人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

今季アニメは小粒だけど面白い・・・エログロとアニメの関係

2014-10-20 05:35:00 | アニメ
 

今季アニメが出そろいましたので、おススメなど・・。

『Gのレコンギスタ』



先日の記事にほぼ書いています。

富野監督の『Gのレコンギスタ』は「うんこアニメ」だ・・・監督の真意を妄想する

4話目にて、ゴタゴタした感じが整理され、話が動き始めました。特に演出でオーー!と唸ってしまうシーンが多々有りました。

1) 会話がかみ合わない様に見えて、二つの事を同時に説明している超絶脚本

2) 「進撃の巨人」など近年のアニマに挑戦する様な固定カメラ的視点から、3次元の演
出を繰り出す。(出撃シーンでラライア達をコクピットの高さからの見下げで描き、その間の高さをアイーダが移動する・・・。こんな作画をやられると、近年のCGによる「視点グルグル」演出が如何に野蛮であるか痛感させられます。

3) マンディーとノレドの描写に時間を割き、他を思い切り割愛する思い切りの良さ。戦闘物は、戦闘員以外を描く事で戦闘の意味が浮き彫りになるイデオン以来の伝統。(カツ・レツ・キッカやハロがかつてはこの役割を担っていましたね)

4) マンディ「あなたの目キレイね」
   クリム・ニック「よくそう言われる」
   ・・・・ウーン、この会話の挿入は神。シビレます

5) 敵の艦長との交流など明らかにユニコーン・ガンダムと同じ様な設定ですね。これUCに挑戦状というかアテツケ。

戦闘シーンにばかり目が行きがちですが、戦闘シーン以外が素晴らしいから、作品が生き生きしているのが冨野アニメの特徴ではないでしょうか。

しかし、アイキャッチのダンスの演出やエンディングのダンスシーン、クセになりますね。冨野監督の娘さんが振付師をされているとかで、キャラクターの性格を動きで良く表現していてなす。物語の後半はシリアスで重い展開になりそうですが、ダンスが適度に明るさを保ってくれるのではないかと期待しています。


『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』



サンライズのネタアニメ。『革命機ヴァルヴレイヴ』などのキワモノ路線かと。

マナという超自然の力を使う事で平和で豊で平等な社会を実現している世界。アンジュはミスルギ皇国の皇女として人望も厚い。彼女は何不自由なく育ち、正義を信じる心も人一倍です。一方、マナという能力を持たずに生まれて来た子供「ノーマ」は、帝国に害をもたらすものとして例え赤ん坊であっても社会から排除されます。アンジュはそれすらも正義として一点の疑いも持ちません。

そんな彼女が16才になった時、式典に臨んだ彼女にマナが無い事が発覚します。王と妃が事実を隠ぺいしていたのです。皇女から一転ノーマとなった彼女は、辺境の収容所に収監されます。彼女を待ち受けていたのは屈辱の日々でした。

ノーマは女性にしか発現しません。収容所は小さな女児から大人まで全て女性の世界です。ノマー達は、小さな頃より訓練され異空間から出現するドラゴンと闘う事を強いられます。ノーマの生きる価値はそれ以外に無いのです。そして、ノーマ達の戦いが、マナの世界の平穏を守っているのです。

皇族としての特権はおろか、普通の人間としての尊厳すらもノーマであるアンジュには許されません。それに適応出来ない彼女は「痛姫様」とノーマの仲間たちからも蔑まれます。女性だけの社会で先輩達のイビリは陰湿です。さらには性的な苦痛をも伴い・・・。

とまあ粗筋を書くと意外に面白い。ポット出の新人がいきなりロボットを乗りこなして無双してしまう最近のアニメではあまり描かれない上官の新兵イビリなど、80年代の雰囲気を感じます。話の大筋は、友人の裏切りで中東の外人部隊に売られた日本人パイロットを描く『エリア88』に良く似ています。墓守の婆さんはマッコイみたいですし・・。(よたろうさんの指摘は適格です)

エロ・グロ描写も、マンガがサブカルチャーとしてのドロドロとした活力に満ちていた時代には当たり前の描写でした。『ワイルドセブン』なんて、結構エロかった。ただ当時のエロもグロも社会に対する反発だった事に意味が有りました。キレイごとの世の中に反発する手段の一つがエロでありグロだったのです。

ところが『クロスアンジュ』や最近の深夜アニメに多いエロやグロは、ただ単に若者の性欲のはけ口でしか有りません。エロアニメを見るのと同じ次元のエロやグロの表現が、単に作品を注目させる為だけに用いられているのです。

まあ、アニメなど所詮はオタクの妄想の道具でしかありませんから、エログロの何がいけないのかと聞かれたら・・・まあどうでも良い・・と答えるしかありませんが・・。

アニメにおけるエロ表現が確立したのは80年代だと思います。それまでは、『宇宙戦艦ヤマト』のスターシアの裸や、『キャプテンハーロック』にマゾーンの裸にエロティズムを感じていた健全な男子達の中から、魔女っ娘物の「変身バンク」に萌える人達が現れ始めます。

