豊田利晃監督が引き受けたということが、この映画を見た動機だ。三池崇史による大ヒットした2部作の後を受けて、その続編を手掛けるのは簡単なことではない。散々やり尽くされて作品の残り滓を集めて、しょぼい映画を作ったって意味はない。では、前2作以上に過激なアクション映画を作ったならどうか。でも、それではコメディにしかならない。では、どうするのか。そこで、豊田監督の個性が発揮されることになる。
過激な . . . 本文を読む
これはすごい。空前絶後の映画である。もちろん、内容が、ではない。その興行形態が、である。なんと、なんと、これは鷹の爪団の「おごり」で見せてもらえるのだ。入場料はタダ、なのである。そんなアホな話、聞いたことがない。映画館に行って、「みせてください」というと、「はーい」とチケットをくれる。TOHOシネマズで、いつでも、誰でも、タダで映画が見れるのだ。凄すぎる。
ということで、実は早速、初日(4月 . . . 本文を読む
認知症の老人を描く映画が最近多い。この映画はそんなひとつなのだが、これはかなりきつい。あのかっこいい藤竜也が、ここまで惨めな老人を演じる。彼がボケて、紙おむつをして、お漏らしして、うんこをぶちまけて、そんな男をそのまま演じている。だが、それなのに、実は惨めではない。藤竜也が演じるとそれでもかっこいいのか。もちろん、そうなのだが、それって何なのか。
年をとるのは必然だ。それによって、今まで出来 . . . 本文を読む
4人の女の子たちの17歳を、高校2年の1年間を、描く。1年前から、1年後も視野に入れた大きな意味での高校時代の3年間を描くのだ。先に見た映画『大人ドロップ』が高校3年の夏というピンポイントだったのと同じようにこれも1年というスパンで「あの頃」、人生で一番輝く時代、に迫る小説だ。今、この時期こういうタイプの映画や、小説を読むことで、これから始まる3年間への心の準備をするのは、とてもいい。今年は1年 . . . 本文を読む
この小説を読みながら、今までの山崎ナオコーラの小説とまるで感触が違うことに戸惑う。恋愛小説ではなく、家族の話であり、男同士の友情の話(ということにしておく)だからかもしれないけど。でも、なんだか不思議な感触だ。男同士の間に流れる恋愛のような感情が描かれる。こんなにも深いつながりは彼らが家族として(双子の兄弟のように生きてきた)育ったことも影響しているだろうが、それだけではない。とても屈折している . . . 本文を読む
今週は、芝居はこの作品1本しか見れなくなってしまった。土日が仕事で動けなくなったのもあるけど、(でも、そんなことはよくあることだ)凄い頭痛で芝居を見ている場合ではなくなったことが一番の原因だ。ここ数ヶ月の疲れが一気に出たのかもしれない。いくら寝ても治まらないし、散々だった。ということで、これは貴重な1本なのだが、芝居のほうは残念な出来だった。
それは前作の『Paradise Lost』を見たと . . . 本文を読む
実は『大人ドロップ』の前日にこの映画を見ていたのだが、あまりにあの映画が良すぎて、この映画を後回しにしてしまっている。しかも、どちらも、池松壮亮が主演しているのだが、この2作品が指し示すものが、青春の「光と影」みたいな感じで、別に2部作ではないだが、僕の中では池松2部作になっていて、本当はこの2作品を並行して論じたい気分なのだ。池松くんは表面的にはまるで感触の違うこれらの作品に於いてどちらの映画 . . . 本文を読む
なんだかどうしようもなくやるせない気分にさせられる青春小説を、3作品連続で読んでしまった。仕方ないから、まとめて全部について書いてしまおう。
まず、『世界でいちばん美しい』から。『船に乗れ!』の藤谷治の渾身の一作のはずなのだが、なんだかもどかしい。まるで、乗れない。読みながら、こんなにも、ページをめくるスピードが落ちた小説は近年ない。途中でやめたろか、と何度も思った。だが、それはつまらないと . . . 本文を読む
こういう風にしか生きれない人もいる。いじめられて逃げる。その逃げるシーンが延々と続き、その途中で主人公はどんどん成長していく。この冒頭のエピソードが秀逸だ。成長、というのは、子供のシーンから、小学生くらいになり、やがて高校生のなるまでを、ワンシーンで見せていくことを言っている。一瞬で彼のこれまでの人生を象徴的に見せきる。秀逸なエピソードである。この映画の世界にそれだけで入り込める。
やがて、 . . . 本文を読む
なんでこんなにも涙が溢れるのだろうか。このたわいもない青春映画がこんなにもキラキラしているのは、ただの甘酸っぱい感傷を描いたからではなく、17,18歳のころのどうしようもない想いを、あの頃のままに描いてしまったからだ。今考えると恥ずかしくて顔を赤らめてしまうような一生懸命さが、ここには横溢している。あの頃、どうして自分はまだ、こんなにも子どもなのかと、苦しんでいた。早く大人になりたいと心から願う . . . 本文を読む
昨年初めて見せてもらった。今年も同じ時期にウイングで上演される。年に一回の大阪遠征である。京都まではなかなか行き辛いけど、大阪なら大丈夫。ということで、たまたま時間が出来たので、見てきた。これはそのくらいの軽いフットワークで臨むのが望ましい作品だ。
黒川融さんによるオンステージ、一人ショーだ。コント集なのだが、随所に映像も駆使して、とてもバランスのいい「バラエティ番組」になっている。昔のゲバ . . . 本文を読む
今回の925は3話からなるオムニバス。中西さんが信頼する3人の劇作家による書き下ろしを、彼らが推薦した2人×3=6人のキャストと一緒に贈る短編集。テーマはタイトルにもあるように「裏」。それぞれ趣向を凝らした「裏」を見せてくれる。
いずれも軽いタッチのコメディでそれを中西さんがそれぞれのキャストの持ち味を生かして軽快に処理して見せる。30分程度の長さが心地よい。転換もスマートで、よかった。こう . . . 本文を読む
こんなインド映画がとうとう登場したのだ。今までのインド映画の常識を覆す。これではまるでイラン映画ではないか。キアロスタミの『友だちのうちはどこ』を思わせる。マジット・マジティの『赤い金魚と運動靴』のようなユーモアもある。そして何より、ここには、どこにもなかったような新鮮な感動がある。
しかも、それはただ楽しいだけではない。ラストまで見た時、いろんなことを考えさせられる。なんだか複雑な思いにな . . . 本文を読む
真紅組の山本美和子のよるプロデュース公演だ。もちろん作、つかこうへい。演出は諏訪誠。つか芝居に山本美和子さんが16人の男たちを従えて体当たりで挑戦する。
今に時代につかこうへいを演じることは実に無謀だ。熱狂の時代はもう遠く、今、このハイテンションは過去の話だ。この芝居に乗れる観客はもういない。あの頃、唾を飛ばして、汗まみれになって、無茶苦茶な論理を振り回して僕らを感動の渦に巻き込んだつか芝居 . . . 本文を読む
これはとてもおもしろい。作、演出は劇団競泳水着主宰の上野友之さん。彼が20代の女性を主人公にした作品『IN HER TWENTIES』の30代ヴァージョンをライトアイの笠原希さんが大阪で企画した。
10人の女たち(いずれも30代)が、ひとりの女の30代を演じる。特定の「誰か」ではなく、どこにでもいる「あなた」として見せる。彼女たちはひとりの女性の10年間を体現する。順に演じるのではなく、渾然 . . . 本文を読む