われない。

(1) 本社債及び当社のTier2資本として扱われる当社の他の債務(本特約と同等の特約が付されたものに限る)にかかる債務免除がなければ、当社が存続不可能になると金融庁その他の監督当局が決定した場合


(2) 公的機関またはこれに類似する組織による資本注入またはそれに準ずる行為がなければ当社が存続不可能になると金融庁その他の監督当局が決定した場合

<引用終わり>

今回の噂の火の元は副島氏の記事ですが、
それの元になったのは、野村の資本増強に関わる次の記事です。

<引用開始>
野村も事前の再建・処理計画=国際金融の安定へ準備要請―金融庁
2011年12月22日(木)04:03
 金融庁は21日、金融危機の連鎖を防ぐために国際的な巨大金融機関(G―SIFIs)が策定を義務付けられている「再建・破綻処理計画」(RRPs)について、証券最大手の野村ホールディングスにも求める方向で調整に入った。野村はG―SIFIsに選ばれていないが、経営破綻した米リーマン・ブラザーズのアジア・欧州事業を買収するなど世界規模で事業展開しており、計画が必要と判断した。

 国内金融機関では、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループの3メガバンクがG―SIFIsとして認定された。計画策定が義務付けられ、資本上乗せ規制の適用対象となっている。一方、野村は資本規制の対象外だが「欧州当局の要望もあり、計画が必要になる」(同社幹部)として、既に内部で検討を進めている。 

[時事通信社]

<引用終わり>




<再録シリーズ>SFとアニメのその先の世界へ・・・「魔法少女まどか☆マギカ」はエヴァを越える

2011-12-24 03:52:00 | アニメ

かねてから何度も書いていますが、
文化庁のメディア芸術祭はアニメや漫画の商業作品を
正等に評価するという意味において、
世界に類を見ない素晴らしい賞です。

これを民間では無く、
「文化庁」という政府機関が運営している事に
驚きを禁じ得ないと共に、
毎年その受賞作品の一覧を見る度に
私の税金も無駄ではなかったとの思いをかみ締めます。

本年度の受賞作品が発表されています。
http://plaza.bunka.go.jp/festival/2011/pdf/111215_award_detail.pdf

アニメ部門の最優秀賞はやはり「魔法少女まどか☆マギカ」が受賞しました。
当然です。この選考結果に異論がある人は
私が一晩掛けて説得してみせます!!

さてさて、寸票を見てみましょう。

<引用開始>

【作品概要】
平凡な中学生の鹿目まどかは、ある日不思議な夢を見る。翌朝登
校すると、夢で見た少女・ほむらが転校してくる。戸惑うまどか
にほむらは意味深な言葉をかける。その放課後、まどかは「魔女
の結界」に迷い込んでしまい、絶体絶命のピンチを魔法少女マミ
に助けられるのだった。やがて知る「魔法少女」という存在の真
実。時間と人間模様が複雑に交錯する舞台で、真実に触れたまど
かが取る選択とは?
【贈賞理由】
昨年に続くテレビシリーズの大賞だ。今回は漫画・小説の原作も
のではなくアニメ用オリジナル作品という点が高く評価された。
アニメでは定番の「魔法少女もの」の設定を逆用し、観客が信じ
るジャンルの根幹さえゆさぶる批評的なワナを巧妙に仕掛けた意
欲作だ。可愛く見える生物キュゥべえは、願いの実現と引き換え
に魔法少女となって魔女と戦う「契約」をもちかける。「願望」
に潜む恐ろしさとそれを超える「奇跡」の感動……いずれも人の
心が生むものであり、表裏一体となっている。1週間経たないと続
きがわからないテレビ放送の「メディア特性」を徹底活用し、心
のせめぎあいのエスカレーションを美しい映像とともに極めて
いった。本作品には、何かを変えてみたいという変革のエネル
ギーが満ちあふれている。時代を変える触媒となる期待をこめ、
大賞を贈る。

<引用終わり>

やはり選考者もこの作品の「前に進もうとするベクトル」を評価してます。

・・・ところで、漫画部門の優秀賞に清水玲子の「秘密」が選ばれています。
死者の脳をスキャニングして過去の「視覚」を再現し、
犯罪捜査に役立てるという設定の作品です。
主観が存在しない「純粋な視覚」は、見る者によって様々な解釈が可能です。
「他人の隠された生活を覗き見る」という良心の呵責と戦いながら
捜査員は「視覚」に秘められた謎に迫ってゆきます。
ちょっとボーイズラブ的要素も含まれるこの作品に
賞を与えた選考者の勇気に拍手を送りたいと思います。