マンガの世界でも永井豪などは結構エロエロの描写をしていましたが、あれは反骨精神の現れでパンクと言えました。しかし、80年代ラブコメブームからマンガに氾濫するエロチックな表現は、明らかに若者の単純な要求に応える出版社のマーケット戦略でした。過激化するエロ表現を少年誌で展開するのは問題が有りますから、この頃からヤングジャンプなどの青年誌が発刊され、少年誌のエロ表現はおとなしくなりますが、それでも雑誌のテコ入れの為に、ちょっとエッチな作品は少年誌では定番と言えます。

マンガ雑誌に青年誌が生まれた様に、80年代半ばになると「アダルトアニメ」というジャンルが生まれ、18禁という規制の中でエロエロな作品が次々に生まれる様になります。このジャンルは結構面白くて、明らかにオタクがブヒブヒ言う為の作品がある一方で、子共向けになったTVアニメから押し出された人達が、規制の緩いアダルトアニメで自由な表現を繰り広げています。かつて日活ロマンポルノが新人映画監督達の実験場であった事に良く似ています。丁度、夢枕獏や菊地秀行らの小説が開いたジャンルをアニメが踏襲していったとも言えます。

1989年の宮崎事件がアニメ界に与えた影響は非常に大きかったと思います。実際に宮崎被告の部屋にあった多くのビデオはTVドラマや、普通のTVアニメ(ドカベンなど)がほとんどだった様ですが、マスコミはアニメの影響ことさら強調します。これが「有害コミック騒動」に発展し、アニメやマンガの表現に様々な規制が掛かる様になります。「パンチらはダメ」とか「乳首が見えたらアウト」なんて言う自主規制が生まれます。

この様な社会の圧力によってTVアニメから、エロやグロといった生々しい表現が抜けて行きます。アニメは子供向けの無害な作品と、一部のファンの為の「美少女のユートピア」的な作品だけになってしまいました。一般のアニメ視聴者は行き場を失い、アニメへの興味を失って行きます。この流れは『エヴァンゲリオン』の出現まで続いたのではないでしょうか。(私自身、高校時代には既にアニメを卒業していたので、80年代後半から90年代はアニメを一切見ていませんでした)

アニメにエロとグロが戻って来たのは、規制の緩い深夜アニメの普及が切っ掛けだと思います。DVDの売り上げをビジネスの目的とする事で、マスマーケットを狙わない様々な実験的作品が生まれる様になりました。これらの自由な表現に対しても東京都の石原元都知事が規制を掛けるなど、アニメの表現と行政の規制はイタチごっこを繰り広げますが、石原都知事が中央政界に転出した事で、最近の深夜アニメにはエログロ描写が増えた様に感じます。

エロとグロは若者にニーズが有りますから、キワドイ描写を入れれば作品が売れます。さらに、TV放映時には湯気や黒塗りで隠しておいて、DVDで全部見えるなんていう戦略を取ればDVDの売り上げが増えます。ここら辺は、一種のマーケット戦略ですから、私などがとやかく言う事では有りませんし、この様な表現を規制した所で、ネットの中にはもっと過激な表現が溢れていますから、アニメでオッパイが見えたぐらいで子供が犯罪に走るとは到底思えません。

一方、『クロスアンジュ』でのエロやグロ表現には何故か不快感を覚えます。表現の仕方としてはアニメがサブカルチャーだった時代の挑発的な感じに近いのですが、彼らはこの作品で社会に反抗している訳ではありません。エログロ表現は単に「話題性」の為に挿入されているに過ぎません。「うわ、こんな所まで描くかよ・・・」という悪趣味に視聴者が悪乗りする事を期待しているのです。

話の展開として面白く、メカのデザインも悪く無く、料理の仕方次第では今期の覇権になれたかも知れない作品ですが、「お前ら、エログロ好きだろう?」って感じで挿入されるシーンには嫌悪感を覚えます。

74歳の富野氏が『Gのレコンギスタ』を作らせるのは、最近のサンライズの作品作りへの姿勢も大きく影響しているのかも知れません。

『四月は君の嘘』



書店で気になっていたマガジン連載の音楽物。

かつて天才ピアニストと将来を嘱望された主人公は、母親の死を切っ掛けにピアノから遠ざかります。そんな彼の前に、自由にバイオリンを弾く少女が現れ、彼の止った時計が周り始める・・・多分、そんなストーリーではないでしょうか?(原作を読んでいないので)

この分野では『ピアノの森』という大傑作マンガがあるだけに「二番煎じ」的に見えてしまうのは仕方ありませんが、『クロスアンジュジュ』の解毒剤として今期一押しの作品です。マンガやアニマには過激な表現が溢れている一方で、こういう「良心」の様な作品の沢山有ります。

アニメとマンガの違いは絵が動き、音が聞こえる事。その音の部分がマンガではどうしても描ききれません。『のだめカンタービレ』や『ピアノの森』では、絵や言葉が雄弁に音を表現していますが、『ピアノの森』のカイの演奏などは、逆に本物の演奏でその感動を伝えるのが難しいと感じています。ホロビッツのピアノの良さを万人に音だけで説明するのは難しのと同様です。一方、『四月は君の嘘』のかおりちゃんのバイオリン演奏は、譜面を無視しているので分かり易い演奏です。それだけにアニメ化が生きる作品とも言えます。

