この地味な韓国映画が、なかなかいい。先日見た『海にかかる霧』よりもこれのほうがより『殺人の記憶』のDNAを受け継いでいるのではないか、と思う。とんでもなく暗い映画だけど、韓国の暗い時代がちゃんと描かれてあるのがいい。そういう意味でもこれは『殺人の記憶』を想起させる。
ふたりの少年が好きだった少女。彼女が雨の日に殺される。犯人は誰なのか。事件は迷宮入りするのだが、その出来事は彼らの心に暗い影を残す . . . 本文を読む
ただただ甘いばかりの映画だ。こういうタイプの映画を、つまらないと切り捨てるのは簡単だが、そうはしない。もちろん、有村架純が『ビリギャル』以前にも、こういう蓮っ葉な役(最初だけ、だけど)を演じていたという発見は大きい、なんてことが理由ではない。
このロケーション素晴らしいのだ。そこにあるさみしい風景がなんとなく心に沁みてくる、そんな映画なのだ。僕はこういうのは嫌いではない。ただ、もう少し語られる . . . 本文を読む
この短編集は身に沁みた。まるで旅のエッセイのようなさりげなさ。ほんの一時の心の記録でもある。読みながら、主人公と一緒にこういう実にうら淋しい風景に身を委ねることとなる。さまざまな場所が舞台となる。彼が旅先で出会う街角の、路地裏の、飲み屋や食堂でのひと時が描かれる。冒頭の『月岡』では、幼い頃、死んだ祖母と来たことがある温泉を50年ぶりに再訪した男を描く。それって記憶の原点への旅ではないか。
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20代の終わりの夫婦が主人公。若くして結婚して、切迫流産の危機を乗り越えて、子供が生まれる。2年後。夫は思う。自分たちはもう人生の頂上を極めてしまったのではないか。だとすると、これからは下るしかないのではないか、と。
人生は山登りではないけど、そんな例えをするなら、どこが頂上なのか。必死に生きてきて、いくつもの苦難を乗り越えて、何かをやり遂げた気分になる瞬間があるのかもしれない。なんだか、傲慢 . . . 本文を読む