習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『プール』

2010-09-22 22:57:21 | 映画
 この映画の監督は萩阪直子ではない。偽萩阪である。大森美香だ。なんで、ここまで似せる必要があるのか。いや、作り手にはそんな意図はないのかもしれない。ただ、よく似たキャスティング、よく似た設定で、よく似たドラマを作っただけで、他意はないのかもしれない。というか、それだけ揃えば、やはりただのパチモンではないか。  でも、監督はただのパチ監督ではない。あの有名なTV脚本家である。それなりの実績もある。 . . . 本文を読む
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『TUNAMI』

2010-09-20 22:27:51 | 映画
 ソル・ギョングとハ・ジゥオンが主演する韓国発パニックスペクタクルである。プサンをメガ津波が襲うという単純な話だ。今時こんなクラシックな映画が作られたこと自体が驚きである。70年代に『大地震』『エアポート75』を皮切りにアメリカで盛んに作られたパニック映画は、日本にも派生して『日本沈没』という大ヒット作を生んだ。だが、その後飽きられて下火になる。やがて、CG全盛時代になり、安直に格安料金で凄いスペ . . . 本文を読む
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『アンナと過ごした4日間』

2010-09-20 22:27:09 | 映画
 なんとも重い話で、主人公の行動がもどかしいし、変態的で、つき合い切れない。でも、ファーストシーンからずっと凄い緊張感で、スクリーンから(まぁ、DVDなんでブラウン管だが)目が離せない。ストーリーの語り方も、普通ではなく、細切れで、描かれる時間もバラバラで、なかなかこれが何の話なのか、それすらもわからなくなっている。たぶんわざとこういう構成を取っているのだろう。だが、それがこの映画のスタンスとなっ . . . 本文を読む
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小路幸也『僕は長い昼と長い夜を過ごす』

2010-09-20 22:20:20 | その他
 こういうエンタメ小説に嵌るなんて、予想もしなかった。『東京バンドワゴン』シリーズの小路幸也なんで、かなり面白いだろう事は読む前からわかってはいたのだが、僕はミステリは嫌いだし、「偶然手にした2億円を巡るトラブル」なんていうありきたりで、ありそうもない話とつき合うほど暇ではない。400頁もの小説を読んで、ただおもしろかった、で終わるのなら、読まない。  最初は嘘くさい話だなぁ、とちょっと及び腰で . . . 本文を読む
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関西芸術座『チンチン電車と女学生 1945年8月6日・ヒロシマ』

2010-09-17 23:36:03 | 映画
 1945年8月6日の早朝、学校を抜け出そうとする2人の女学生の描写に始まり、後半は原爆投下後の地獄を描く。そして最後は、彼女たちが再び業務に就くまで。終戦前夜の1943年、広島電鉄が、女子学生によるチンチン電車の車掌や運転士を育成するために家政学校を開校したという事実を背景にして、そこで学び、働く少女たちが、いかにこの特殊な状況下で生きたのかが描かれる。「その日」を中心にして、その後3日間のドラ . . . 本文を読む
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宴劇会 なかツぎ『きっと多分、そこにいる』

2010-09-16 21:12:41 | 演劇
 役者の小畑香奈恵、石本伎市朗、はしぐちしんという3人によるユニット。台本ははしぐちさん、演出は石本さんが担当した。はしぐちさんはコンブリ団の時とは、微妙に違うタッチの台本を提示する。しかも、それを自らの演出で、ではなく石本さんに委ねる。タッチは軽やかだ。シリアスではなく喜劇スタイルになっている。だが、ただのドタバタではない。とてもバランスのいい芝居で、安心して見ていられる。だが、それ以上のものは . . . 本文を読む
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白石一文『ほかならぬ人へ』

2010-09-16 21:11:13 | その他
 昨年の直木賞受賞作品。とてもよくできた恋愛小説だと思う。ひとりの人間をしっかりみつめていくことから見えてくるものがある。それをきちんと描き、人間の本質に迫る。まぁ、そんなこと優れた小説なら当たり前の話なのだが、先日読んだ恋愛小説『ランプコントロール』との違いがあまりに明確なので、ついついこんなことを書いてしまった。要はアプローチの問題なのだ。恋愛は人間に従属する。初めに人間ありき、である。彼らが . . . 本文を読む
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第2劇場『婚活食堂』