今期の家族枠にお勧めです。


『甘城ブリリアントパーク』



集客が出来ずに閉園寸前のテーマパーク。実はそこは妖精達の住処だったのです。妖精達はパークのゲストからエネルギーを集めていました。パークの閉園は、妖精達の死活問題です。そこで1人男子高校生が、パーク立て直しの為に呼ばれて来ます。

日曜朝に放送されるアニメにピッタリな内様ですが、何故か京アニ、深夜アニメ。話は面白くて、テーマパークビジネスの内情に詳しい私などは抱腹絶倒なのですが、やはり何故に京アニ・・・。『境界の彼方』などよりは余程好きな作品ですが・・・。

『旦那が何を言っているか分からない』



オタクの夫を持つ年上のカミサンの夫婦の話。短編アニメですが、1話目から大笑いしてしまいました。「こういう事ってアルアル」って頷きながら見てしまいました。ネコ目の奥さんが可愛い。

『Fate/stay night -Unlimited Blade Works- 1st』



『Fate/Zero』の後日譚。ストーリー的にはZeroよりも面白いかな。素直に楽しめる良作。ハズレ無し。

『グリザイアの果実』



最近どうも様子がオカシイ倉田英之がシリーズ構成。ただ、この作品は悪くは無いかな。特にツインテールとの絡みが面白くて・・・プ!!
クールで有能な主人公ですが『魔法科高校の劣等生』のお兄ちゃんが転校して来たかと思いました・・・。


『異能バトルは日常系のなかで』



1話目はどーでもいい話でしたが、2話目の演出は上手い。一瞬、大沼心監督かと思いましたが、ガイナックスOBの大塚雅彦が総監督。『キルラキル』のトリガーとは思えない作品ですが、2話を見る限り「大化け」しそうな予感。今期、一番期待してしまたりして・・。


『寄生獣 セイの格率』



傑作マンガのアニメ化ですが、キャラクターデザインをアニメ向きに変えて来たのが英断でしょう。ストーリーは当然面白い。花澤さんと、沢城みゆきという私が唯一名前が分かる声優さんが出ているのも嬉しい。


『selector spread WIXOSS』2期



カードゲームのPRアニメながらバトルシーンがほとんど無い異色作品。
岡田麿里のダークサイド炸裂の作品。とにかく暗くてノリが悪い作品ですが、2期目でイオナがカードに成った事で緊張感がパナイ。期待してます。

『神撃のバハムート』



「何でイデオンのコスモが出ているの?」と思わずビックリ。作画はイデオンやダンバインで素晴らしい仕事をした湖川友謙氏の弟子の恩田尚之。

『タイガー&バニー』の 「さとうけいいち」の監督作品ですが、これもカードゲームのアニメ化の様ですね。内容は・・・古臭い活劇ですが、ただ作画だけは神の領域。週一アニメでこの作画で最期まで持つのか・・・。

2話目の酒場のシーンの表情は必見。3Dアニメに特化してしまったディズニーのアニメーターに見せてやりたい作品です。



この他は『ソードアート・オンライン』の2期目は・・・、何だか先が気になる『失われた未来を求めて』、だいぶ劣化した『サイコパス2』(何故かタツノコプロの制作に変わっています)などなど、どれを切るか迷ってしまう今期アニメ。

この他に、ベジ子さんから『蟲師』をお勧めされていますが、実は原作のファンでして、ちょっとアニメで見るのが怖くて躊躇しています。良作だとの話はネットで色々目にするので、いつかは見てみます。

最近注目される高濃度ビタミンC治療・・・低線量率被曝と同じ原理

2014-10-17 13:05:00 | 分類なし
 

■ 「抗がん剤」で癌になる ■

抗がん剤には様々な種類のものが存在しますが、基本的には副作用が大きく、仮に癌が小さくなったりしたとしても、その後の生活のクオリティーが大きく低下します。特に免疫力が低下する為に、仮に癌の進行を遅らせたとしても、肺炎で亡くなる様なケースが多くあるのです。

これは抗がん剤が概して「全ての細胞に対して毒」として作用する事に起因します。正常な細胞はDNAの修復能力が高いので抗がん剤によるダメージをある程度キャンセル出来ますが、癌細胞はDNAの修復能力が低下しているので、最終的にDNAがムチャクチャになって細胞死に至ります。

これは癌の放射線治療と同じ原理で、健常細胞が放射線によるDNAのダメージを修復するのに対して、癌細胞はそいが出来ず(劣っている)、細胞死(アポトーシス)します。

癌の種類によって抗がん剤の効き目に違いがあるのは、本来「毒」である抗がん剤を、癌細胞に選択的に吸収させる方が、他の細胞へのダメージが少ないからで、ある種の癌細胞が選択的に吸収する「毒」が選ばれる為です。

