大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・030『カスタムアイドルは進化する』

2019-05-13 06:28:05 | ノベル2
高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・030
『カスタムアイドルは進化する』


 ゲームには著作権がある。

 当たり前だが、ユーザーが勝手に改変したり、改変したものをアップロードすることは違法なのだ。

「砲雷長、まずいんじゃないかな……」

 井上多聞補給長は眉間にしわを寄せて砲雷長に呟いた。
 呟いてはいるのだが、コーヒー片手に明後日の方を見ながらなので、山本砲雷長は笑ってしまう。
「笑ってる場合じゃないと思うんだが……」
「申し訳ない、ひょっとして『かすたむアイドル』のこと?」
「ああ、みんな好き勝手にいじり始めてる」
 
 たこ焼きと並んで『カスタムアイドル』はブームになっている。

 自分の好みでバーチャルアイドルをカスタマイズし、ライブで歌わせて、その優劣を競うというゲームだ。
 ツクヨミ激突事件で沈滞した艦内の空気を変えようと、砲雷長が元職のゲームクリエーターに戻って作った。カスタムしたアイドルにはAIが搭載されていて、ユーザーとの会話や育成で成長していく。

 歌って踊って会話が出来る!

 ユーザーの乗組員たちは、歌って踊るだけではなくて、格闘やシューティング恋愛趣味レーションの要素など、他のゲームと融合させて楽しみ始めた。
 機関科ではグランツーリスモと融合させ、レースに余念がない。砲雷科ではシューティングゲームに、補給科ではシムシティーとAトレインの要素が入って壮大な都市経営と人生のシミレーションが流行っている。
 他にも分隊や科の枠を超え、ADVやRPGのようになってしまったものもある。
 補給長がビックリしたのは、アイドル達をヌードダンサーに特化させ、ストリップの技量を競ってたことだ。
「ちょっと、これじゃ……」
 補給科の乗員に言うと「そうですか……」という真摯な答えが返ってきて、さすがは自分の部下!と喜んだ。
 しかし、二時間後に覗いてみると、殺しや犯罪なんでもありというゲームに変わってしまい、部下たちは喜々として「死ね!」「殺せ!」「ファック!」などと言いながらコントローラーをカチャカチャやっているではないか!

 砲雷長は可笑しくなった。

 補給長の目くじらの立て方が、いかにも学校の先生なのだ。
 ゲームの中身に不満があるくせに著作権の問題にすり替え、砲雷長に抗議しているのだ。
 だが砲雷長はニコニコ笑っているだけだ。
「著作権フリーのゲームよ、それに乗組員の子たちがどう変化させるか楽しみじゃない」
 手の空いた航海長がスマホを操作しながら二人の会話に加わった。
「航海長も!?」
 補給長は目をむいた。
「見てよ、これ」
「こ、これは……!?」

 スマホの画面には首から上はアイドル時代の中村清美、華奢な小顔がツンツンしていてスレンダーなボディーは――保護してあげなきゃ!――とファンをキュンキュンさせる萌え萌えであったものが、なんと、ストリートファイターの春麗のごときイカツサなのだ!

「メガっさ強いのよ、HPもMPも限界突破でさ、あたるとこ敵なしよ!」
「すごい素子さん! ゲーム設定解析しまくらなくちゃ限界突破設定できないんだよ、それも最初の一人一回ポッキリなんだぜ!」
「へへ、伊達に航海長やってないわよ」
「し、しかし、小動物がごときアイドルの体をキングコングのようにするのは……し、しょ、肖像権の侵害じゃ!?」
 補給長は涙を浮かべ拳を震わせているではないか!
「え……井上先生、ひょっとして……キヨミスト?」
「え、あ、そ、それは……と、とにかく、だ、ダメです! 校則違反です!」

 補給長は真っ赤な顔をして食堂を飛び出して行ってしまった……。
 
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高校ライトノベル・新 時かける少女・7〈オスプレイ緊急試乗〉

2019-05-13 06:03:09 | 時かける少女
新 かける少女・7
〈オスプレイ緊急試乗〉


 
「一発乗って確かめてみるか!」

 エリ-の提案は、なかなか実現しなかった。あたりまえっちゃ、あたりまえ。あんなのに簡単に試乗できるわけがない。

 大きなのと小さなのと、二つの気がかりがあった。

 大きな気がかりは、那覇に来るときの宇土さん。この人は正体不明だけど、あたしの命を狙っていた。そして、海に飛び込む寸前に言った言葉「……それは、愛ちゃんが総理大臣の娘だからよ」
 あたしを守ってくれた運転手さんは「あれは、注意をそらすためのブラフだよ」って言った。その通りの状況だったけど。あたしが南方方面遊撃特殊部隊の連隊長の娘であっても大げさなんじゃ……という気がする。

 小さな気がかりは、あたしの真似をする子が出てきたこと。

 あたしは、長崎の前は東京に長くいた。だから、言葉や、なんとなくの雰囲気に東京の匂いがするらしい。スカートの丈は、みんなより微妙に長い。ブラウスの第一ボタンは外すけど、リボンは、そんなにルーズにはしない。俯いたときに人から胸の谷間が見えないための工夫。で、前髪は少し切ってオデコのところでヒラヒラさせている。これは、単に暑いから。汗でおでこに前髪が貼り付くのヤだもん。ブラウスの袖は七分にまくり上げる。熱い戸外と冷房の効いた教室の両方に間に合うようとの合理性だけ。

 でも、二組の愛はイケテルってウワサになった。

 あたしはブスってほどじゃないけど、特別可愛くもない。東京弁を喋ることと、単に東京の子というだけのこと。連休明けになると、あたしが見ても驚くようなそっくりな子が現れ始めた。

「フフ、あの子も愛のこと真似してる」

 エリーが、電柱一本分前を歩いている子を見て笑った。あたしは、暑さに耐えきれず髪をアップにしてお団子にしていた。
 その時、一台のスモークを張ったクーペが静かにあたし達の横を通った……と、思う間もなくアクセルをふかし、前を歩いていた、あたしのソックリさんを跳ね上げた!
 
