突然のシリーズ再開(爆)
・・・といっても、また明日から普通の日記にもどる公算大ですが(^_^;)
まぁ、これからも散発的にこのシリーズを書いていこうかなと思います。
おヒマならお付き合いくださいませ m(_ _)m
この小説は広島の小さな町を舞台に綴られています。
その町は架空の町なんだけど、モデルになった町は実際に広島市内にあるんです。
その町って、昔から印象深い町だったんですよ。
20歳前後の頃、僕は広島市内に住んでいたんだけど、このモデルになった町と
その周辺の景色に、なぜかものすごく惹かれるものがあって。
都心の近く・・・というよりも、ほとんど広島の中心部で、数十メートル先の
幹線道路には繁華街が広がり、車や人や路面電車が終日往来しているのに、
ちょっとだけ裏に入ったこの町は、それがウソのように静かな空気が漂って
いるんですね。
で、その町の西側に流れているのが、天満川という川で。
ご存知の方も多いと思いますが、広島という町はデルタ地帯に発展した街で、
市内には幾筋もの川が流れています。
平和記念公園を挟んで流れる太田川(通称・本川)や元安川という川は
ご存知の方も多いかと思いますが、それらに比べて天満川は、なんだか
地味なイメージがあって・・・。
上述した2つの川の次に都心に近く、繁華街にも近いのに、なぜか不思議な
静寂さを漂わせている・・・。
20歳頃の僕は、天満川の河岸沿いを歩くたびに、そんな理由の分からない
「何か」を天満川やその周囲の街並みから感じ取っていたんです。
それから約20年の時間が過ぎて、広島で大きな出来事が起こりました。
広島市民球場の廃止です。
それは広島カープファンはもとより、広島市民のみならず、広島県民にとって
様々な思いが交錯する、感慨深い出来事でした。
旧広島市民球場の最後の公式戦を、僕はテレビで観戦しました。
その時、ふと、頭の中に閃いたんです。
都心のド真ん中に鎮座していた市民球場が無くなる。
都心に広大な更地が生まれる。
その一方で、郊外に新しいスタジアムとそれにともなった新しい街が建設される。
広島の街が、今、大きく変わろうとしている。
だけど、その旧市民球場から至近の天満川とあの町は、昔と変わらぬような
同じ空気が流れている。
・・・これは、小説にできる、と。
思い立って執筆に入ると、あとはいつもの通りのような感じで、スラスラと
物語が浮かんでくる。
僕は頭の中に浮かんだイメージや情景をあらすじに沿って綴っていきました。
電子書籍にアップロードして発表したのは、これが4作目だったと思います。
それまでの3作は、僕自身、まだ電子書籍に対して試験的な段階だったので、
万人受けするようなコメディタッチのライトノベルばかりを、意図的に発表
していたんです。
だから、マジメという言葉が適切かどうか分からないけど、重く真摯なテーマを
題材にした小説は、この作品が初めてでしたね。
別の見方をすれば、僕の本当の文章表現力が露呈される作品だとも思いました。
緊張しましたね。
アップロードするボタンをクリックするのが、ちょっと怖かった(笑)
でも、“案ずるより生むが易し”で、いざアップロードすると、購読いただいた
方々から好意的なコメントをたくさんいただきまして。
“りきるさんの作品の中で一番好きです。”というストレートな感想をいただいた
時は、本当に嬉しかった。
他にも“デザイナーの眼なんでしょうか。風景も色彩も奥行きも見えてくる物語。”
というコメントをいただいたこともとても印象に残っています。
実は、僕、よくこういうことを異口同音に指摘されるんですよ。
先日も、とある小説家の先生から「りきるさんの言葉の使い方って、デザイナー
独特のものだとつくづく思う」と言われたり。
こういうことは、執筆した自分自身には、本当に分からないことなんですよね。
自分を客観視できないと、絶対に見えてこない。
人間として、まだまだ精進しなければ、と思いますね(笑)
この小説は昨秋発表して、しばらくは微修正を繰り返しながら電子書籍のサイトで
発表し続けていたんですが、3月11日以降、それをやめて出来るだけ目立たないように
しておいたんです。
理由は、あまりにも東日本大震災とオーバーラップするから。
もちろん、内容は震災とは違いますが、そのあらすじの根底にあるテーマや風景描写が、
あの津波に襲われた東北地方を想起させてしまうような気がして・・・。
しかし先週から、微修正をして更新し、再度電子書籍サイトの上位にアップロードさせました。
自分でもう一度読み直したんですが、逆に今、こう言う時だからこそ、このような作品を
世の中に問いた方がいいんじゃないか?と思ったんです。
僕は小説を書く時、あることを必須として決めていることがあります。
それは、必ず物語の最後に“希望”を添えて終わらせること。
たとえどんなヘビーな状況であっても、脳天気なハッピーエンドでなくてもいいから、
必ずどこかに救いがあることを感じさせる終わり方をさせるように留意しています。
大げさかもしれませんが、それは小説の絶対的な“使命”ではないかとも思っています。
この「天満川」も、内容は比較的ヘビーですが、最後にささやかな“希望”を添えて
物語は終わっています。
僕自身、この物語で最も好きなシーンは、その“微かな希望”を綴った最後のシーンかも知れません。
「天満川」電子書籍サイト→
http://rikiru.wook.jp/detail.html?id=207948