ただ、抗がん剤の影響は正常細胞のDNAを痛めつける事に変わり無いので、爪や毛髪細胞など分裂な活発な細胞に異常が生じます。さらには、健康な細胞のDNAのダメージは100%キャンセルされる訳では無いので、抗がん剤治療は新たな癌細胞を生み出し、将来的な癌の発生を促してういるとも言えます。これは乳癌などの放射線治療でも同じ事が言えます。

これらの「発癌性のある治療」が容認される理由は、この治療による延命のメリットが将来の癌発生のデメリットを上回るからです。今、癌で亡くなってしまっては、「将来」はやって来ない・・・そういう考え方です。

■ 抗がん剤耐性を有する癌細胞 ■

様々な副作用によって患者に負担を掛ける抗がん剤治療ですが、効果が有ったり、無かったりします。又、最初は良く効いた抗がん剤が次第に効果を失うケースもあります。

これは癌細胞が最初から抗がん剤に対する耐性を有していたり、あるいは抗がん剤治療の過程で耐性を獲得する事によって起こる現象です。

これは本来細胞が持っている能力なので、当然と言えば当然の結果です。

■ 高濃度のビタミンCが癌を小さくする ■

副作用の少ない癌の治療法として近年「高濃度ビタミンC治療」が注目されています。

時ははこの治療方法が発見されたのは1976年です。米国の化学者ライナス・ポーリング氏は、アメリカの科学アカデミー紀要「PNAS」に、「末期進行がんの患者にビタミンCを点滴とサプリメントで投与すると、生存期間が4~6倍延長した」と発表しています。

ところがこの研究は1978年にアメリカのメイヨー医科大学の、ビタミンCにがん患者の延命効果はないという論文を有名医学雑誌に掲載されたため、否定されてしまいました。

ところが、2005年にアメリカ国立健康研究所、国立ガン研究所、国立食品医薬品局の科学者達は共同で「高濃度のビタミンCはガン細胞を殺す」という論文をアメリカ科学アカデミー紀要に発表しました事で再度注目を集めます。その後に様々な研究発表が続きます。

■ 高濃度のビタミンCは過酸化水素H2O2を体内で発生させる ■

一般的には「抗酸化物質」として知られるビタミンCですが、体内で高濃度を保つ量を投与すいると過酸化水素H2O2を発生させます。

過酸化水素は強い酸化作用を持っていますが、生体温度でその作用は活発ではありません。ただ、金属イオンや光によって分解してヒドロキシルラジカルを生成します。ヒドロキシルラジカルは「フリーラジカル」と呼ばれ強い酸化作用があります。これがDNAの損傷を与えます。

健康な細胞内にはカタラーゼという酵素が存在し、活性酸素を速やかに酸素と水に分解します。一方癌細胞はカタラーゼがほとんど生成できないので、過酸化水素を分解する事が出来ません。

過酸化水素自体も強い酸化作用が有りますが、金属イオンが存在するとヒドロキシルラジカル(フリーラジカル)を生成するので、DNAが破壊されます。

この様な効果を得る為には一回に25g~100gのビタミンCを投与する必要が有り、これは当然口からの投与が難しいので、点滴によって血中に直接投与されます。週2~3回、この治療を繰り返す事で、癌細胞を選択的に攻撃します。

■ 高濃度ビタミンC治療は副作用がほとんど無い ■

高濃ビタミンC治療の良い点は、副作用がほとんど無い事です。
健康な細胞はカタラーゼによって過酸化水素の効果を低減できるので、副作用が無いのです。

さらに、癌細胞はビタミンCを選択的に取り込む特長を持っています。これは活発な増殖をする癌細胞が普通の細胞の6倍のブドウ糖を吸収する事に起因します。実はビタミンCとブドウ糖の構造が似ているので、癌細胞はビタミンCを選択的に取り込む性質を持っています。

この事も副作用の少なさに貢献します。カタラーゼで分解されるとは言え、過酸化水素は活性酸素ですから健康な細胞にも影響が無い訳ではありません。ですから過剰な濃度になれば、副作用や将来的な発癌のリスクが高まります。

癌細胞が選択的にビタミンCを取込事で、副作用のリスクが低減されています。

■ 癌細胞に選択的に取り込まれる抗がん剤と併用で効果が高まる ■

過酸化水素がフリーラジカルに分解される為には金属イオンが必要になります。癌細胞に選択的に取り込まれる金属イオンが有れば、ビタミンCの効果はさらに高まります。

元々、癌細胞が分泌する酵素の活性中心には金属イオンが存在しています。これも過酸化水素をフリーラジカルに分解する効果が有るはずです。しかし、もっと癌細胞に選択的に姻族イオンを取込ませる事が可能であれば、ビタミンCの抗癌効果は高まります。

最近の抗がん剤は、特定の癌に発言する酵素などに結合する「分子標的薬」という種類の物が存在します。抗がん剤は正常細胞にも悪影響を与えるので、癌細胞に標的を合わせて選択的に取り込ませる事が出来れば、副作用を軽減できるからです。

この様な癌に選択的に取り込まれる性質の有る抗癌剤に金属イオンが存在する(あるいは結合させる)ならば、ビタミンC由来の過酸化水素がフリーラジカルに分解され易くなります。

