井上一馬は僕にボブ・グリーンを教えてくれた人だ。もうあれから20年くらいは経つ。最近ボブ・グリーンって読んでないけど、新刊は出ているのだろうか。
『アメリカン・ビート』が出版されたとき、なぜかすぐに読んだ。あの時の新鮮な感動は忘れられない。そんな彼を日本に紹介したのが井上一馬だ。翻訳家だった彼が小説にチャレンジしたのが本作である。しかも、誘拐ミステリーである。
ボブ・グリーンのコラムの数 . . . 本文を読む
キム・ギドクの幻のデビュー作がようやく日本で公開された。96年の作品である。10年以上前の作品だが、やはり最初からキム・ギドクは変わらない。すべてのキム・ギドク的なものがこの中には封じ込まれてある。
最近は洗練され、暴力的なイメージ(直接の暴力描写も)と、性描写が控えめになってきたが、このデビュー作はやりたい放題だ。だが、日本上陸第1作『魚を抱く女』にあったえげつなさはさすがにまだない。表現 . . . 本文を読む
市川拓司の小説はいつも同じだ。一人ぼっちの男の子(や女の子)が大切な人に出会い、相手の事をずっと思い続けていく。遠く離れてしまってもいつまでも待ち続ける。いつか願いは叶う。『今、会いに行きます』からこの『そのときは彼によろしく』まで、一貫している。
映画化された作品はそれぞれ原作のエッセンスをしっかり抽出した出来になっている。慌てずにゆっくり小説で描かれたことのすべてを見せていく。今までの作 . . . 本文を読む
クリスマスイベントとして企画されたUgly ducklingのアトリエ公演。自分たちのカフェをそのまま使った素敵な小品だ。劇団異国幻燈舎によるお話や、れき風のミニ・コンサートを間に挟み、全体を構成している。
can tutkuという小空間自体がまるでお芝居のセットのように見えるのも面白い。まさかあのカウンターはこの芝居のために作られたセットではあるまい。
クリスマスの夜にやってくる不思 . . . 本文を読む
劇団ドラマティック・カンパニーの復活公演。なんて言いながら、別に特別なことはない。これではいつものdracomじゃないか、なんて僕は思う。一応セリフのある普通の劇にはなっているが、でも、彼らがふつうの会話劇なんかをするはずもない。
それにしてもこれはぐだぐだ喋っているだけで、何の意味もない芝居である。ストーリーのあるドラマではない。文字通り「ドラマ的」だが、「ドラマチック」ではない。ここには . . . 本文を読む