エゴン・シーレは、かなりきわどい作品をたくさん描いた。
彼自身の趣味ばかりではない、きちんとした需要もあったのだ。
彼の師匠のギュスターブ・クリムトも多くのエロティックな作品を描き、または下書きに丁寧に女性器を描き込んでその上に文様を重ね描くなど、かなり手の込んだこともしている。
はっきりいってポルノグラフィといえるような作品だ。
しかし、彼らばかりがそのような絵を描いていたわけではなく、描かなかった画家をあげたほうが早いだろう。
その対象は、女性でもあり男性でもあり、ポンペイの壁画からミケランジェロしかり、レンブラントもドラクロワもピカソも何かしらの手法で描いた。
場合によっては性交している場面を描いたものだってある。
さすがに、そこまで具体的な行為を描写したものが美術館に展示されているところに出くわしたことはなく、たぶん画集などに載せるに止まっているのだろう。
何が芸術でどこからが猥褻物なのか線引きは難しい。
あからさまに露骨で淫猥なものは、公共の場に陳列するのは憚られるけれど、それを言うならばDVDレンタルショップや本屋にリサイクルショップなどに堂々と貼られている二次元のエロゲーのポスターや、子供目線の高さに平積みになっているアダルトコーナー一歩手前のコミックなど、かなり際どいものが氾濫しているのはいかがなものか。
ネットの世界にもペアレントコントロールなどものともしない卑猥な画像が無制限に漂流している。
過度に性を隠蔽してしまうのも、際限なく開いてしまうのも、両方違う。
人体についてそれに伴う性の表層部分ならば、とやかく言うのはいいと思えない。
表現の自由ですべてがまかり通るなどと驕ってしまう危険性を孕んでいるが、今回の3Dプリンター用女性器のデーターを頒布した女性芸術家の逮捕はいささか行き過ぎのような気がするのだ。