ここからは間違いもあるかも知れませんが、ビタミンCの治療と、従来の抗ガン剤の治療を併用すると効果がある原因は、抗がん剤に含まれる金属イオンに原因が有るのかも知れません。

将来的には癌細胞に「分子標的」する無害な物質に、金属イオンを運搬させる事で、副作用をほとんど発生させる事無く、ビタミンCの抗癌効果を高める事が可能になるかも知れません。


■ 高濃度ビタミンC投与による将来的な癌の発生の可能性 ■

ここまで読まれた方は、「ビタミンC、ハンパ無いじゃん!!」って期待されたかも知れません。

ただ、高濃度ビタミンCが体内で生成する過酸化水素は、健康な細胞の金属イオンとも反応してフリーラジカルを生成し、それは健康な細胞のDNAを破壊します。さらには、過酸化水素自体が活性酸素ですから、細胞に何等かの害を与えます。

ただ、活性酸素が増えた状態は、ジョギング時に活性酸素が増える事に似た状態であり、細胞はカタラーゼや他の活性酸素除去酵素の分泌を増やす事でこれに対応します。さらには、免疫細胞の働きを活性化させ、癌細胞が発生したとしても、それを速やかに排除します。

この効果は、「低線量率被曝の免疫向上効果」に良く似ていると思われます。低線量被曝も体内で活性酸素を増やす事で、免疫機能を活性化させます。

まだまだ、研究が始まったばかりの高容量ビタミンCによる癌治療ですが、私個人的には人間の活性酸素に対する対処能力を上手く使っているという点において、従来の抗がん剤治療に無い可能性を感じています。


この治療の効果が立証されたなら、抗がん剤の研究は、癌細胞を殺す事から、癌細胞に選択的に金属イオンを指標する研究に変わる可能性があります。もしかすると、将来的には副作用のほとんど無い、癌治療が確立するかもしれません。



最近は、経済の暗い話が多かったので、少し明るい妄想をしてみました。
でも・・・癌が克服されたら高齢化がさらに進んでしまう・・・。

何故、世界はFRBの利上げに怯えるのか・・・サブプライム危機を振り返る

2014-10-16 08:17:00 | 時事/金融危機


■ 市場は来年の利上げ予測でどうしてこんなに動揺するのか? ■

世界の市場の混乱はしばらく続きそうです。

アメリカの経済指標が好ましく無かったことを受け、ドル安が進行し、ダウ平均も一時400ドル以上値下がりをしました。そこから押し目買いが入ったのか、最終的には173ドル安に留まっています。


ソロスのファンドのプットポジション 8月15日の情報

ジョージ・ソロスのファンドなどが今回の株価下落の仕掛け人と思われますが、彼のファンドは6月時点でプットを6倍に増やしています。8月頃には、ソロスを始めとしたヘッジファンドの動きは報道されていましたから、市場の下落はある程度予測されていた事だと思います。

1) ヘッジファンドを中心にプットが積み上がっているという情報を流布する
2) FRBの利上げ予測をクローズアップした情報を流す
3) そろそろ株価の調整が入ると市場参加者が身構える
4) ヘッジファンドの売り仕掛けで、市場が一気に売りに転じる

今回の米株の下落は、だいたいこんなストーリーで進行していると思われます。
来年の利上げが現状の市場に影響を与えているというよりは、利上げ予測を利用して荒稼ぎしている連中が居ると言った方が正確ではな無いでしょうか。

そうは言うものの、FRBの利上げに市場はどうして神経質になるのでしょう?2007年のサブプライムローン危機のその答えを見る事が出来ます。

■ 金利上昇で破綻したサブプライムローン ■



アメリカのFF金利

1) 2000年のITバブル崩壊、2001年の同時多発テロ、2002年のエンロン事件で
   アメリカの景気が大幅に後退
2) FRBが金利を1%台まで下げる
3) 低金利を背景に住宅の需要が活性化する
4) 同時期、住宅担保証券(MBS)を元にした債務担保証券(CDO)が大量に組成される
5) 世界的な金融ブームによりMBSやCDOが不足する
6) 米国の銀行は、MBSを組成する為に支払能力の無いサブプライム層に高利の住宅ローン
   を貸し出す。

7) 2004年6月頃よりFRBは金利を緩やかに上昇させ始める
9) サブプライム層の金利借り換えコストが上昇し破綻する人が出始める
10) 手放された住宅が中古市場でダブ付き、住宅価格が頭打ちになる
11) 担保価値が上がらない事で、サブプライム層以外にもローン破綻が広がる

12)  サブプライム層のローンが不良債権化し、MBSの信用が毀損し、それがCDOやCDSに波及。
13) 金融商品全体への信用喪失と繋がり、リーマンショックへと進む

サブプライム層の住宅ローンは、数年ごとに金利が上層し、最初の金利が低い事で、むしろ最終的な負債が拡大するという、始めから破綻する様な設計でした。この様なローンを規制すべきとの意見はアメリカでは早い時期から有りました。

