昨年公開されたすべての映画のなかで、一番感動的な作品は、きっとこの映画だろう。ようやくDVDで見ることができたのだが、こんなにも胸が熱くなる映画だとは思いもしなかった。たった90分のドキュメンタリードラマなのだが、ここには人生における最大の夢と冒険が詰まっている。
1974年、ワールドトレードセンターの2つのビルの間にワイアーロープを渡して、そこを歩いた男がいた。110階の屋上、地上440メ . . . 本文を読む
クレジットでは現場監督、三池崇史、と出る。ふざけてる。前作から6年。誰も期待しない第2弾が、かなりスケールアップして、登場した。前作も充分にふざけていたが、今回はその比ではない。2025年、東京はゼブラシティーと改名されて、橋下知事並みの独裁者の都知事が就任して、すさまじい改革で、この都市から犯罪は半減した。そんな世界にゼブラーマン(哀川翔)が復活する。敵はバカな知事ではなく、彼の娘のゼブラクイ . . . 本文を読む
いじめられっ子の中学生,宏海がカーリングと出会う。トップアスリートを目指す柚香が、新しいチームのなかで、困難を極める。この2人のエピソードを交錯させていきながら、そこに接点を作り、やがて2人と、彼らのそれぞれのパートナーである2人を含む主人公4人が、ひとつのチームを組んでワンシーズン限りの挑戦に挑む。
世代も違うし、性も違うから、交錯するはずはなかった人生が、偶然から出会い、カーリング競技を . . . 本文を読む
今年40歳になる岩橋クンが主宰するオリゴ党の新作のテーマは、なんと「今、モテたい」ということらしい。いい歳した男たちが女の子にもてるためにバンドをするなんていうシャレにも冗談にもならないような『寒い』話が展開していくこととなる。これはコメディーにしかならないよ、と思いながら見るのだが、なんと、そうはならない。
それどころか、どちらかというと、シリアスで重いタッチになってしまうのだ。驚きである . . . 本文を読む
前編を見ていないくせに先に後編を見てしまうなんて、なんとも無謀な見方をしてしまう。でも、それは仕方ないよ。前編を見るつもりはなかったし、TVだってあんなに人気だったのに、まるで見てない。(だいたい僕はTVドラマは見ない人だ。ことさらこのドラマに限らず)今回この映画を見た理由はただ試写会に誘われたから。それだけです。
でも、けっこうこのバカ映画に乗れた。ここまでアホを平気でされたなら、あきれつ . . . 本文を読む
これはあの『花の袋』の戸田彬弘のひとつ前の作品だ。『花の袋』を見てしまった以上、彼の旧作を遡らずにはいられない。たとえそれが旧劇団スカイフィッシュの松山賢史の脚本であったとしてもである。(誤解のないように、先に書いておくが、スカイフィッシュは好きな劇団だ。ただ、それが戸田監督と合うかどうかは疑問だ、ということである)
なんとなく予想は出来たのだが、松山作品らしい観念的なドラマで、あの単純明快 . . . 本文を読む
『ロミオとジュリエット』をミュージカルとして、46名×2という凄まじいキャストで上演する。これは俳優養成所による発表会でも、あるのだが、単なるルーティーンワークではなく、今と言う時代にむけて、大塚雅史さんが問う壮大なメッセージでもある。頼まれ仕事として、ビジネスライクにこなすのではなく、この困難な作業を通して、作家としての自分の姿勢を明確にし、このメンバーを引き連れて、誰かのためではなく、自分の . . . 本文を読む
湯本香樹実の久々の新作だ。今回はなんとファンタジーである。とはいえほのぼのした小説ではない。とても切なく厳しい。
3年前に行方不明になったまま、消息の知れない夫が帰ってくる。彼は海で死んでしまったらしい。死んでしまった彼が離れ離れになっていたこの3年間の時間を辿る旅に彼女を連れて行く。
なぜ彼が死んでしまったのか、をたどるのではない。ただ、そこから、彼が今の生活を捨てて何を求めたのか、が . . . 本文を読む
とても一直線なお芝居だ。見ていて気恥かしいくらいだ。若い役者たちの一本調子の硬質な演技も、見ていて恥ずかしい。こういう感傷的な芝居は、僕は実は苦手なのだ。それに、彼らが真剣に語り合い、自分たちの傷口に塩をなすりつけ合う姿は痛ましいばかりだ。
これは目をそむけたくなるような芝居だと思う。彼らの若さが眩しい。でも、それを羨ましいとはもう思わない。なんか、そういうことって、もう面倒くさい。
1 . . . 本文を読む
今回のシネドライブ2010で、唯一の海外作品が、この映画だ。どういう経緯でここで上映されることとなったのかはわからないが、ラインナップの中でも異色の作品であることは確かで、それゆえ興味を持ってしまった。しかも、これだけが35mmの映画である。(今回の上映はDV版となったが)
期待に胸を膨らませて対面したが、期待したような出来ではなくがっかりした。ストーリーは女の子2人によるたわいない恋の話で . . . 本文を読む
扉をたたく人に対して、扉を閉ざしてしまう国。自由の国、のはずだったアメリカは、9・11以降こういう閉鎖的な国になってしまったという現実を描こうとするのではない。どんな状況かでも、ここで人と人とが出会い、心を交わしあっていくことの喜びが描かれていくのだ。そこがとても素敵だ。音楽を通して2人の男が出会い、国が、そのうちのひとりを強制送還してしまっても、残された男の中には去って行った彼が教えてくれた音 . . . 本文を読む
『花のあと』の中西健二監督のデビュー作である。昨年劇場公開された時は暗そうなので見なかったのだが、あの傑作『花のあと』を見てしまった以上遡ってこれを見ないわけにはいかないと思った。予想通りの映画だった。
ただ、ここではまだ『花のあと』のような明確な形を成し得てはいない。中西監督らしさは、ほんの片鱗を感じさせる程度だ。
しっかり主人公を見据えて、そこから目を逸らさないのは彼らしい。主人公が無 . . . 本文を読む
この何でもない生活のスケッチにどうしてこんなにもドキドキさせられるのだろうか。同じ場所にいる(一緒に暮らしている)2人の距離が、結婚を決意した時から、なぜか遠くなっていく。ここで一緒にいて、これからもずっと2人で生きて行くのに、それがなぜこんなにも寂しいのだろうか。別に嫌いになったわけではない。断じてない。今更好きだとか、愛してるだとか、口にすることはないが、でも、お互いを一生のパートナーとして . . . 本文を読む
09年4月からスタートして丸1年かけて上演してきた『走り屋3部作』の完結編である。当日パンフにあったこれまでのあらすじを開演までの時間に読んでみた。なんと、これではまるでストーリーがわからない。愕然とする。今回初めてではない。ちゃんと前2作を見てるのに、である。妄想Pのマニアである僕ですらよくわからないあらすじを用意された初心者はどうなるのだろうか、なんていらぬ心配をしているうちに芝居はようやく . . . 本文を読む
この横田丈実さんの新作長編は、とても静かな、重い映画だ。ストーリーらしいストーリーもないし、登場人物も極端に少ない。彼らの、ほんのすこし移ろいゆく心をさらりと提示するにとどめる。ことさらそこをクローズアップして見せるようなことはしない。だから、あまりに淡すぎて、ものたりないと思う人も多々いるだろう。
72分という上映時間も微妙だ。長編映画としては短かすぎるし、中編と呼ぶには少し長い。でも、語 . . . 本文を読む