rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

ほのめかしの、クイーン ”I Want To Break Free”

2014-05-01 15:45:48 | 音楽たちーいろいろ



Queen - I Want To Break Free

はじめてこのミュージックビデオを見たとき、言い知れぬ衝撃を受けた。
日本において男性が女形を演じるのはもはや古典芸能であるが、口ひげを生やしたマッチョな男性のぴっちりと体に沿った衣装をつけてしなを作る様は、十代の私の目には異形の者としか映らない。
そしてそのあとのニジンスキーによる問題作「牧神の午後」が来たならば、淫猥な気配がむんむんとして、どうもこれは表面的な意味ばかりではないもうひとつの隠された意味があると大して知識がなくとも感知できる、ぎりぎりの表現をしている。
もっともこのビデオばかりが特別というわけではなく、性的なきわどい表現を扱うミュージックビデオは数知れず。

先ごろ読んでいた筒井康隆の「聖痕」ではないけれど、そもそも芸術はリビドーから生まれ来て、その大きさと昇華能力において作品の優劣が決まると常日頃感じていた。
つまりどれだけ変態かということだが、よっておおむね芸術や美とは変態のなせる業といえようか。
だから、ほのめかしは究極の芸術的表現であり、隠された意味を掘り出せるかどうかは、鑑賞者の内面に共鳴する要素を持ち合わせるかにかかっている。
今までたくさんの本を読み、多くの音楽を聴き、芸術を鑑賞してきたけれど、いったいどれほどのほのめかしを感知できただろうか。
いっぱい取りこぼしていそうで口惜しくてならない。

既存の価値観ばかりでなく、自分で作った偏見の牢獄に囚われてなかなか抜け出せないけれど、真の美を求めていきたい。
もしかしたら、このような自分の無意識にこの曲が触れたのだとしたら、したからこそ、30年前に聴いた後ずっと忘れないでいたのかもしれない。