しかし、拡大し続ける金融市場はMBSやCDOの元になる住宅ローンを欲していたので、結果的にサブプライム層の住宅ローンは野放しの状態が続きました。

アメリカは2004年から金利が上昇し始めていますが、2006年7月までは日銀が大規模な金融緩和を行っていたので、円キャリートレードを通して潤沢な資金が金融市場に流れ込み、MBSの需要を生み出していたとも言えます。

この様に、サブプライムショックはITバブル崩壊に端を発するFRBの低金利政策と、日銀の大規模な金融緩和政策が生み出した合成の危機であったとも言えます。

大規模な金融緩和は、リスクを過少評価した市場を生み出し、金利上昇局面でその様な市場は必ず破綻をきたします。得に、リーマンショック以降、FRBも日銀もECBの大量の資金を市場に提供し続けていますから、金利上昇の影響はサブプライム危機よりも深刻ではないかと思われます。

ジャンク債市場、新興国市場、株式市場、コモディティー市場など、あらゆる市場でリスクが軽視されてきたので、FRBの利上げによる影響を市場関係者は読み切れないというのが、昨今のパニックの原因でしょう。

■ 危機対応も進んでいるが・・・ ■

実際にはリーマンショックの様に、極端なレバレッジを効かせるヘッジファンドは存在しませんし、銀行も自己資金を厚くして危機の対応力を強化しています。

しかし金利上昇で損失が発生する商品や市場では、下手をすれば暴落が発生する可能性は低くは有りません。

結局、危機対応がどんなに進んでいても、「損失が発生する」という恐怖に人々は容易には勝てません。結果的に売りが売りを呼ぶ形で、大幅な値下がりが発生する事は、今回の下落相場でも証明されています。(暴落とまでは言えませんが)


■ 利上げのストレステスト ■

今回の市場の混乱は、利上げのストレステストの様なものかも知れません。多分、バーナンキショックも同じ様な意味合いを持っていたのでしょう。ヘッジファンドが仕掛けをしている点から、彼らは「一味」と見る事も出来ます。

今回の様なストレステストを実施する事で、実際の利上げ前に、リスクを低減しておき、利上げ時のパニックを抑え込む事が目的なのかも知れません。

そう言った意味においては、今回の市場の混乱は、利上げの準備運動みたいなものかも知れません。

■ FRBはどの様に利上げに踏み切るのか興味深い ■

もし、ヘッジファンドが金融当局と繋がっているのなら、FRBの利上げ時に彼らが仕掛けなければ、市場は平静を保つかも知れません。現にFRBのテーパリングの開始時に大きな混乱は起きていません。

多分、本当の利上げ前に、利上げの影響を過大に宣伝し、利上げに向けて沈静化させて行く作戦かと思われます。利上げの始めの一歩をスムースに踏み出せば、市場の疑心暗鬼は徐々に解消して行きます。FRBの利上げ速度は最初はかなり緩やかなものになり、市場は金利上層のリハビリをして行くのでしょう。

ポジティブに考えるならば、テーパリングと同様にFRBの金利正常化は成功するかも知れません。


・・・ただ、そんなにスンナリ行くはずが無いと、心の片隅で囁く声がします。













ルー財務長官の発言の真意は如何に・・・消費税を引き上げなくても景気は充分冷えている

2014-10-15 10:21:00 | 時事/金融危機




秘書A  黒田総裁、机の上のこのメモはルー長官からですか?

黒田  そうらしい。うーん・・・相変わらず難解だな・・・。

秘書A  先日、長官は日本の消費税増税を牽制されていましたが、その件でしょうか?

黒田  まあ、あれは行き過ぎた円安を牽制しただけだからな・・。

秘書A  では、あれはアメリカの真意では無いと?

黒田  このメッセージがその答えなのだろう・・・しかし分からん!!

秘書A  あの発言もあって円安も一休みしましたから、追加緩和をしろと言う事では?

黒田  私もそう思うのだけど、確信がモテない・・・。



秘書B  総裁、何をご覧になられているのですか?

黒田  ルー長官からのメモだよ。

秘書B  ・・・それ、先ほど私がボールペンの試し書きをした紙なんですが・・・。



■ 消費税10%をに待ったを掛けたルー財務長官 ■

アメリカのルー財務長官が「政策当局者は財政再建のペースを慎重に調整し、成長を加速させるような構造改革が求められる」と発言して、消費税10%の決定に警鐘を鳴らしています。

これをしてメディアは一斉にルー長官の発言を取り上げています。

日本の景気減速はIMFも指摘しており、普通に考えれば10%の引き上げは有り得ません。ただ、政府や財務省は10%増税を止めれば、消費税増税が景気後退を引き起こした事を認める事になるので、引っ込みが着かない状況に陥っています。

そこでルー長官が助け舟を出したのでしょう。「アメリカもIMFも拙速な財政改善の悪影響を心配しているので、今回の引き上げは見送るり、景気回復に全力を尽くす」という筋書きを立て易くなりました。

■ 行き過ぎた円安を牽制したルー発言 ■

ルー長官の発言の真意はもう一つあるでしょう。市場は年末の日銀の追加緩和を予測して円を売り始めています。ただ、円安があまりに急激に進行してしまったので、日銀が追加緩和というカードを切り難くなってしまいました。

