大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・021『艦内の課業効率は微妙に落ちている』

2019-05-04 06:36:04 | ノベル2
高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・021 
 『艦内の課業効率は微妙に落ちている』                   




 木星公転軌道上を光の速さで周回している。

 その間、カワチ各部では各部各科で運行訓練が行われ、改善点は、その日の内に修正されていく。
 新造艦で言うところの完熟航行をやっているのだ。

 で、艦内の課業効率は微妙に落ちている。

 戦闘部署、緊急部署、作業部署に分かれ、分隊ごとに行う。
 一般乗員は全員がガイノイド、いわゆる女性型アンドロイドなので常に情報の並列化が行われていて、部署長の意思は瞬時に共有される。発令と同時に全員が任務に取り掛かるのでタイムラグが無い。
 タイムラグが出てくるのは、発令者が人間であるからだ。

「砲雷長、撃破まで五分もタイムオーバーしていますね」

 課業終了後、長官公室に部署長が集まった席で航海長の千早が指摘する。
「はあ……せん滅よりも無力化を優先にした砲雷撃に切り替えてみようと思うんです」
 砲雷長の山本は敵の心臓を貫くよりも、その手足である戦闘力を迅速に無力化することに力を入れ始めている。
「この方が、結果的には我が方の損失をミニマムにして効果を上げられると思うんです」
「その割には、敵巡洋艦を討ち漏らして魚雷二発をトドメに食らってしまったわね」
「中破判定の敵艦の火力が生きていて、まさか斜め後ろから撃たれるとは……というところです」
「砲雷長はゲーム屋らしく、この運行訓練をスピンオフ前のバグつぶしと思ってらっしゃるのかしら」
 飛行長の美樹は可笑しそうに砲雷長をからかう。
「いいや、絶えずユーザーの気持ちでやらんと、すぐに裏技を開発されてゲームを陳腐化されてしまうからなあ。そないなったら、どんなにゲームバランスが良かっても、グラフィックが綺麗でもクソゲー認定されてしまうよってなあ」
「ハハ、敵はオタクですか?」
「いやいや、オタクは世界を変えるねんで。オタクを念頭に置いて作戦練るのは大事やと思う」
 砲雷長の目の奥がキラリと光る。
「できたら事前に教えといて欲しいわね。とっさの舵取りが間に合わなくて混乱する」
「その時その時の閃きやからね、ま、阿吽の呼吸になるまでがんばりましょ」
「言うわね、期待しとく。でもね、いま砲雷長の頭にあるプランだけでも示してもらえないかな。当面の事さえわかっていたら、こっちの舵取りも早くなるから」
「ほんなら、このあと、シミレーションやっときましょか」
「そうね、フタマル時からなら」
「ほんならガンルームで。みなさんも良かったら……」
「わたしは勘弁してもらう」
「付き合い悪いなあ船務長」
「納得できないのよ、異次元だか異星人だか知らないけど、命を奪ったり破壊したりすることに熱中するのが理解できない。戦う前にネゴシエートすることに力を注ぐべきじゃないのかしら。わたしはお先に失礼するわ」
 中村船務長はテーブルを叩くようにして立ち上がり出て行ってしまった。

 チームワークを第一に考える艦長は、こう締めくくった。

「まだ碇を上げたばかりだ、最初から一致団結しているよりも本音がぶつかり合う方がいいさ」

 そう言いながら、千早に一言言い含める艦長であった。
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高校ライトノベル・時かける少女・88・スタートラック『恒星ケプラー69C』

2019-05-04 06:20:38 | 時かける少女
時かける少女・88スタートラック 
 『恒星ケプラー69C』         



「元の宙域に戻って、恒星ケプラー69Cを目指すんだ」

 マクダラはコスモセイバーを収めると、静かに言った。

「なんで、マクダラが……」
「こないだの恩返し……なんて言ったら気持ちが悪いかい?」
「うん、キショクワルイ」
「ハハ、怪我の療養を兼ねてクリミア星で古文書を検索していたらね。恒星ケプラー69Cにお宝がありそうな情報にぶちあたってね。ワープを重ねてやってきたら、向こうからコンタクトしてきた。まず、ジョージ・マーク船長のファルコン・Zを寄こせってね」
「そんなのを、まっとうに信じるタマか?」
「シカトして行こうとしたんだけどね、エンジンが動かなくなっちまってさ。ケプラー以外の方向なら動くんだけどね。そこでマゴマゴしていたら、この亜空間にジャンプするように言ってきやがった。どうやら、あんたらがケプラーに行かなきゃ、話にならないらしい。伝言は以上。アルルカンは……」

 アルルカンの胴と首が消えていた。

「……船長、アルルカンが存在していた痕跡が……」
 コスモエネルギーをチャージしたコスモスが、弱々しい声で言った。
「なにか、とんでもない意志が働いているね……じゃ、マーク船長、あとは頼んだぜ」

 マクダラは、自分の船に戻っていった。

「船長、ファルコン・Zが自分の意志で動いています」
 船はバルスのコントロールを受け付けず、もとの宙域に戻った。
「アルルカンの痕跡も、船の航跡のあともありません。時間は大使船が蒸発した時間の10秒後です」
「あれだけの船が蒸発したんや、熱反応や衝撃波ぐらい残って……へんわ」
「船長、ミナホがなにか呟いている……」

「*:;+@&%$#:***54###`@@&@$$%$##””:**@@**;++|¥$#……」

「解析不能です。船が、言語をリフレインして、なにかインストールし始めました!」
 完全にエネルギーをチャージし終えたコスモスが興奮気味に言った。
「マリア王女、どうやらベータ星には、立ち寄れそうもありまへんなあ」
「この船を動かしている意志に従うほかないようですね」
「信じられません、船長……船が、ワープし始めて……とんでもないエネルギーです!」
「衝撃に備えろ!」

 しかし、衝撃は、やってこなかった。衝撃も無くファルコン・Zは2000光年以上を瞬時にワープした。

 そして目の前には、恒星ケプラー69C第3惑星が青く光って迫ってきた……。


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