今日から中間テスト!
学校は午前中だけで、テストだけやっておしまい。
小学校の時は、平日の授業の中でテストが行われたんで、まるまるテストいうのは新鮮!
いつもは机の中に教科書やらノートやらゴチャゴチャ入ってんねんけど、そんなんは一切出してテストに臨む。
机の上には筆記用具だけで、下敷きも出したらあかんねん。
せやさかい、なんや気持ちが引き締まる。
監督の先生が入ってきて、問題と解答用紙が配られるけど、すぐには書かれへん。
「ええか、先生が『かかれ』言うまで表むけたらあきません。取り掛かったら、最初にクラスと出席番号と氏名を書く。時計のアラームは切って、スマホは電源を切っておくこと。では、今から配ります」
先生が最前列ごとに問題用紙と解答用紙を置いて行って、順繰りに前から後ろの席にまわしていく。
ふだんはイチビリの瀬田や田中が真面目な顔してるのもおかしい。
「はい、やめー! 列の後ろの人、解答用紙だけ集めなさい! 先生の確認が終わるまで立ったり喋ったりしてはいけません」
先生の声で三時間目のテストが終わる。
隣のクラスから軽いどよめき。いかにも頑張ったテストが終わったいう感じ。それに比べて、うちの一組はシラ~っとしてる。二か月足らずで、それぞれのクラスに個性が現れてきたんやなあと思う。
テスト期間中は掃除当番もない。部活もないよって留美ちゃんといっしょに教室を出る。
あ!?
校舎を出てビックリした。
校門手前の広場に特設ステージが出来てて、ステージの上に気色悪い人らが立ってる。
女子の制服着た男子二人と、男子の制服着た女子。
三人の上には横断幕があって『性差のない制服を考える会』と書いてある。
「ちょ、あれ頼子さん!」
留美ちゃんが目を丸くして立ち止まった。
確かに、女装の男子に挟まれてる男装の麗人は頼子さんや。うちらは、こないだの部活で見てるから一発で分かったけど。せやなかったら、目ぇ合わせたないよって、さっさと通り過ぎたやろと思う。
「三年生有志は、性差のない制服の改訂を考えています。女子がズボンを、男子がスカートを穿いてもいいんじゃないかと考えています。もしよかったら、感想をお聞かせください……」
男子二人はテレテレやけど、頼子さんは宝塚の男役みたいにカッコいい。そのうちに上着を脱いでスピーチを続ける頼子さん。
胸張って堂々と喋るもんやさかい、例のCカップと思しきバストも強調されて、いやはや……ですわ。
よう見ると、ステージの横には三年の女子三人が控えてて、机の上に置いたプリントに感想書いて欲しいとアピールしてる。
ステージの頼子さんと目ぇが合いそうになったけど、幸か不幸か目えは合いません。
そそくさと正門に向かって歩く。
なんでや、頼子さんは反対やったはずやのに?
思たけど、あたしも留美ちゃんも口を利かずに正門を出てしまった。
☆・・主な登場人物・・☆
- 酒井 さくら この物語の主人公 安泰中学一年
- 酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。
- 酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
- 酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主
- 酒井 詩 さくらの従姉 聖真理愛女学院高校二年生
- 酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
- 榊原留美 さくらの同級生
- 夕陽丘・スミス・頼子 文芸部部長
- 瀬田と田中 クラスメート
- 菅井先生 担任
- 春日先生 学年主任
- 米屋のお婆ちゃん