自民党の中からも、政府の中からも円安のデメリットを強調する発言が出始めています。これは選挙を控えているので当然とも言えます。国民の生活は円安で苦しくなっているので、これ以上の円安誘導は選挙で不利になるからです。

日米の円安を牽制する発言で、為替レートが105円程度に落ち着けば、日銀は追加緩和に踏み切り易くなります。

「消費税増税を見送ると同時に、ここは一気に追加緩和によって日本経済を成長軌道に乗せる」とでも言えば、国民はコロリと騙されます。



まあ、ルー長官の発言の真意は、私などが知る由も無いのですが・・・。妄想のネタにはなります。

日銀の追加緩和は有るのか・・・リフレ政策の功罪

2014-10-15 02:42:00 | 時事/金融危機
 

■ アベノミクスがもたらしたものは円安であった ■

鳴り物入りでスタートしたアベノミクス。
最近ではその賞味期限も過ぎたので、メディアのみならずご安倍総理もあまり口にしなくなりました。

「第一の矢」=大胆な金融政策(リフレ政策)

1) 日銀の異次元緩和という形でマネタリーベースを2倍に増やす
2) 円安が進行し、80円台から100円台に為替の調整が進んだ
3) 昨今では110円まで視野に入れた円安が進行中
4) 円安に伴い株式市場が上昇(海外勢の買い入れ枠が名目で拡大)

「第二の矢」=機動的な財政政策(公共投資の拡大)

1) 労働力の不足と原材料価格の高騰という「供給制約」でとん挫
2) 補正予算による一時的な公共事業拡大は、一時的な効果しか生んでいない
3) そもそも本気で長期的な公共事業拡大は考えていない
4) 「第二の矢」は自民党土建族とそれに連なる土建業者への選挙対策であった

「第三の矢」=国民投資を喚起する成長戦略(規制緩和と構造改革)

1) TPPの協議が進行中
2) 各種諮問機関が様々な規制緩和を提言
3) 現在進行中で規制緩和が検討されているが実績は無い


現状では、アベノミクスの成果で顕著だったのは異次元緩和(リフレ政策)による円安だけであったと言えます。

ただ、円安は異次元緩和の前から始まっていたので、これは、円キャリートレードの解消とヨーロッパ通貨危機によるリスクオフによって過度に円高に振れていた為替レートが、1ドル100円という適正価格に戻る時期に一致しただけとも言えます。


■ 円安のメリットとデメリット ■

円安は輸出企業には追い風となり、輸入企業には逆風となります。

1) 自動車や大手家電メーカーなどは円安で円建ての利益が水膨れする
2) 電子部品や素材などの輸出産業も円建の利益が水膨れする

3) 原油価格が値上がりする
4) 原油や天然ガス価格の上昇が電力価格を押し上げる
5) 100円ショップやユニクロなどの輸入企業では円安で輸入価格が増大し利益が減る
6) 外食産業などでも、円安で食材の調達コストが増大する
7) 素材産業なども円安で原材料コストが増大する
8) 部品産業などでは、材料費の国内調達コストが増大する(素材の輸入価格上昇)
9) 建設業でも鉄鋼などの輸入価格が増大する
10) スーパーなど小売業でも輸入食材などの価格が上昇する


■ 円安による実質賃金の低下 ■

最近の110円に迫る急激な円安で、円安のデメリットに注目が集まっています。

アベノミクスと日銀の異次元緩和の目的は「デフレ脱却」であり、そのための道具が「物価上昇」でした。

アベノミクスの開始当時はリフレ論者を中心に物価の下落が日本のデフレの原因であるとの意見が勢力を伸ばしていました。

確かに日銀の異次元緩和(リフレ政策)によって物価上昇が始まり、デフレ脱却が意識されましたが、昨年5月に株価が下落した時点で、楽観的ムードは急激に縮小しています。株価の回復で恩恵を受けた富裕層が消費を絞った事で、百貨店売上は減少に転じ、高級車などの売れ行きも一気に落ち込みます。

その後は輸入品の値上げなどがジリジリと進みますが、庶民の所得は伸びないので、実質賃金が低下し、生活が徐々に苦しくなると感じる人が増え始めます。TVのニュースでは、大企業の賃金が上昇したと盛んに宣伝されましたが、国民の平均所得は伸びておらず、実質賃金は低下しました。

多くの企業、特に外食産業などでは原材料費の値上がりの価格転嫁が出来ませんでしたが、消費税増税の際の便乗値上げで、牛丼チェーンを始め多くの企業が消費税以上の値上げに踏み切りました。

こういう分かり易い値上げに庶民は敏感なので、消費税増税を切っ掛けにアベノミクスへの期待が一気に萎んでしまいました。

■ 円安によるスタグフレーションが起きただけ ■

アベノミクスという「虚構」への期待が薄らいだ現在、円安がもたらした物は、一部の輸出企業の利益の水増し(販売量は増えていない)と、景気足踏みの中での物価上昇でした。