 え!?
 
 その子は悲鳴を上げる間もなく十メートルほど跳ねられ、歩道に落ちて二回転ほどして動かなくなった。クーペは一目散に逃げていった。

 道路はパニック状態になった。

「愛、ヤバイ!」
 エリーに突き飛ばされると、あたしのすぐ横をナイフを腰ダメにした男子生徒が走り抜けていった。
「チ」と、舌打ちをすると、その男子生徒は器用にナイフをしまい込むと、生徒達の群れの中に溶け込んでしまった。
 歩道に転がった子の頭からは、どんどん血が流れて、あたりを血の池にしていた。
「なんとかしてあげなくっちゃ!」
「なんとかしなきゃならないのは、あんたよ。こっち来て!」

 エリーは、大通りまであたしを引っ張っていくと、生徒手帳を振りかざして、通り合わせた米軍の四駆を停めた。そして流ちょうな英語で二言ほど喋ると、四駆の後ろのドアが開き、エリーはあたしを押し込んだ。

 四駆は、猛スピードで走り始め、その間、あたしはエリーに覆い被さられてシートに貼り付いていた。

 止まったのは米軍基地のゲートの前。運ちゃんと門衛の兵隊さんが言葉を交わすと、車は基地の奥深くに入っていった。
 
「さあ、オスプレイの試乗をするわよ!」

 エリーは、そう言うと制服を脱いで米軍の戦闘服に着替え始めた。
 
「ボーっとしてないで、愛も着替えるの!」
 
 特殊な服なので、ノロノロ着替えていると、同じような体格の女性兵士が、リカちゃん人形のように着替えさせてくれて、あろうことか、あたしの制服を着だした。

「あの、これって……」

 二機のオスプレイが待機していた。両方に八人ほどの米兵が乗り込み、あたしたちも、その中に紛れた。

 驚いたことに、エリ-とあたしの制服を着たソックリさんが、それぞれのオスプレイに乗り込んだ。

 そして、二機のオスプレイは、どこともなく飛びたつのだった……。
 
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高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・03』

2019-05-13 06:00:46 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
はるか 真田山学院高校演劇部物語・03  
 
 
 
 
『第一章 ホンワカはるかの再出発・3 学食と図書室』

 学食でおったまげた。
 
「たぬきそば」をたのんだら、なんとそばの上に煮染めたウスアゲが載ってるじゃないの! 
 これは「きつねそば」だ。たぬきがきつねに化けた!
 
 日本は広い。東京で「たぬきそば」って言えば、かけそばの上に揚げ玉と決まったものなのに……。
 
「大阪でたぬきそばって、どこでもこんなの?」
 健康的にきつねうどんをすすっている由香に聞いてみた。
「うん、東京はちゃうのん?」
「うん、かけそばに揚げ玉がのっかってんの」
「かけ……ああ、すうどんのそばバージョン。で、揚げ玉て、なに?」
「なにって、揚げ玉……は、天ぷら揚げたときにプワプワって出てくる……その……」
「その……?」
「……タマタマ!」
「タマタマて……プハハハ、笑ろてしもて食べられへんわ!」
 学食にいた人たちの視線がいっせいに集まり、わたしはホンワカを通り越して、真っ赤になった。
 
「テンカスって言うんだよ、大阪じゃ」
 
 思いがけない標準語が降ってきた。
 標準語の勧めで、食後は図書室に行った。
 標準語の主は、生徒会長の吉川裕也ということなんだけど……ひとまず置いておいて、図書室。
 
 わたしは、大の読書家……って言っても、文学少女というほどでもない。気に入った本をかたっぱしから読む。
「あー、おもしろかった!」
 で、読むのと同じ速度で八割方忘れていってしまう。
 わたしのイニシャルをHGからHBにした張本人は、こう言う。
「はるかは本を読んでるんじゃなくて、食べて排泄してるだけ」
 うまいたとえではあるけども、デリカシーがない。なさすぎ! 
 な・さ・す・ぎ!!!!
 まあ、こんなところでムキになっても仕方ないので、ひとまず先にいきましょう、先に。
 わたしは大阪に来てひとまず少女になってしまったようだ。
 
 ま、それだけ、わたしの転校は急なことだった。そして東京と大阪の文化が違うということなんだ。
 この真田山学院高校の図書室は、創立百年に近い学校だけあって、ざっと見渡して、蔵書数は二万冊に近いとみた。
 ファッション雑誌から、ラノベの「ぼく妹」、なつかしの太宰の全集に、司馬遼太郎全集、ごひいきの氷室冴子さんや伏見つかささん、渋めの瀬戸内寂聴さんの本、おなじみの赤川次郎さんや白鳥士郎さんの新刊も揃っている。あ、三島由紀夫の「金閣寺」の初版本まで……。
 
「いい学校にきた!」
 わたしは、思わずほくそ笑んだ。
「はるかて、ほんまに本好きやねんね」
「え、どうして?」
「よだれが垂れてる」
「ほんと!?」 
 思わず、ハンカチを出す。
「アホ、たとえよ、たとえ」
「その、アホってのはきついなあ、どうせならバカって言ってよ」
 親愛の情を示す単語にまたしても東西の文化の違いを感じつつ、わたしは、無意識に新刊本をつかみカウンターにむかった。
「すみませーん!」
「はるか、本借りるつもり?」
「え、あ……うん」
「はーい……」
 
 ……チェシャネコがやってきた!
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