シンクレア指揮ノーザン・シンフォニア(NAXOS)CD
達者な演奏だが軽い。おそらく協会決定版を使用しているのだろう、整理された感じのちょっと音の間に隙間がありすぎる感は否めない。スピードがあり、1楽章は冒頭からつかまれる。宗教的郷愁をたびたびうたったアイヴズのこれもそういった田舎風の小交響曲であり、あからさまな民謡が矢継ぎ早に現れるが、いずれにも拘泥せずさっさと進んでいく。奇矯な絡み合い・不協和な響きはただの民族楽派の音楽に落とさず、またシンクレアはアイヴズに詳しい手腕を発揮して、一見奇矯なものにも、一見不協和なものにも規則性を見出してそつなく芯をくった演奏をしている。即物的演奏で1楽章はあまりにすぐ終わるし、2楽章も中庸の響きをもってまたスピードを保ってさっさと終わらせるが、要となる感傷的な3楽章もまたその調子なので余韻がない。整理しすぎてアイヴズの理性的でない「粗」が目立つようにも思う。チェロソロのアーメン終止と調子はずれの鐘が大きなディクレッシェンドの末を飾って美しい曲なのに、そこはほんとにピアニッシモに消え入るようだ。いわゆる室内楽団ふうの無機質な運動でないから聞きやすいが、これをきいてどこにマーラーは惹かれたのかと思う人もいるかもしれない。アイヴズのもつ毒はもともとこの曲は薄いがさらに薄く、聴きやすいと思う人もいるかもしれない。