結局、異次元緩和の期待感が薄らいだ後に残ったのは景気足踏みの中での物価上昇、要は「スタグフレーション」でした。

■ 株価や不動産価格は「プチバブル」になった ■

一方、アベノミクスの期待感は株式や不動産市場でプチバブルを作り出しました。

株式市場は8000円台から一気に15000円台に2倍近くになりましたし、東京を中心としてタワーマンションなどの優良不動産が一気に値上がりしました。

折しも、東京に戦後建てられたビルの建て替え時期に差し掛かっていた事と、東京オリンピックの決定が追い風となって、東京限定の再開発ラッシュが始まっています。

ただ、本来は儲かるはずの建築業界ですが、東北復興で原材料費と人件費が値上がりしているので、建築業界の利益は薄いものとなっており、バブル期の活気からは程遠いものがあります。(雇用回復には寄与しています)

■ 円高のデメリットが目立て来た ■

昨今の110円に迫る急激な円高で、安倍総理からも、自民党内部からも、これ以上の円高は経済にとってマイナスになるとの発言が出始めています。

特に、消費税増税で景気が減速している時期だけに、輸入価格の値上がりは庶民の生活を直撃しますし、価格転嫁が出来ない企業の業績も悪化させます。

輸出企業など為替予約で円安リスクをヘッジしている企業でも、予想を超える円安の進行はデメリットが大きくなります。

自民党内部から日銀の追加緩和を牽制する発言が増えています。

■ 追加緩和を望むのは金融市場だけ ■

市場関係者だけが依然として日銀の追加緩和に期待しています。FRBがQE3の終了と利上げに踏み切ろうとする中で、低金利の資金の供給の減少は相場の暴落を引き起こす可能性があるからです。

ECBのドラギ総裁は量的緩和に慎重ですから、当然、日銀に期待が集まります。

一方え日銀の異次元政策の表面的な目的であった円安が勝手に進行してしまったので、日銀が追加緩和に踏み込む理由が希薄になっています。

■ リフレ政策の経済効果の底が見えてしまっている ■

アベノミクスの結果、リフレ政策の経済効果の限界が見えてしまった事も日銀の追加緩和に逆風です。

ゼロ金利の罠に落ちた経済では、金融緩和は結局期待しか生み出せず、期待は直ぐに薄らぐ事が異次元緩和によって証明されてしまったからです。

異次元緩和の実行時には勢いのあったリフレ論者達がすっかり鳴りを潜めています。むしろ過度な円安を牽制する人達も出始めています。

■ アメリカの利上げの援護の為に追加緩和に踏み切らざるを得ない日銀と財務省 ■

財務省としては日本国債の需給が安定している間は、追加緩和というカードは切りたくは無いはずです。無理に日銀が追加緩和に踏み切ると「財政ファイナンス」と見られ、国債の需給が混乱する可能性があるからです。

一方、昨今の世界的な市場の混乱の原因であるアメリカの利上げ開始の為には、日銀の援護射撃は不可欠であり、アメリカからの圧力は相当高いと予想されます。

結局、「ドルの安定」あっての「世界経済の安定」ですから、日本の景気回復よりも、金融市場の安定が優先されるはずです。

■ 消費税10%引き上げの決定が強行されるのか? ■

問題は、円安のデメリットが明確になってきた状況で、日銀が何を理由に追加緩和に踏み切るのかという体裁です。

一つの可能性としては、消費税10%増税の決定とカップリングで日銀が追加緩和に踏み切るシナリオです。

消費税8%増税後の景気の落ち込みを鑑みるに、安倍政権が率先して消費税10%に踏み切るはずがありません。景気の落ち込みによる税収の減少の方が、消費税増税の効果を上回る事は明確だからです。

それでも10%の決定が強行される様ならば、その目的は、日銀の追加緩和しかあり得ないのでは無いでしょうか?

■ リーマンショックは終わっていない ■

世間ではすっかり「リーマンショックは終わった」と思われていますが、リスクは大量の低利の資金供給(金融緩和)で誤魔化されただけで、それが断たれれば市場は崩壊します。

今回のアメリカの株式市場の混乱は、金融緩和の縮小予測だけで発生しています。

9月頃に先行した反応したのは米国債市場でした。QE3の終了が迫る中で、米国債金利が上昇に転じた時、一気にリスクオフが仕掛けられています。

結局、リーマンショックの歪の最大のものが国債市場と中央銀行のバランスシートに集まっています。この歪の解消は難しく(中央銀行の保有する過剰な国債の市場売却)、世界に先行して量的緩和に踏み切った日本では、既に国債市場のメインプレイヤーは日銀になっています。

アメリカはQE3終了で異常な状況に終止符を打つ事に成功した様に見えますが、確実に悪化するであろう米国債の需給状況をどこまでコントロールして金利を抑え込めるのか、FRBの手腕の見せ所です。

「利上げや景気回復」と「米国債金利の低位安定」は相反します。

米国債の強みは、他国の経済が悪化した時に輝いて見える事です。

「強いドル政策」とは、他国経済への攻撃を意味しているのかも知れません・・・。