○ミュージック・ソサエティ四重奏団、プーネット(Va)(NGS/BS)1925/6,12
貧弱な録音だが演奏は個性的で、恐らく本来の意図に忠実なものだ。ミュージック・ソサエティ弦楽四重奏団はチェリストとしてバルビローリが加わっておりこのSP盤も協会盤LPで再版された。録音方式以前に、使われた原盤自体が悪いらしく、目下協会絡みの復刻CDにも収録されていない。丁寧なリマスタリングが好評のNGS復刻PJからの配信が待たれるところである。バルビは後年の私的録音を聴くにつけ決して下手ではなかったと思われるが(DUTTONでも小品のチェロ演奏が復刻されている)RVWの曲ではチェロは通奏低音的な役割を与えられるパターンが多く、この曲でも目立たない。そういう興味で聴くには意味が無いかもしれない。
RVWのヴィオラ偏愛ぶりは同じくヴィオラのための曲を書いた同時代の英国作曲家の中でも飛びぬけており、この曲でも五音音階の鄙びたメロディを冒頭よりソロで弾くヴィオラ(これをファーストヴァイオリンが追ってソロ弾きするのがパターン)、更にヴィオラ二台という編成自体偏愛振りを裏付けている。
ただここでは古典志向の強かったRVWの音色趣味のみならず、意識的なものであったとも言える。
同曲は12年に作曲され初演はその二年後であったが、出版は実に21年まで待たなければならなかった。当時アマチュアヴァイオリニストで室内楽演奏会の主催者として知られた実業家W.W.コベットの依属による作品だったのだ。コベットが始めた英国室内楽作曲賞の規定に象徴的に示されている・・・変奏曲の初期形態である「エリザベス朝時代のファンシィもしくはファンタジーの形式」に倣い、「一楽章制か、連続して演奏される四部からなる作品」でなければならない・・・RVWはその「持論」に忠実に、古い音楽を意識して作曲したのである。だから妙に軽々しく、短く、構造的に簡潔で(民謡メロディ以外は)癖のないものに仕上がっている。個人的に番号付きカルテットにより惹かれるのは、この曲がどうもそう「仕立てられた」ものであることが逆にRVWの個性とのバランス感覚を崩してしまっているように思うからだ。もっとも、RVWの室内楽で最も人気がある作品であることは言うまでも無い。別記したと思うが当時英国留学中の某氏もロンドン四重奏団他の演奏を聴いて強く印象付けられたと記している。
この演奏では非常に速いテンポがとられている。あっという間だ。この演奏時間?抜粋か?と思ったのだが、実際には四楽章が完全にアタッカで繋げられており、現在新しい録音として聴かれる演奏が一応憂いをもたせて少しの間を設けているのに比べ、「単一楽章感」が強い。独特であるが、前記の(ライナーからの抜粋でございますが)とおり依属者がそう指示しているのであるから、こちらのほうが正しいのだ。テンポの速い演奏はある程度腕に覚えのある室内楽団にとっては楽なものだ。ヴァイオリニストも単音で表現するより細かい音符を左手の小手先で廻していく音楽のほうが楽なものである。ただ、小手先とはいえここではまさに前時代的なフィンガリングで憂いある表現がどうにも懐かしい。安定感もあり一切不安感がない。鄙びた音になったり不安定に聴こえたりする箇所も恐らく録音のせいで、元々はきちんとなっていると思う。アンサンブルも緊密で、ソロが動き回る感の強い曲ではあるが一方変則リズムを伴うメカニカルなパズル構造が重要で、ボロディン2番のようになかなか難しい部分もあるのだが、ロマンティックでまだ若いアンサンブルにもかかわらず、全くばらけず集中力が保たれている。変な仰々しさがなくストレートでよい。当時まだ18歳のプーネットが第二ヴィオラで参加していることも特筆すべき。○。
※2009-05-11 21:21:37の記事です
貧弱な録音だが演奏は個性的で、恐らく本来の意図に忠実なものだ。ミュージック・ソサエティ弦楽四重奏団はチェリストとしてバルビローリが加わっておりこのSP盤も協会盤LPで再版された。録音方式以前に、使われた原盤自体が悪いらしく、目下協会絡みの復刻CDにも収録されていない。丁寧なリマスタリングが好評のNGS復刻PJからの配信が待たれるところである。バルビは後年の私的録音を聴くにつけ決して下手ではなかったと思われるが(DUTTONでも小品のチェロ演奏が復刻されている)RVWの曲ではチェロは通奏低音的な役割を与えられるパターンが多く、この曲でも目立たない。そういう興味で聴くには意味が無いかもしれない。
RVWのヴィオラ偏愛ぶりは同じくヴィオラのための曲を書いた同時代の英国作曲家の中でも飛びぬけており、この曲でも五音音階の鄙びたメロディを冒頭よりソロで弾くヴィオラ(これをファーストヴァイオリンが追ってソロ弾きするのがパターン)、更にヴィオラ二台という編成自体偏愛振りを裏付けている。
ただここでは古典志向の強かったRVWの音色趣味のみならず、意識的なものであったとも言える。
同曲は12年に作曲され初演はその二年後であったが、出版は実に21年まで待たなければならなかった。当時アマチュアヴァイオリニストで室内楽演奏会の主催者として知られた実業家W.W.コベットの依属による作品だったのだ。コベットが始めた英国室内楽作曲賞の規定に象徴的に示されている・・・変奏曲の初期形態である「エリザベス朝時代のファンシィもしくはファンタジーの形式」に倣い、「一楽章制か、連続して演奏される四部からなる作品」でなければならない・・・RVWはその「持論」に忠実に、古い音楽を意識して作曲したのである。だから妙に軽々しく、短く、構造的に簡潔で(民謡メロディ以外は)癖のないものに仕上がっている。個人的に番号付きカルテットにより惹かれるのは、この曲がどうもそう「仕立てられた」ものであることが逆にRVWの個性とのバランス感覚を崩してしまっているように思うからだ。もっとも、RVWの室内楽で最も人気がある作品であることは言うまでも無い。別記したと思うが当時英国留学中の某氏もロンドン四重奏団他の演奏を聴いて強く印象付けられたと記している。
この演奏では非常に速いテンポがとられている。あっという間だ。この演奏時間?抜粋か?と思ったのだが、実際には四楽章が完全にアタッカで繋げられており、現在新しい録音として聴かれる演奏が一応憂いをもたせて少しの間を設けているのに比べ、「単一楽章感」が強い。独特であるが、前記の(ライナーからの抜粋でございますが)とおり依属者がそう指示しているのであるから、こちらのほうが正しいのだ。テンポの速い演奏はある程度腕に覚えのある室内楽団にとっては楽なものだ。ヴァイオリニストも単音で表現するより細かい音符を左手の小手先で廻していく音楽のほうが楽なものである。ただ、小手先とはいえここではまさに前時代的なフィンガリングで憂いある表現がどうにも懐かしい。安定感もあり一切不安感がない。鄙びた音になったり不安定に聴こえたりする箇所も恐らく録音のせいで、元々はきちんとなっていると思う。アンサンブルも緊密で、ソロが動き回る感の強い曲ではあるが一方変則リズムを伴うメカニカルなパズル構造が重要で、ボロディン2番のようになかなか難しい部分もあるのだが、ロマンティックでまだ若いアンサンブルにもかかわらず、全くばらけず集中力が保たれている。変な仰々しさがなくストレートでよい。当時まだ18歳のプーネットが第二ヴィオラで参加していることも特筆すべき。○。
※2009-05-11 21:21:37の記事です