2010-09-16 21:09:37 | 演劇
 こんな大胆な芝居はない。というか、こんなこと芝居になんかするなよ、とも思う。だが、彼らはやってしまう。怖いものなしだ。というか、ノリだけでなんでもしてしまうのが、今の2劇だろう。むちゃする。  なんとこれは劇団員である清水翼さんと高家洋代さんの結婚記念公演なのである。そこまでプライベートなことを、芝居にするなんて、さすが2劇だ。なんでもありである。ほとんど宴会芸と紙一重。見せ物ではないのだから . . . 本文を読む
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『悪人』

2010-09-14 23:14:08 | 映画
 今年一番期待の映画だった。魂を揺さぶる傑作だったあの分厚い原作小説をそのまま映画化することは不可能だ。だが、李相日監督が原作者である吉田修一と台本を作り、2時間19分の大作としてまとめあげた本作が、ここまで、ふがいない出来であることに衝撃を受けた。  前半は悪くはない。この緊張感がどこまで持続するのか、ドキドキさせられた。だが、だんだんなんだか雲行きが怪しくなる。特に妻夫木聡に殺される満島ひか . . . 本文を読む
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大崎善生『ランプコントロール』

2010-09-14 23:01:53 | その他
 こういう恋愛小説を読むなんて本当に久しぶりのことだ。大体恋愛小説なんか読まないし、興味もない。大人のドロドロなんか読みたくもない。爽やかな青春小説の純愛ものでも、なんか腰が引けるし。そんな恋愛小説から遠く離れた自分にちょっとがっかりするのだが、実際のところは精神年齢がもっと低くて、恋愛以前の淡い恋物語のほうが自分にはぴったりなのかもしれない。まぁ、どうでもいいけど。  この小説を読みながら乗り . . . 本文を読む
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『ゼロの焦点』

2010-09-14 23:00:35 | 映画
 昭和32年という微妙な設定は、この作品にとって、とても大事なことなのだろう。「もはや戦後ではない」という言葉が流行語になった昭和31年の後、日本は高度成長時代に突入していく直前。新しい時代の幕開けを背景にして、今だに戦争の影を未だひきずる人たち(それはあの時代を生きた「誰もが」が、そうであったはずだが)が、一つの決着を付けること。それが本編のテーマだろう。「まだ戦後は終わらない」のだ。時代の空気 . . . 本文を読む
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『ルー=ガルー』

2010-09-14 22:59:14 | 映画
 こういうアニメーション映画が劇場公開される時の基準は何なんだろうか。公開2週目なのに、もう1日2回上映になり、普通の人が見られる時間はレイトショーの9時25分のみ。なのに劇場に行くと客はたった4人。この映画は一体誰がターゲットになっているのだろうか。  なんとなく面白そうなので、見に行ったのだが、設定の面白さを生かしきれないまま話がどんどん萎んでいくので、がっかりした。これは大人向けの映画では . . . 本文を読む
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態変『自由からの逃走』

2010-09-14 22:57:52 | 演劇
 なんてことだ、と思う。思わず笑ってしまうくらいに態変は自由自在にこの芝居を作っている。『自由からの逃走』というタイトルを持つこの作品を、こんなにも自由に作ってしまうフットワークの軽さが今の態変の身上である。  もともと怖いもの知らずの集団だったのだが、昨年の『ファンウンド潜伏記』を経て、完全に開き直ってしまったのではないか。自分たちの不自由を逆手にとって、不自由だからこそやれることを模索続けて . . . 本文を読む
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浪花グランンドロマン『人造都市』

2010-09-06 21:48:59 | 演劇
 なんと20周年である。毎年、毎年休むことなく1年に1回テントで芝居をすることを定例としてきた浪速グランドロマンが、今年もいつものようにテントをたてる。この「当たり前のように」コンスタントに作り続ける姿はある種の感動すら呼ぶ。これは凄いことなのだ。なのに、まるで凄いことのようには見せない。飄々とこなしているようにすら見える。そこが彼らの凄さだ。  20年、マイペースで続けられるなんてほんとは奇跡 . . . 本文を読む
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南船北馬『4のシ点』

2010-09-06 21:44:01 | 演劇
 棚瀬さんが1年を待たずに新作を発表してくれたことがとてもうれしい。南船北馬として再出発した棚瀬さんの描く世界は今までのものとは、いささか趣を異にする。ここに描かれる世界は構造が図式的で、とても見やすい。観念的だった従来の作品世界とはまるでアプローチが違う。お話よりもまず、世界の成り立ちが先にある。そのシステムの中でどう生きていくのかが描かれる。理不尽なものも含めて受け入れざるを得ない。ここに描か . . . 本文を読む
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