平山秀幸監督がこういうタイプの映画を手掛けるなんて、なんだか意外だ。ミステリータッチも加味した人間ドラマ。1993年が舞台になる。昨日まで読んできた小説が95年が舞台だったので、なんだか不思議なつながりを感じる。まぁ、たまたまでしかないけど。
エヴェレストを目指し消息を絶った登山家(阿部寛)を追って、ネパールまでやってくるカメラマン(岡田准一)。ふたりが前人未到の困難なルートから . . . 本文を読む
8話からなる短編集。共通するテーマは死者との対話。いろんなパターンでここにはもういない人たちと向き合う。この何ともいい難い想いが、胸に沁みてくる。どのお話も大好きだ。これは池澤夏樹のよさが十二分に発揮された作品集。
死者は、そこにいる。彼らが僕たちに教えてくれるのは、終わってしまったことが悲しいのではなく、自分たちがたどった道のりが、どれだけ愛おしいものだったかを . . . 本文を読む
95年大晦日、渋谷で起きた「ファイヤー通り騒動」(そんなのが実際にあったのか?)をクライマックスにする青春小説。こういう感傷的なお話は嫌いではないけど、難しい。作者が一人で悦に入ってしまう可能性も高い。自分だけで盛り上がり、読み手を置き去りにする。先日見た「シネドライブ」の映画なんてそんな感じのものばかりだった。まぁ、これはプロの小説家の作品なので、そんなことはないけど、かなり危な . . . 本文を読む
久々にシネ・ドライブを見ることにした。インディペンデントの映画を見るのは勇気がいる。稚拙であったり、独りよがりであったり、要するに時間とお金の無駄になる公算が大きいからだ。しかも、こういう無審査の自主映画から、面白い作品を自分の嗅覚で探し出すのは困難だ。でも、たまにそこで、凄いものに出会えれると、なんだかうれしい。自分が発見し、発掘することが出来る。昔、ぴあのフィルムフェスティバル . . . 本文を読む
このタイトルが読めなかった。チラシの独特の字体と配置。「や」と「お」の文字が小さいから、「しんじゃう」は「心情」なのか、と思った。最近、自分が迂闊なのだろうけど、ちゃんとタイトルが読めないことがよくある。先日は和歌山大学演劇部の『プレジエンド』を「プレジデント」だと、ずっと思い込んでいたし。今回も、芝居を見ながら、「死んじゃうお部屋」なんだ、と気づくという体たらく。でも、これは「死 . . . 本文を読む
昨年、韓国映画史上最大のヒットとなった作品らしい。九百万人を動員した、と(確か)チラシに書いてあったけど。(しかも、これは万人が見れるファミリー向け映画ではなく、過激な描写も見られる「R―15」作品である。)
ラストのどんでん返しは、確かに爽快だ。だが、そこまでの展開はもたもたして、イライラさせられる。だいたい主人公のふたりがふたりともなんだか間抜けにしか見えない . . . 本文を読む
若手劇団を積極的に応援しようというウイングフィールドの姿勢を標榜する「若劇」企画による作品。これは清教学園高校演劇部OB,OGを中心にして旗揚げされた集団のデビュー作。先週の和歌山大学演劇部に続いて、今回も、始めて見る集団の芝居との対面にドキドキしながら、劇場に向かう。
実に拙い。内容も表現レベルも標準的な高校演劇のレベルでしかない。しかも、コンクールなら芝居は6 . . . 本文を読む
実験的な作品を提示する「エクスペリメンタル・パフォーマンス」シリーズの新作。毎年3・10に上演している『Home』の流れを汲むが、今回は直接震災に触れてはいない。だが、もちろん、この時期に上演するのが目的であり、パンフには「東日本大震災後に被災地から遠く離れた場所で暮らす人たちが行き交う都市のある駅を中心にした物語」とある。
13人の役者による13の短いほんの一瞬 . . . 本文を読む
毎年、この時期に開催される大阪アジアン映画祭では、ふだんなら見られないようなめずらしい映画が大挙して上映されるのだが、この時期はスケジュールがタイトでなかなか見に行くことが叶わない。しかも、最近では人気プログラムはチケットがなかなか取れない状態で、見れる作品も限られる。
じゃぁ、もっと見やすいように、例えば「福岡アジアフォーカス」のように、もっと広いキャパの劇場を抑えたらいいのにと思うけど、なか . . . 本文を読む
1975年台北。17歳の少年が主人公だ。祖父が殺された。その犯人を探す。そこから始める自らの、そして家族のルーツ探し。84年、彼が中国に行き、祖父が何者だったのかを知るまでの10年に及ぶドラマだ。戦後から30年。さらに秋生の17から27歳までの10年。彼とともに、台湾のたどった道を描く。
2年間の軍隊生活で、恋人を失うという中心に描かれるお話が、あれじゃぁ、まるで『恋恋風塵』じゃないか、と思った . . . 本文を読む
75年の作品である。今からもう41年前の映画だ。実はこれをリアルタイムで見ている。忘れもしない。高校2年の夏だ。今は亡き京橋東映で、封切で見た。当時は日本映画は基本なんでも2本立で、この2時間半の大作ですら2本立上映された。しかも、同時上映が『ずうとるび、前進、前進、また前進』とかなんとかいうアイドルの中編映画で、あきれる。
なぜ、これを見たのかというと、友だちの家が銭湯をしていて、(当時はお風 . . . 本文を読む
これは確か「未体験ゾーンの映画たち」で昨年上映された作品ではないか。そこでは、毎年未公開のさまざまなタイプの映画が大挙して上映されるのだが、(今年も50本もの映画が上映されている)なかなか見ようとは思えない。でも、何本かは「これは、」と思う作品もラインナップに紛れていて、うれしい。これもたぶん、そんな1本なのだ。
キム・ギドク製作、脚本である。彼の助監督からどんど . . . 本文を読む
16歳の少女が復讐のために立ち上がる。彼女のモットーは「やられたら、やり返す」どんな些細なことでも、必ず復讐でけりをつけなくてはおさまらない、という物騒な女なのだ。そんな彼女が夜道で暴漢に会い、ナイフで切りつけられる。傷は長さ10センチ、深さ2センチ。かなりのものだ。約1週間入院した。
退院してふつうに学校生活へ戻るのだが、やられた以上、同じか、そ . . . 本文を読む
角川映画創立40周年記念作品、ということだ。角川映画史上最大のヒットとなった薬師丸ひろ子主演、相米慎二監督作品『セーラー服と機関銃』(81)のリメイクではなく、なんとこれは続編なのである。そんな大それた企画を引き受けた前田弘二監督は、実に勇気がある。主役を演じた橋本環奈も凄い。あの時代一世を風靡したスーパーアイドル薬師丸ひろ子に挑むのだ。大胆にも程がある。
そういうことで、期待に . . . 本文を読む
今年の大阪アジアン映画祭のオープニングプログラム。昨年台湾で大ヒットしたドキュメンタリー映画だ。一昨年の『KANO』と同じように、これも7割が日本語の映画なのに、しかも、こんなにも地味な内容の映画なのに、台湾で受け入れられて評判になり、記録的ヒットとなる。日本ではあり得ない話だ。しかも、若い層に受け入れられたらしい。なんだか、不思議だ。
台湾人にとって日本人とは何 . . . 本文を読む