高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・021
『艦内の課業効率は微妙に落ちている』
木星公転軌道上を光の速さで周回している。
その間、カワチ各部では各部各科で運行訓練が行われ、改善点は、その日の内に修正されていく。
新造艦で言うところの完熟航行をやっているのだ。
で、艦内の課業効率は微妙に落ちている。
戦闘部署、緊急部署、作業部署に分かれ、分隊ごとに行う。
一般乗員は全員がガイノイド、いわゆる女性型アンドロイドなので常に情報の並列化が行われていて、部署長の意思は瞬時に共有される。発令と同時に全員が任務に取り掛かるのでタイムラグが無い。
タイムラグが出てくるのは、発令者が人間であるからだ。
「砲雷長、撃破まで五分もタイムオーバーしていますね」
課業終了後、長官公室に部署長が集まった席で航海長の千早が指摘する。
「はあ……せん滅よりも無力化を優先にした砲雷撃に切り替えてみようと思うんです」
砲雷長の山本は敵の心臓を貫くよりも、その手足である戦闘力を迅速に無力化することに力を入れ始めている。
「この方が、結果的には我が方の損失をミニマムにして効果を上げられると思うんです」
「その割には、敵巡洋艦を討ち漏らして魚雷二発をトドメに食らってしまったわね」
「中破判定の敵艦の火力が生きていて、まさか斜め後ろから撃たれるとは……というところです」
「砲雷長はゲーム屋らしく、この運行訓練をスピンオフ前のバグつぶしと思ってらっしゃるのかしら」
飛行長の美樹は可笑しそうに砲雷長をからかう。
「いいや、絶えずユーザーの気持ちでやらんと、すぐに裏技を開発されてゲームを陳腐化されてしまうからなあ。そないなったら、どんなにゲームバランスが良かっても、グラフィックが綺麗でもクソゲー認定されてしまうよってなあ」
「ハハ、敵はオタクですか?」
「いやいや、オタクは世界を変えるねんで。オタクを念頭に置いて作戦練るのは大事やと思う」
砲雷長の目の奥がキラリと光る。
「できたら事前に教えといて欲しいわね。とっさの舵取りが間に合わなくて混乱する」
「その時その時の閃きやからね、ま、阿吽の呼吸になるまでがんばりましょ」
「言うわね、期待しとく。でもね、いま砲雷長の頭にあるプランだけでも示してもらえないかな。当面の事さえわかっていたら、こっちの舵取りも早くなるから」
「ほんなら、このあと、シミレーションやっときましょか」
「そうね、フタマル時からなら」
「ほんならガンルームで。みなさんも良かったら……」
「わたしは勘弁してもらう」
「付き合い悪いなあ船務長」
「納得できないのよ、異次元だか異星人だか知らないけど、命を奪ったり破壊したりすることに熱中するのが理解できない。戦う前にネゴシエートすることに力を注ぐべきじゃないのかしら。わたしはお先に失礼するわ」
中村船務長はテーブルを叩くようにして立ち上がり出て行ってしまった。
チームワークを第一に考える艦長は、こう締めくくった。
「まだ碇を上げたばかりだ、最初から一致団結しているよりも本音がぶつかり合う方がいいさ」
そう言いながら、千早に一言言い含める艦長であった。
木星公転軌道上を光の速さで周回している。
その間、カワチ各部では各部各科で運行訓練が行われ、改善点は、その日の内に修正されていく。
新造艦で言うところの完熟航行をやっているのだ。
で、艦内の課業効率は微妙に落ちている。
戦闘部署、緊急部署、作業部署に分かれ、分隊ごとに行う。
一般乗員は全員がガイノイド、いわゆる女性型アンドロイドなので常に情報の並列化が行われていて、部署長の意思は瞬時に共有される。発令と同時に全員が任務に取り掛かるのでタイムラグが無い。
タイムラグが出てくるのは、発令者が人間であるからだ。
「砲雷長、撃破まで五分もタイムオーバーしていますね」
課業終了後、長官公室に部署長が集まった席で航海長の千早が指摘する。
「はあ……せん滅よりも無力化を優先にした砲雷撃に切り替えてみようと思うんです」
砲雷長の山本は敵の心臓を貫くよりも、その手足である戦闘力を迅速に無力化することに力を入れ始めている。
「この方が、結果的には我が方の損失をミニマムにして効果を上げられると思うんです」
「その割には、敵巡洋艦を討ち漏らして魚雷二発をトドメに食らってしまったわね」
「中破判定の敵艦の火力が生きていて、まさか斜め後ろから撃たれるとは……というところです」
「砲雷長はゲーム屋らしく、この運行訓練をスピンオフ前のバグつぶしと思ってらっしゃるのかしら」
飛行長の美樹は可笑しそうに砲雷長をからかう。
「いいや、絶えずユーザーの気持ちでやらんと、すぐに裏技を開発されてゲームを陳腐化されてしまうからなあ。そないなったら、どんなにゲームバランスが良かっても、グラフィックが綺麗でもクソゲー認定されてしまうよってなあ」
「ハハ、敵はオタクですか?」
「いやいや、オタクは世界を変えるねんで。オタクを念頭に置いて作戦練るのは大事やと思う」
砲雷長の目の奥がキラリと光る。
「できたら事前に教えといて欲しいわね。とっさの舵取りが間に合わなくて混乱する」
「その時その時の閃きやからね、ま、阿吽の呼吸になるまでがんばりましょ」
「言うわね、期待しとく。でもね、いま砲雷長の頭にあるプランだけでも示してもらえないかな。当面の事さえわかっていたら、こっちの舵取りも早くなるから」
「ほんなら、このあと、シミレーションやっときましょか」
「そうね、フタマル時からなら」
「ほんならガンルームで。みなさんも良かったら……」
「わたしは勘弁してもらう」
「付き合い悪いなあ船務長」
「納得できないのよ、異次元だか異星人だか知らないけど、命を奪ったり破壊したりすることに熱中するのが理解できない。戦う前にネゴシエートすることに力を注ぐべきじゃないのかしら。わたしはお先に失礼するわ」
中村船務長はテーブルを叩くようにして立ち上がり出て行ってしまった。
チームワークを第一に考える艦長は、こう締めくくった。
「まだ碇を上げたばかりだ、最初から一致団結しているよりも本音がぶつかり合う方がいいさ」
そう言いながら、千早に一言言い含める艦長であった。