湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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☆ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第5番

2017年07月22日 | ヴォーン・ウィリアムズ
○ヒコックス指揮LSO(chandos)1997/10・CD

5番はRVWの代表作とされることもあるが、比較される3番田園交響曲にくらべ優っているのはよく鳴る管弦楽くらいのもので、曲としてはかなりまとめにかかったふうで凡庸な構成のものである。田園交響曲はソロを多用し殆ど弦楽合奏のような薄い響きに複調性を取り入れて神秘的な趣を出し、管弦楽曲としてはいささか淋しいが独特の世界を構築していたのに対し、こちらは意識的に派手な音楽を志向し意欲的な書法が全面に立ち、シベリウスを意識しながらそれとは別の方向の作曲的探求を行っている。横の流れの美しさこそ特長であったのが4番以来、構造的なものをふくむ縦の要素を重視し、ポリリズムの導入など抽象的な表現において世界を拡げて、それが聴くものに田園交響曲よりもスケールが大きくダイナミックで物語性に富んだ印象をあたえる。静かな終わり方も気が利いていて、だからこそらしくないというか、技巧に走りはじめた晩年RVWを象徴しているように思えなくもない。5番が好きならきっともっと端的に娯楽性を突き詰めた8番も楽しめるだろう。ヒコックス盤はボールトなど往年の名盤とあまり印象に違いがなく、正統ではあるのだが、敢えてこれを買う意味はあったのか、と途中で飽きてしまった。クーセヴィッキーから自作自演、ロジンスキなどと怪物が録音を残した曲でもあり、スコアの完成度も過去作より上がっていることから逆にそのままでは演奏の特長を出し辛くなっていることも想像にかたくないが、ボールト的な安定感、オケのしっくり度にプラス録音の新しさを求めるなら、これもよしだろう。

※2013/6/5の記事です
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