湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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☆ヴォーン・ウィリアムズ:弦楽四重奏のためのスケルツォ 他(遺作)

2016年11月28日 | Weblog
ナッシュ・アンサンブル(HYPERION)CD

先日レコード屋でみつけたCDの背にはこうあった。「ヴォーガン・ウィリアムズ」。知っている者には噴飯モノだが、一般的な認知度などこんなものである。「RVW」などという省略形も某三浦氏の著作がなければこれほど浸透しなかったろう(「これほど」とはあくまでクラヲタ内での話)。だが、この作曲家が20世紀前半のイギリスを代表する作曲家であることは疑いのない事実である。だから当然英国では崇拝され、演奏され続けてきているわけであり、そこから有名レーヴェルを通じて流れてきた音盤を聴いて悦に入る私のようなヲタが日本にも少なからずいるわけである。この盤はそんな英国近代音楽ヲタにとって寝耳に水のお宝であった。2000年に作曲家未亡人(まだご健在なのである(後補:お亡くなりになりました)・・・但しかなり年若い後妻ではあったのだが)が封印されてきた遺作群に出版と演奏の許可を出したというので、早速ロンドン交響曲の初版が演奏されCD化したわけだが、この2枚組はその中にあった主に習作期の室内楽をはじめて集成録音したものである。だが、やはり習作期は習作期、とくに2枚目に収録された曲は擬古典的(もしくは教会音楽的)なずいぶんと大昔の情緒を漂わせるものであったり(RVWらしいといえばらしいのだが)、民謡風旋律の用法においてはドヴォルザークなどの影響も明確に感じられるし、ブルッフに師事したせいであろうドイツの前代室内楽に接近している所も大きく、まあ「そういうもの」としての出来は素晴らしく緊密な書法からも完成度が高いともいえようが、はっきり言って、われわれが20世紀の作曲家RVWに求める「もの」は、あまりないと言っていい。

ラヴェル師事(1908)後の、フランス近代音楽(とくにドビュッシー)への著しい傾倒、そして咀嚼吸収という経過をへるまでの状況を知る上では確かに興味深い。その時期の代表作とされる合唱曲「未知の世界へ」(1907)に聞かれるような明瞭なロマン性はこれら作品群に通底しているが、ここではまさに古い世界から未知の世界への到達をとげる道程が示されている。連作歌曲集「ウェンロックの崖にて」および番号付きの最初の弦楽四重奏曲(1909)は最初の代表作とされる作品で、ラヴェル師事直後のものだが、これらの示す異様な完成度の高さの影には、この2盤に収録された習作群があったわけで、聴くにつけRVWの仕事場で未完成の品々を覗き見ているような感覚をおぼえる。この盤の収録曲を作曲年順に並べて、「あ、変わった」と最初に感じさせるのが、2枚目に収録のこの「スケルツォ」(1904)だ。これはラヴェル師事前に既に新しいものへの興味を示していたことを裏付ける作品であろう。国民楽派ふうの仰々しい開始部からしばらくは手だれのロマン派作曲家の工芸品的作品を見るような想いだが、和声(転調)にちょっと新鮮な味が混ざりだし、それがたんにドヴォルザークの「アメリカ」の世界に止まらないものであることを、調性感がいささか曖昧になる中間部、とくにフラジオ4本による音の交錯と、その後に雄弁な主題が戻ったあとの、半音階的な不思議な下降音形に感じさせる。結局は雄弁な音楽が戻って国民楽派ふうに終わり、ドイツ臭は依然抜けないものの、それなりに面白く聞ける曲だ。演奏は立派。技術的に不安のない団体。この次に聴くべきは1枚目の弦楽五重奏による「夜想曲とスケルツォ」(1906)である。

夜想曲は「スケルツォ」とはかなり異なった作風で驚かされる。リヒャルトやシェーンベルク初期の「感じ」も感じるが、それらよりもやっぱり一番影響を感じるのはディーリアスの薄明の音楽だろう。かなり半音階的な作品であり、旋律に、より明瞭な音楽を志向する萌芽はみえるものの、この曲はディーリアンだったRVWを象徴する面白い(かなり面白い)作品といっていいだろう。スケルツォはディーリアスを離れ清新なフランス風作品を意識しているのは間違い無い。ラヴェル前夜で到達できた最後の領域だろう。ホルストの「惑星」がふと頭をよぎったが、あながち外れてはいまい。次のフルートとピアノのための「バレエ組曲」(1913~1924?)はドビュッシーのRVW式翻案といえようが、ちょっとどっちつかず。楽器の選択を誤ったかも。フルートによる民謡表現がピアノのモダンな響きとアンマッチな感じもする。まあ、このあたりになるともうRVWは完成期を迎えているわけで、「習作」というより「未発表曲」といってもいいはずなのだが、はずなのだが、、、この盤には、「RVW工房の床に転がったままの作品」が入っている。つまり、それまでの作品だったのだな、というところ。ヴァイオリンとピアノのための「ロマンスとパストラレ」(1914)などはじつは近年既に出版されており、私も持っている。ヴィオラとピアノのための「ロマンス」(1914)も出ていたのではないか??言わずもがなのターティス献呈作品である。これら、あまり名作とは言い難い。2枚目の最後に入っている弦楽四重奏による「ウェールズの讃美歌調による三つの前奏曲」(1940/41)は後期RVWらしい曲で、地味だが、他の曲と対比させて聞くと面白い。,
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