けっこうスリリングで、緊張感のある出だしだった。白を基調にしたデザイン、そこに血の赤の対比。スタイリッシュで趣味がいい。
クローネンバーグの刺激的な新作に続き、その息子、ブランドン・クローネンバーグがメガホンをとったこの初監督作品を見る。父親ゆずりの感性で、悪くはない。この先どうなるのか、ドキドキしながらスクリーンを見つめることになる。(DVDで見たから、TV画面だけど)
しかし、だんだ . . . 本文を読む
久々に沢木さんの本を読む。いつものことながら、とてもしつこくて、自分の考えを立証するためになら、どんな困難も、ものともしないその姿勢には感動させられる。いくつのなっても沢木さんは沢木さんだ、と思う。
1枚の写真(「崩れ落ちる兵士」)に何十年もこだわり続け、この1冊を作り上げる。もちろん、これを書くためにこだわっていたのではない。こだわったから、これが生まれたのだ。あの写真はキャパの撮ったもの . . . 本文を読む
この島がどこにあり、どういう状況下で彼らがそこに暮らしているのか。何の説明もない。説明もないまま、嵐がやってきて、島の大部分が水面下に沈む。村を棄てて避難する人たちの姿が描かれる。同時にここにこだわり残る人もいる。映画はそんな島の様子をドキュメンタリータッチで描く。
災害後、生き残った人たちは、今まで通りにここで暮そうとするのだが、危険だ、という理由から強制退去を強いられる。どんなに困難であ . . . 本文を読む
3つのお話からなるオムニバス。エピソードとエピソードの間に短いインターミッションを兼ねたエピソードが挿入されるから、トータル5つのお話になっている。あらゆるケースを1本の中に詰め込んだ。演劇を通して「アルコール依存症について」考えるためのテキストになっている。それを太陽族の面々が演じる。正直言うと、芝居としてはあまり面白くない。岩崎さんの視点が前面に出てこないからだ。ウェルメイドな「教育演劇」( . . . 本文を読む
今、これを作る意味はどこにあるのだろうか、と思いつつこの映画を見た。一世を風靡したTVドラマの映画化である。昔ならよくあったパターンなのだが、しかし、これだけの歳月を経て劇場版リメイクはない。しかもネタはNHKの朝の連ドラである。昔、松竹はよくこれをしていたけど、それはTVのヒットを受けてその翌年くらいには公開したというケースだ。TVの余波を受けて便乗するというのがそのパターンだ。しかも、70年 . . . 本文を読む
最初はテンポがいい。とてもバカバカしいけど、阿部サダヲのテンションの高さに引っ張られていき、笑える。土下座でこれだけ笑わせるのである。大したもんだ。だが、串団子式エピソードの羅列はいささか単調すぎて、やがて少しずつ飽きてくる。とどめは、あの国際紛争となるエピソードだ。スケールの大きさでも誇示したかったのかもしれないが、あれで反対に醒める。ああいう中途半端なモブシーンは、映画がただの嘘でしかないこ . . . 本文を読む
こういうギャング・アクション映画はもう古いのかも、しれない。しかし、チョウ・ユンファに再びこういうものを今やらせることで、かつての香港ノワールの総決算を今の時代にすること。そこには十分意義を感じる。もともとジョン・ウーによる80年代の香港ノワールは60年代の日活無国籍アクションの焼き直しでしかなく、リアルからは程遠いものだった。
でも、あのハリボテのストーリーと様式美に痺れた。フィクションの . . . 本文を読む
デビット・クローネンバーグ監督最新作は、リムジンの中ですべてが完結する世界。リアルもうどこにもない。世界一の大富豪の若者が、人民元の暴落によってすべての富を一瞬で失う。世界が終わる日。それは彼にとって、であるだけではなく、文字通り「世界」にとって、もだ。
彼はその日、ただ床屋に行きたかっただけ。でも、それすらかなわない。生きている実感なんてどこにもない。リムジンの中からあらゆる指示を出し、巨 . . . 本文を読む
シリーズの第6作。とても楽しい。こういうアットホームな小品連作って、ファンにしてみればたまらなく心地よいものなのだろう。先日からTV放送されている『東京バンドワゴン』は昭和の家族を描くが、この中西邦子によるシリーズは平成の家族を描いている。その差は興味深い。
中西さんはストーリーではなく、シチュエーションを大事にして、3兄弟とゲストとのやり取りだけで、作品を成り立たせている。それが結果的にた . . . 本文を読む
『みんなエスパーだよ』を見ていて思ったことと同じ。アイディアだけで、作ったって、底はすぐ抜ける。詰めが甘すぎ。だんだん退屈してくる。マルチな才人園子温が、自らの才に溺れて、何でもありの映画を作ったのがこれだ。エンタメと開き直って好き放題するうちに収拾がつかなくなり、すべてぶち壊して、チャラにする。そんな映画だ。こういうむちゃくちゃが好きな人もいるだろうけど、僕には笑えない。後半は退屈だった。映画 . . . 本文を読む
原作を読んだ時、あのラストの展開はないわ、と思った。ファンタジーですか? そうでしたか。でも、いきなりすぎます。なんてね。そんなふうに、なった。目が点です。驚きモモの木。と言うわけで、もう、ネタばれしているから、僕はこの映画に最初から乗れない。
知らなかったなら、どんな気分で見られただろうか、とも思うけど、後の祭りだ。しかし、さすが、三木孝浩監督だ。このとんでもなく奇想天外な話を、絶妙な匙加 . . . 本文を読む
『ヒトラー 最後の12日間』の監督オリバー・ヒルシュビーゲルが撮った。まるで題材が違うではないか、と思うけど、どちらも実在した人物の最後の時間を扱っているから、なんだかとても共通項がある気もする。なんとも微妙。
もちろん、映画も同じで、これはなんとも微妙な出来だ。ダイアナの最後の2年間を描く。彼女が本当の恋に出会って、でも、有名人だからマスコミが追いかけてくるし、大変で、せっかくの恋がうまく . . . 本文を読む
この小さな映画がもたらす緊張感が心地よい。映画はこうでなければならない。だが、こういう秀作が今の日本では劇場公開もなされないのが実情だ。地味すぎてお客が入らないという判断が下される。仕方ないこととはいえ、なんだか残念だ。このダークトーンの映像は、劇場で観てこそその魅力が伝わるはずだ。だがDVDで見るしかない。
小さな町で起きた凄惨な殺人事件。犯人はかつて同じような性犯罪を犯した男ではないか、 . . . 本文を読む
終末の予感を描く映画。それを日常の描写の積み重ねの中に描いていく。ハーメルンの笛吹きの近未来ヴァージョン。はたして嵐は来るのか。しかも、「何かが、やってくる」の、「何か」って実際は何なのか。彼はただの嘘つきでしかないか。映画は大災害が彼らの町を襲うまでを描くのではない。ネタばれになるけど、実は先にも書いたようにここに描かれるのは「予感」だけなのだ。(だから、最初からネタばれしてるのだ!)監督は、 . . . 本文を読む
この短編連作はとても好きだ。最初の『お年玉』を読んだところで確信した。こういう小説が僕は好きなのだ。このまま長編になってもいいなぁ、と思いながら最初のエピソードを読みました。
共通テーマが、バス、というのもいい。電車も好きだが、バスの生活圏を走る感覚が好き。大阪市バスで、普段見たことがないところを走るのも好き。でも、なかなかそういう機会はないけど。クラブの試合なんかでどうしても電車ではいけな . . . 本文を読む