ちなみに今年度のアニメ部門の受賞作品(商業作品)は、

大賞魔 「法少女まどか☆マギカ」新房 昭之(監督)
優秀賞 「鬼神伝」 川

刮目せよ!!・・・輪るピングドラム

2011-12-23 11:01:00 | アニメ
 







■ 「輪るピングドラム」は無意味な物語か ■

「輪るピングドラム」が終了しました。
多分この作品は賛否両論の大論争を巻き起こすでしょう。

否定派は、「無意味な物語」とか「意味不明」などと攻撃するでしょう。
肯定派は「運命」や「呪い」や「リンゴ」の意味を哲学的に読み解くでしょう。

私はと言えば、肯定派です。
これ程「野心的」な作品を、「分かり難い」と否定する事は罪です。

「輪るピングドラム」の最終話の
「怒涛のイメージの奔流」に溺れそうになりながらも、
この作品の意味について考えてみたいと思います。

物語のストーリーは、前回を参照して下さい。
裏切り続ける物語・・『輪るピングドラム』 
http://green.ap.teacup.com/pekepon/612.html



■ 人類の命を握る、高倉三兄弟の三角関係 ■

晶馬 「やっと分かったよ、あの時僕達が出会った理由が」
   「この時の為だったんだ」

陽毬 「ねえ、生きるって事は罰なんだね」
   「私高倉家で暮らしている間、ずっと小さな罰ばかり受けていたよ」

晶馬 「そうか、僕らは始まりから全て罰だったんだ」

24話を掛けて積み上げてきたのは、「原罪」だったのでしょうか?
高倉家という呪われた家庭に暮らす事になる
血の繋がりを持たない3兄弟の冠葉、晶馬、陽毬は「原罪」を負った存在の様です。
では、何の罪を負っているのでしょうか?

陽毬 「私ね、高倉家に居る間、ずっと小さな罰ばかり受けていたよ。」
   「晶ちゃんは口うるさいお母さんみたい」
   「脱いだ靴は揃えろとか、汚い言葉は使うなとか、夕飯は家族そろってとか。」
   「冠ちゃんは食事の後すぐ寝転がるよね。」
   「牛になるよって言っても聞かないし。」
   「後、鼻をかんだティッシュを放りっぱなしにするのは止めて。」
   「そんなんだから女にだらしないバッチイ冠葉菌って言われちゃうんだよ」

晶馬 「あの日、突然父さんと母さんが、あいつの事を兄って呼べって言ってさ」
   「僕は兄きなんて要らなかったんだ。」
   「だいたいなんで冠葉が兄きなんだよ。そんないきなり兄弟なんてなれるかよ。」

陽毬 「でも、それでも私達は一緒に居たよ」
   「どんな小さくてツマラナイ罰もね、大切な思い出。」
   「だって私が生きているって感じられたのは、冠ちゃんと晶ちゃんが居たから」
   「高倉陽毬で居られたから。」
   「私、忘れたく無いよ。」
   「失いたく無いよ」

・・・ちっちぇー。これが高倉三兄弟に与えらる罰なのでしょうか???
あいかわらず針小棒大の前衛演劇的表現で本質がなかなか見えません。

「原罪」を背負う高倉三兄弟が失う物は、「何でもない普通の日常」。
その「普通の日常」こそが、一番大切な物だったと言いたいのでしょう。

では高倉三兄弟の背負う「原罪」とは何なのでしょう。
その答えは「呪い」を象徴する渡瀬眞悧(さねとし)が口にしています。

眞悧 「真に純粋な生命の世界は利己的なルールが支配している。」
   「そこに人の善悪は関与出来ない」
   「つまり、もう何者もこの運命を止められないのさ」

眞悧は「人を呪う」存在です。
純粋性を追い求め、「利己的な人間」に罰を与えようとしています。
高倉三兄弟は人間が生命である事によって生じる「利己的という罪」を象徴する存在です。

陽毬の命を救う為に、冠葉はテロによって人々の生命を奪おうとします。
利己的な判断が優先されるならば、大切な妹の命は、多くの人の命よりも大切なのです。
冠葉は、たび重なる「陽毬の喪失」によって、
利己的である自分を肯定せざるを得ない事に気付きます。

一方、晶馬は妹一人に命よりも、多くの人々の命を尊重します。
かつて陽毬を存在の淵から救った晶馬にとっても
陽毬は、かけがえの無い存在です。
それでも晶馬は理性的決断をしています。
これは晶馬を運命の人と慕う陽毬にとっては悲しい事実です。

そんな兄弟の間に挟まれて、陽毬の選択に人々の命が委ねられます。
冠葉の本当の敵は、世間では無く、
陽毬にとってかけがえの無い存在である晶馬だからです。
冠葉の人類への復讐は、個人的嫉妬の拡大投影でしか無いのです。

