習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『怪談レストラン』

2010-09-06 21:20:36 | 映画
 こういう健全な子供向きの娯楽映画が最近はめっきり少なくなっている。まぁ、商業映画は、お客を集めてなんぼ。だから健全な児童向けの映画なんて作ってもまるで金儲けにはならないから、作らない。当然のことだろう。子供たちに人気の本らしい。TVアニメにもなっているようだ。僕は何にも知らなかった。ただ、こういうのんびりした感じの映画に心魅かれて、劇場に行く。  映画は、なんとも言い難い緩いタッチの映画で、と . . . 本文を読む
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飛鳥井千砂『チョコレートの町』

2010-09-06 21:18:53 | その他
 よくできた小説を読み終えたとき、なんとも言い難い寂しさに襲われることがある。心地よい世界の余韻に浸りながらも、もうここにはこれ以上いられないという事実に怯える。小説は終わった。ここからは、ただの日常だ。いい映画を見終えたときも同じだ。スクリーンが明るくなり、みんなが劇場を出ていく。もっとあの甘美な世界に浸っていたいのに現実は容赦ない。  この小説の主人公は、東京に出て10年になる男性だ。故郷の . . . 本文を読む
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オリゴ党『僕は昔子供じゃなかった』

2010-09-04 09:22:26 | 演劇
 オリゴのくせに(失礼!)ファンタジーっていったい何なのか、と思いながら見ていたのだが、そういう先入観をあざ笑うような不条理劇が展開していくのには唖然とする。『銀河鉄道の夜』なんかをわざとらしく下敷きにして、でも、あまりロマンティックではない。  だいたい下品です。下半身をむき出しにした男たち(パンツははいているはず、一応見えないようになっていて、そこもまた嫌らしい)が電車ごっこをするシーンから . . . 本文を読む
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川本三郎『いまも、君を想う』

2010-09-04 09:09:39 | その他
 読みながら、何度涙を流したことだろうか。恥ずかしくはない。ここに込められた川本さんの想いは、しっかりと読み手である僕たちの胸に届く。ただ、ふつうでありたかった。同じように朝起きて、挨拶を交わし、なにげない会話があり、仕事をして、贅沢をするときは、鮨屋に行く。35年間寄り添い、共に生きた妻がいる。一緒にいることが当然のことで、彼女がいるから、今まで生きてこれた。そして、これからもだ。  映画、文 . . . 本文を読む
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くじら企画『サラサーテの盤』

2010-09-02 21:29:26 | 演劇
 まるで大竹野が帰ってきて、ここで新作を作り上げたような。作、演出、大竹野正典、というこのクレジットに偽りはない。大竹野がもう一度『サラサーテの盤』を再演したなら、きっとこうなる。そんな芝居になった。まさに入魂の一作である。今回、この公演にあたって、敢えて別の演出家を立てず、大竹野本人に演出をまかせたのは正しい判断だった。  実際は、小寿枝さんが大竹野になりかわってこの芝居の演出を担当し、本人以 . . . 本文を読む
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baghdad cafe 『ごっこでいいから、手をつないでて』

2010-09-02 21:16:57 | 演劇
 前作『ワタシ末試験《追試》』に続いて、さらにあのやり方をエスカレートさせた最新作である。どこまでが本当で、どこからが嘘なのかもわからない。嘘とか実とかとかいう境界線を軽々越えてしまって、ひとりの少女の内面の旅が描かれていく。見た目のカラフルさにだまされてはならない。  これはとても痛ましい話だ。つまらない男に貢いですべてを失ってしまう女の孤独が、これでもか、これでもか、と描かれる。あんな詰まら . . . 本文を読む
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宮部みゆき『小暮写真館』

2010-09-02 21:10:52 | その他
 あのカバー写真の風景にたどりつくまでに、なんと710頁も読まなければならないなんて、ちょっと酷すぎる。あのカバーに心惹かれてこの小説を手に取ったのだが、それがこんなにも困難を伴うものになるなんて、思いもしなかった。この遠く果てしのないドラマは、4つのエピソードからなる連作というスタイルにもなってはいるが、実際は4章仕立ての大長編である。  最初は心霊写真の謎を解明する素人探偵の話、のように見せ . . . 本文を読む
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『ハナミズキ』

2010-09-02 21:07:48 | 映画
 とても丁寧に作ってあり共感できる映画になっていた。土井裕泰監督は、これまでも、ありきたりな話(『涙そうそう』)であろうと、荒唐無稽(『「いま、会いにゆきます』)であろうと、丹念な日常描写の積み重ねから、説得力のあるドラマを紡ぎ上げることに成功してきた。だから、今回のような単純な「恋愛もの」でも、きっと大丈夫だろうと思ったのだが、それにしてもよく健闘していて感心した。  ここまで通俗的な話で、今 . . . 本文を読む
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