ふと、思い出した。
10年前の今ごろ、僕は信州にいた。
信州の安曇野の辺りにいた。
当時、ちょっと精神的にダウンしてしまい、仕事を休職した。
家族と離れ、クルマで国内を一人で旅した。
山陰から日本海に沿って一路北上し続け、北陸から信州に入った。
信州は、高校の修学旅行以来だった。
その時は志賀高原でのスキー合宿だったので、安曇野へ訪れたのは、初めてだった。
なだらかな高原がどこまでも広がり、その向こうには日本アルプスの山々が
天を刺していた。
穂高岳、槍ケ岳、乗鞍岳・・・中国地方のなだらかで鈍角な山々とは違い、
急峻で威容を誇る鋭角な山々は、いつまで見ていても飽きなかった。
山頂付近で白い雲が湧き立つ。
見方によっては、山が白い煙を吹き出しているようにも見える。
しかし、それらは当然、活火山ではないので、噴火ではない。
日本海から流れ込んだ空気が山々にぶつかり、次々と雲が生まれているのだ。
雲が生まれる光景を肉眼で見たのは、おそらくこの時が初めてだった。
風は、絶えず流れているんだな。
雲は、絶えず生まれているんだな。
そうか。
すべてのものは、絶えず動き続けているんだ。
同じものは、何ひとつないんだ。
変わらぬものは、何ひとつないんだ。
僕はその光景を安曇野の高原にクルマを停めて、いつまでも眺めていた。
牧歌的な景色の中で、いつまでも眺めていた。
じっと、じっと、動きを止めて。
10年前の今ごろ、僕は信州にいた。
信州の安曇野の辺りにいた。
当時、ちょっと精神的にダウンしてしまい、仕事を休職した。
家族と離れ、クルマで国内を一人で旅した。
山陰から日本海に沿って一路北上し続け、北陸から信州に入った。
信州は、高校の修学旅行以来だった。
その時は志賀高原でのスキー合宿だったので、安曇野へ訪れたのは、初めてだった。
なだらかな高原がどこまでも広がり、その向こうには日本アルプスの山々が
天を刺していた。
穂高岳、槍ケ岳、乗鞍岳・・・中国地方のなだらかで鈍角な山々とは違い、
急峻で威容を誇る鋭角な山々は、いつまで見ていても飽きなかった。
山頂付近で白い雲が湧き立つ。
見方によっては、山が白い煙を吹き出しているようにも見える。
しかし、それらは当然、活火山ではないので、噴火ではない。
日本海から流れ込んだ空気が山々にぶつかり、次々と雲が生まれているのだ。
雲が生まれる光景を肉眼で見たのは、おそらくこの時が初めてだった。
風は、絶えず流れているんだな。
雲は、絶えず生まれているんだな。
そうか。
すべてのものは、絶えず動き続けているんだ。
同じものは、何ひとつないんだ。
変わらぬものは、何ひとつないんだ。
僕はその光景を安曇野の高原にクルマを停めて、いつまでも眺めていた。
牧歌的な景色の中で、いつまでも眺めていた。
じっと、じっと、動きを止めて。