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映画・演劇のレビュー

桃園会『少女仮面』

2013-10-09 19:31:14 | 演劇
 これについて書くのは難しい。どう書いたらいいのか、よくわからないからだ。  唐十郎の初期の傑作に深津篤史が挑む。桃園会による唐十郎なんて想像もつかない。だから、とても楽しみだった。深津演出でこの台本がどう料理されるのか。ドキドキした。派手なスペクタクルではないのは、わかっていた。だが、こんなにも、深津色の抑えられた芝居になっているなんて驚きだ。  でも、それは当然のことかもしれない。自分の世 . . . 本文を読む
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あさのあつこ『グラウンドの詩』

2013-10-09 19:27:28 | その他
 前作『グラウンドの空』の続編だ。『バッテリー』と同じような話に見せかけて、実はまるで違うアプローチを試みている。このシリーズで彼女は一切試合をするシーンを描かない。ふたりの出会いを描く前作もそうだったが、本作は徹底している。  前作で、県大会に優勝した八森東中が、全国大会に出場するまでの日々が描かれる。期待と不安、憂鬱の日々がスケッチされていく。主人公の3人(ピッチャーの透哉、キャッチャーの瑞 . . . 本文を読む
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『S/M オペラ~上海篇(R18+)』

2013-10-09 19:16:12 | 演劇
 寺山修司の『上海異人娼館 チャイナドール』を下敷きにしたオリジナル作品。あの映画自体が『O嬢の物語』を下敷きにしたものだが、この過激なタイトルとは裏腹に今回の佐藤香聲さんは、とてもソフトに、このハードになりそうな素材を扱う。  これは演劇ではなく、どちらかというとパフォーマンス作品なのだが、ここに展開するあやしい世界は、1920年代の上海の魔窟を思わせる。(もちろんそんなもの見たことないけど) . . . 本文を読む
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N2『光ヶ丘三丁目』

2013-10-09 19:09:07 | 演劇
 やりたいことはわかるのだが、あまりにストレートすぎて、ちょっと困る。記憶を失った女性と、彼女の親友。閉鎖された教会を舞台にして、5年振りに再会した2人が、ここで過ごす時間が描かれる。  5年前、事故があった。ひとりの少女が死んだ。彼女の残したスケッチブックには、光が描かれている。だが、それは見えない。光を描きとめることは不可能だから、彼女は白紙のページを抱きしめる。少女は、なぜ、この教会に通っ . . . 本文を読む
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ジュヌヴィリエ国立演劇センター・こまばアゴラ劇場国際共同事業『愛のおわり』

2013-10-09 19:07:15 | 演劇
作者(パスカル・ランベール)の意図は十分わかるのだが、はたしてこの方法が正しかったのか。延々と一人語りのように、一方的にののしる男。それを、ただ、受け止めるだけで、何も言わない女。それがなんと1時間続くのだ。正直言って、これは苦行だ。もちろん、後半は反対に女が反撃する。まだ、こちらのほうが、見ていてほっとする。感情的なのは同じなのだが、彼女のほうが、理性的に見える。相手を範疇に入れて話をするから . . . 本文を読む
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『ポルトガル、ここに誕生す』

2013-10-08 22:34:02 | 映画
 このオムニバス映画を見ながら、いい映画を見ることは大事だ、と改めて思った。この短編集を彩る4人の巨匠たちは、この小さな作品たちを全力で作っている。手慰めではない。片手間でもない。渾身の力作でもない。ただ、あるがまま。15分から30分という上映時間は、制約があっての尺数なのかもしれないが、彼らはそこで手を抜かない。そんなこと当たり前の話ではないか、と言われるかもしれないが、与えられたテーマで、少な . . . 本文を読む
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スクエア『誉め兄弟』

2013-10-08 22:29:03 | 演劇
これは扱い方が難しい素材だ。ばかばかしいコメディになる危険性もある。実際に見ながら、最初は笑っていたが、しばらくして、あほらしいと、感じた。でも、それが確信犯なので、徐々に作り手の覚悟のほどが伝わってきて、だんだん見ているほうが本気になっていく。 タイトルにあるようにこの兄弟はお互いに誉め讃えあう。しらじらしい。だが、幼かった彼らが覚悟を決めて家出して、それぞれ別々の場所で今まで生きてきて . . . 本文を読む
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真紅組『おしてるや』

2013-10-08 22:24:21 | 演劇
道頓堀のZAZAで、道頓堀誕生秘話を舞台化するという企画がおもしろい。こんな事実があったなんて知らなかった。道頓堀がなぜできたのか。歴史の真実に迫る作品である。だが、そこは真紅組だから、重くて暗い話にはならない。明るくて楽しいステージの中で、感動的なドラマを作り上げる。安井道頓と言う男が村の仲間を募って大事業を行う。南端が堀止になっていた東横堀川と西横堀川を結び木津川へ注ぐ堀川の開削をするのだ。 . . . 本文を読む
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『アップサイドダウン 重力の恋人』

2013-10-06 23:14:54 | 映画
 なんだか、先日見た『エリジウム』とよく似た設定だ。でも、こちらは、ラブストーリーだし、ファンタジーだけど。それにしても、とてもチャーミングな作品だ。僕は嫌いではない。同じような世界なのに、ハゲのマット・デイモンのアクション映画とはまるで肌触りが違う。まぁ、別の映画なのだから当然のことだが。でも、貧富の差が前面に出て搾取するものとされるものという構造は同じ。同じ世界観からこんなふうに別のドラマが生 . . . 本文を読む
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『さよならドビュッシー』

2013-10-06 22:48:35 | 映画
これはダメだ。上映時間は2時間11分もの大作映画なのだが、まるで緊張感がない。利重剛はウェルメイドな娯楽映画を作ろうとしたのかもしれないが、それならもっとテンポよくするべきだ。上映時間は100分程度にまとめるべきだろう。だいたいこの素材で2時間超はない。ピアノのシーンが長いのだが、そこにまるで緊張感がない。ミステリーなのだが、ミステリーとしての要素が希薄だ。 これでは軽いB級映画ではないか。 . . . 本文を読む
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百田尚樹『錨を上げよ』

2013-10-06 22:45:05 | その他
 上下巻で1100ページ、原稿用紙にして2400枚に及ぶ超大作である。『永遠の0』で注目を浴び、その後さまざまな作品に挑戦した彼の渾身の書き下ろし力作がこの作品らしい。僕は彼の『海賊とよばれた男』を読んで、感心した新参者だから、(これが彼の作品はまだ3作目)この作品の彼の作品の流れの中での位置付けはよくわからないけど、この『海賊』並みの分量を持つ大作に期待した。  だが、300ページくらい読んだ . . . 本文を読む
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