高倉三兄弟の選択は「人類の原罪を象徴する三兄弟」の物語でありながら、
実は、とても個人的な選択でしか無い事が、冒頭の会話で判明します。
要は人類は高倉三兄弟の三角関係に振り回されているのです。

この構造をを否定的に捉えるならば、
「大風呂敷を広げた割に、その実はトホホな兄弟喧嘩じゃん」となります。

■ 「呪い」に拮抗する「救い」 ■

高倉三兄弟の物語は、「3すくみ」の構造をしています。
それぞれが相手を思いやる事で、均衡していました。
ところが冠葉が利己を追求し始めたので、この均衡は崩れてしまいます。

「輪ピングドラム」にはもう一つの「対立軸」が用意されています。
「呪い」としての「眞悧」と、「救い」としての「桃果」です。
この二人は二項対立の関係を持ちます。
これは「神と悪魔」の様に、西洋的な対立構造です。
「眞悧」と「桃果」はその有する能力も高いので、
「神格」としての存在で、人間性は希薄です。

「呪い」「救い」の対立は拮抗していて、
結果的に人類に影響を与える事が出来ません。

ですから「高倉三兄弟」という人類を象徴に
影響を及ぼす事で、人類に影響を及ぼそうとします。

「呪い」は冠葉を味方とする事で、
「救い」は「桃果」の妹である荻野目苹果を通じて晶馬に働き掛けます。

■ 保留としての「運命の乗り換え」 ■

「救い」の能力は「運命の乗り換え」です。
これは、絶対的救済では無く、破壊の一時的保留です。

ですから「桃果」が自己犠牲の結果生み出した新しい世界で、
「呪い」と「救い」の戦いは再び始まるのです。

今回は「運命の乗り換え」の起動は、荻野目苹果によって行われます。
そして、高倉三兄弟はそれぞれの運命を選択します。

冠葉は自己の喪失と引き換えに、陽毬を救済します。
晶馬は自己の喪失と引き換えに、荻野目苹果を救済します。

冠葉と晶馬は、自らの選択によって、この世から存在を失います。
救済された陽毬と苹果には二人の記憶がありません。


■ 神の復活を願う「ゆり」と「多蕗」■

一方、「桃果」の復活の為にピングドラムを求めた
「ゆり」と「多蕗」にとって「桃果」は「神」に相当する存在です。

かつて「愛されなかった子供」であった二人は、
「桃果」によって救済されます。
救済の記憶を持つ彼らは「桃果」の復活を願います。

これは「キリスト」の復活を願う「キリスト教徒」の姿です。

結局二人は「お互いの愛」を育む事で、
「桃果」の意思を実現する道を選びます。

かつて「愛されなかった」二人は、
お互いが愛し合う事で救済を得るのです。

■ リンゴは「ごほうび」 ■

劇中、象徴的に描かれ続けるリンゴの謎も解けます。

存在を失いながらも物語の最終シーンで、
子供の姿として現れた冠葉と晶馬はこう会話します。

晶馬 「つまりリンゴは愛にる死を自ら選択した者にとってのご褒美でもあるのだよ」
冠葉 「でも死んだら全部おしまいじゃん」
晶馬 「おしまいじゃないよ、むしろそこから始まるって賢治は言いたいんだ」

これは宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に登場するリンゴが何かという話ですね。
救済された者達、「陽毬」や「荻野目苹果」や「ユキ」や「多蕗」の存在が
「リンゴ」であり、救済者へのご褒美という訳です。

■ 圧倒的な様式美で、きっちりとケリを付けた ■

問題作「輪るピングドラム」が名作に成りうるかどうかは、
最終話に掛っていましたが、
幾原邦彦は「圧倒的な式美の奔流」でお茶を濁す事無く、
ピングドラムをめぐる「呪い」と「救い」の物語に、
きっちりとケリを付けて気ました。

グダグダで終わるのではないかという予想は、
良い意味で裏切られました。

一方、「呪い」と「救い」の戦いは、
「運命の乗り換え」の後も続いており、
世界は何一つ変わっていない事も事実です。

・・・何一つ変わらない訳ではありません、
「ゆり」と「多蕗」の間には愛情が芽生え
「陽毬」と「荻野目苹果」の間には、友情が芽生えました。

「マドカ☆まぎか」に見られるような、圧倒的な変質こそありませんが、
「輪るピングドラム」も、確実に前進を選択して物語を終えています。

図らずも今年最大の問題作であるこの二つの作品は、
同じ構造を持った作品と言えます。

2011年は、この2作品が登場した年として、
アニメ史上に語り継がれる年となるのかも知れません。