ようやく映画版が公開された。同時に書かれた中村航の小説版は先行して出版されていて読んでいるし、このブログにも書いている。あの小説は楽しみにして読んだけど中村航なのに、あまり感心しなかった。それだけに映画はどんな切り口からあの話を作り変えたのか、気になる。さて映画は? こちらは高橋泉の脚本で、草野翔吾監督という最高の布陣で贈る。だけど、なのに、やはりあまり感心しない出来だった。草野監督の前作『アイミ . . . 本文を読む
時代劇チャンネル製作の配信向けの安っぽい時代劇映画、だと思っていたが、これはかなりの大作映画であった。二部作公開というのもよくある製作費節減のための2本撮りだと高を括っていたが必ずしもそうではない。これはちゃんとした映画である。もちろん劇場で見る価値ある作品でもある。こんなタイプの時代劇映画は滅多にない。しかもこんなにも静かな娯楽映画は珍しい。暗くて静謐。だけど素晴らしい緊張感が持続する。役者の動 . . . 本文を読む
こんなストレートなタイトルを付けられた映画をスルーするわけにはいかないだろう。しかも監督はアルーノ・デプレシャンである。さらにはたくさんの映画を引用したというシネマ・エッセイというスタイルのドキュメンタリータッチの作品で87分という短さ。どんな映画なのか気になるではないか。映画は全11章からなる。ひとつひとつのエピソードは短い。ひとりの少年の映画との出会いから成長を通して映画と関わり大人になるドラ . . . 本文を読む
句集である。川上弘美の2冊目となる句集らしい。彼女は30年前から俳句を作り始めた。作家活動より早い。17音の世界は身近で、簡単に作ることもできるけど、それだけに難しい。2010年から23年までの220句が収められている。巻末にはこの30年のベストワン作品30句とその解説。(自分による)さらには読者へのエッセイまで。だけど、このエッセイが一番面白いって、何?「俳句を、始めてみませんか」というお誘いで . . . 本文を読む
たった7日間の旅。大好きだったおばあちゃんが亡くなって3か月。僕と従兄弟の2人でワルシャワに行く。おばあちゃんが住んでた家を見に行くために。自分たちの祖国であるポーランドに初めて行く旅。ユダヤ人である彼らの家族は虐殺から逃れるためにここからアメリカに渡って来た。ふたりは移民3世である。アメリカで生まれたアメリカ人だけど、ポーランド人でもある。ツアーに参加して5日間を過ごす。メンバーは彼らふたりを含 . . . 本文を読む
宮崎大祐監督2020年作品。大阪アジアン映画祭のコンペにも出品された作品らしい。僕は彼の映画を今回初めて見た。今まであまり見たことのないタイプの映画だ。これもまた分類不可の映画だろう。Amazonはホラーに分類していたけど、これはさすがにホラーとは言えまい。大阪を舞台にしたモノクロ映画。鶴橋コリアンタウンで暮らす在日朝鮮人の女性が主人公。彼女の日常が淡々と描かれていく。なかなか何を描くことが目的で . . . 本文を読む
ピッタリの同世代である主人公が自分の生きた時代を振り返り、再体験するタイムトラベルもの。これにはハマるわぁ。令和5年から1973年に。63歳から50年前の中2に。65歳になった僕にすれば懐かしいばかりの時間が描かれていく。価値観の違いが生むコメディ展開と齟齬に悩む日々のスケッチがリアルに体感できる。北園雅美63歳。クラスメイトのイケメン男子天ヶ瀬もまた同じ時代からここに来ている。この時代から人生を . . . 本文を読む
昨年公開された映画。A24作品。ジェシー・アイゼンバーグ監督のデビュー作。アメリカ映画にだって、こんな作品があるのだなと感心した。もちろんA24だから有り得た作品であろう。普通なら商業映画としてこの内容はない。ジュリアン・ムーアが主演している。彼女と高校生の息子の話である。穏やかな家族。母はDV被害者のシェルターを運営する。息子は配信ライブをして2万人のフォロアーが自慢な高校生ミュージシャン。そん . . . 本文を読む
こんなタイトルでこの話。これはかなり厳しそうと思っていたが、脚本坂元裕二、監督は塚原あゆ子だから、もしかしたら、とも思う。きっと甘いだけの恋愛映画ではない、はず。結果、これは『ラストマイル』のような映画から今回の作品に通じる『私の好きだった結婚』までさまざまなタイプの映画で結果を出してきた彼女が本領発揮した傑作に仕上がっていた。そして、これは岩井俊二の『love letter』を思わせる作品でもあ . . . 本文を読む
渡辺一貴監督が韓国映画『テロ・ライブ』を原案にして挑む社会派アクション映画。阿部寛の久々の主演作。大作かと思ったらなんと98分という今時珍しいコンパクトな上映時間。ほぼリアルタイムの緊迫したテロライブに挑む、はず。ラスト6分の衝撃とか、犯人は錦戸亮とか、事前に知っていたらよくないはずの情報を流出させたり、それを宣伝にしたりと、普通なら掟破りを敢えてする。これは明らかに確信犯である。細部まで手の込ん . . . 本文を読む
またまた小路幸也の新作である。そろそろ『東京バンドワゴン』の新作も刊行されるんじゃないかな。たぶん春には出るだろう。さて、この『花咲小路』シリーズ最新作はミステリ仕立て。たい焼き屋の禄朗とその彼女(婚約者)であるユイちゃんがちょっとした謎に挑む。相も変わらずたわいもないお話だけど、読んでいて楽しいのはお話がどうこうということではなく、このコミュニティの心地よさである。個人商店が軒を並べる今の時代に . . . 本文を読む
この小さな本の小さなお話が心に沁みる。立春から始まり大寒まで。新幹線の車内で読み始めた。24のお話(24節気)のひとつひとつを噛み締めながら読み進めると気がつけば1年が過ぎているのだろう。現実と幻想のあわいをたゆたう。最初の2篇が好き。動物園好きのふたり。往復書簡を思わせるメールのやり取り。買って10年過ぎたマンション。たぶんパッキンが悪くなり水がポタポタ落ちる水道。この『立春』、『雨水』から始ま . . . 本文を読む
これは一体なんだったのだろうか? まさかの空前絶後の不思議映画。オチもなくあり得ないエピソードがサラリと連鎖していく。何? と思ったらもう次のお話に移行している。監督はこれが長編デビューとなるイ・オクソプ。2018年の大阪アジアン映画祭グランプリ作品。2022年には日本公開されている。ようやくNetflixでも配信がスタートした。このバカバカしい話が、あまりにさりげなく描かれていくからなぜか怖くて . . . 本文を読む
初めて読む作家である。生理痛が酷くて眠れない、とかいうことを延々と書くところから始まる。だから同棲していた男のところから家出して、自殺するために大阪に行く。えっ?それって何。買ってきたレコード盤(『暗い日曜日』)に入っていたメモ。大阪にある優しい死に方を教えてくれる喫茶店、「待合室」。冗談みたいだが、沙保はそこに行く。そこで出会った不思議な初老の女性、律に導かれて一緒に暮らすことになる。偶然この作 . . . 本文を読む
生まれて初めてネット配信小説(?)を読んだ。知り合いから頼まれたからだが、これがかなり面白くて一気に読んでしまった。携帯小説って昔流行ったけど(全く読んだことがなかったが)これってそんな感じのものなんだろうか。まぁそんなことはどうでもいい。面白いから読む。それだけ。現在公開されている15話までを読んだ。当然この先まだまだお話は続くだろうが、とりあえず、ここまでの感想を書こう。まず、問題点から。世界 . . . 本文を読む