rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

山に抱かれたスイス:マッターホルン地方

2012-08-25 11:50:41 | 街たち
「にじいろジーン 地球まるごと見聞録」イタリアとの国境アルプスにあるマッターホルンを頂く地方。
その中心、ツェルマットは、7月から9月にかけての平均気温17度と避暑にもってこいのところ。
観光立国でもあるスイスにあって、ツェルマットは、環境と観光にことさら力を入れているのだろう、ガソリン車禁止、市内の交通手段は馬車と電気自動車に限られる。
景観美化のために、ベランダを必ず花で飾ること、主に色鮮やかなゼラニウムでと、細かくルールを定めている。
特にハイシーズンでもある雪のない季節、青い空を裂くような雪渓の残るマッターホルンを背景に、漆喰の白と焦げ茶色の木の壁に鮮烈な赤いゼラニウムの花、草木の緑のとり合わせは、正統派の絶景である。
そこに、ゴート・ツアーといって街中をヤギたちが行進するのに出会えたなら、思わずペーターを探したくなりそうだ。

ツェルマットからゴルナーグラート鉄道のアプト式ラックレール登山電車で30分の山頂に上る。
この登山電車は、急な勾配を登るために歯車のような噛み合わせのレールとギアで
電車を確実に運行させる。
そして、ご存知の方も多いだろうが、底の斜めのグラスが、この鉄道の風物になっている。
ちなみに我が家にも、お土産でもらったこのグラスが2つほどある。

ツェルマットから、高速ケーブル”マッターホルン・エクスプレス”で21分で、マッターホルン・グレッシャー・パラダイスは、夏でもマイナス4度の世界。
スキーやスノーボードができるほどだ。
山中に作られたエレベーターであがると3883mの世界で最も高い展望台があり、モンブランなども見渡せる360度のパノラマが開ける。
この展望台からは、”氷の宮殿”氷河を堪能できる氷の洞窟へ降りられる。
グレッシャー・パラダイスからの下り方に、ダート・スクーターというものがある。
まず、ふもとの駅でスクーターを借り、途中の駅にスクーターを預け、帰りはその途中の駅からダート・スクーターで下っていくというもの。
ダート・スクーターは、下り専用で、バギーのような太い小径二車輪。
周りの景色を見ながら、なかなか爽快そうである。

ツェルマットから電車で2時間のところに、”アルプスの真珠”といわれるサース・フェーがある。
ここも、街のルールとして建物の外壁には必ず木を使わなくてはならないというのがある。
もちろん、ガソリン車乗り入れ禁止、馬車と電気自動車可は、ツェルマットに同じ。
街からゴンドラで上に上がると、アルプスの峰峰を望め、世界遺産でもある”リーダー・アルプ”からは、全長20キロメートル、深さ800メートルの壮大なアレッチ氷河を展望できる。
このサース・フェーあたりをハイキングするときは、専門の山岳ガイドと一緒だ。
ハイキングをしながら、マーモットの巣穴探しや、マーモットにえさを与えたりと動物とのふれあいを楽しめるらしい。

さてさて、グルメ。
ツェルマットには、おいしいソーセージがある。
ポークとチキンがあり、人気は白いポークソーセージをパリッと焼いてパンではさんだものとか。
うれしいファストフード。
たしか・・・ヴァリサート・ロッケーブライスといっていたか、牛肉を調味液で漬け込み薄くスライスしたもの、ローストビーフとカルパッチョの折衷型で、どんなものか食べてみたい。
それから、スイスといえばフォンデュだが、チーズではなくてコンソメスープでしゃぶしゃぶするフォンデュ・シノワーズがある。
日本人の好みとして、さっぱりとしたこちらがたくさん食べられそうだ。
タルタルソースやカレーソース、クランベリーソースなどをつけて味わう。
ここでは、祝いの席の食べ物になっているとか。
みんなで鍋を囲んでしゃぶしゃぶするなど、我々に馴染み深い作法であるよ。

スイスはとにかく割り切りよい国という印象がある。
ひたすら美しく国を整備して飾り、観光に主眼を置くこと。
永世中立国の立場をとり、ニュートラルな銀行経営で、来るもの拒まずの姿勢。
国民皆兵。
明と暗がはっきりしている。
歴史的に強国に取り囲まれ、資源に乏しく、農耕に不向きと、厳しい環境が作用しているのは紛れもない。
人がつくる国家というものは、いずれにせよ矛盾だらけなのだ、誰も責めてばかりいられない。
ただ、美しすぎるとその反動で闇がより深く見えてしまうのが、なんとも気の毒なのだ。
そんなスイスに行って、この目で美しさを確かめ、闇に思いをはせてみたい誘惑はなかなかに強いのであった。