
『第三章 はるかは、やなやつ!1』
早くも明くる金曜日にはキャストが発表された。一回本読みをしただけであっさりと。
その前に『ノラ』ってお芝居を簡単に紹介しとくわね。
話は二十二世紀。ガタが来たロボットを廃棄場まで、連れてくって、大橋先生の『好子ノラの原点(旧題 ロボット)』ってお芝居の拡大版。
捨てられるロボクンがタロくん先輩。捨てに行く女子高生好子の役が、なんとわたし! なんと主役!
……原型の『好子』ではね。
『ノラ』では、脇役です、はい。
実は、捨てに行く好子の方がロボットってかアンドロイド。
いい、好子がアンドロイド!
で、オーナーである進一のお母さんが、このアンドロイドを細工して亡くなった娘「好子」そっくりに不法にプロミラミング。
その無理がたたって、好子は故障ぎみ。放っておくとCPUが暴走するので、廃棄と決心。
しかし自分を人間と思いこんでいる好子を廃棄家電のように扱うのも忍びない。
そこで、息子(好子の兄)の進一がロボットに化け、その進一が化けたロボットを人間としての好子が廃棄の道行きという設定。
ラストで真実が分かる。
ロボットを廃棄するように見せかけて、好子の動力サーキットのスイッチが切られ、ああ、悲劇のドンデンガエシ!
好子はかくしてスクラップに……後悔にむせび泣き、ロボットのコスを脱ぐ進一。
……だが、ここで奇跡が起こった!
なんと、みんなの愛情が好子のCPUを丈夫にさせていて、修理可能なことがわかりハッピーエンド!
先生はこの原型の『好子』に手を加え、もう二つドンデンガエシを加え、キャラも六人に増やし、なんと全員がキャスト!
まあ、全員がキャスト希望だったから、希望どおりっちゃ、希望どおりなんだけど。こんなのスタッフ無しでやってけんのかなあ、と思いつつ台本を置いた。心配する心の隅で、演劇が楽しくなり始めている……。
と、そこで着メロ。由香からだ……。
――ごめん、花屋のオニイチャンに聞いたら、扱ってはいないけど、今は青いバラもあるんだって。で、新しい花言葉は〈奇跡〉〈神の祝福〉〈夢かなう〉てのもあります!――
さすがは由香。あのバラ園でのショック、上手く隠したつもりだったんだけどね。
わたしも、あの後ネットで調べた。洋酒メーカーが開発に成功したって。
でも、その青は群青からはまだ遠い。
大阪に来て十冊目の本を、ベッドでひっくり返って読んでいると(わたしはじっとして本を読めないタチで、時に他人様にお見せできない格好で読んでいる。で、単にひっくり返ってとだけ描写しときます)机の上に気配……。
なんと、マサカドクンが同じ格好で寝そべって……やおら立ち上がると、なにやら持つ格好をして、なんかドアを開けるしぐさ……ん?
なにやら服を脱ぐしぐさ……なんかしっくりいっている。
あ……これは、わたしのお風呂の入り方そのもの!
髪の洗い方、泡のたてかた、そして……。
(中略)
左足から湯船につかるとこまで。
キサマ、そんなとこまで見てたのか!
やつが湯船代わりに入っていた菓子箱を愛用の広辞苑(いまどき、こんな物を持っている女子高生も珍しい)で、ドスンと封印してやった。
それから、お風呂に入った。いちいちマサカドクンがやった通りにやっているのがシャクに障る。
最初は「湯船には右足から入ってやるぞ!」と決意したんだけど、「おっと……」と思ったときには、左足が湯船につかっていた。
でも、お風呂の入り方に、こんなに自己観察をしたことはない。思わず芝居の基礎練習をやってしまった。
湯船で沈没することはなかったが、大阪に来た二週間あまりがポワポワと頭に浮かんでくる。
ホンワカビューティーはおおむね成功……してはいたが、十日もたつと一部のクラスの子からは、東京のタカビーと思われてしまい、その子たちからはシカトされている。
仕方ないよね、わたしは未熟な坂東(関東地方の古い呼び方)の東エビスなんだからさ、でも大阪に来て「坂東」になってしまった。皮肉だね、世の中。
でも、由香という親友を得られたことには、運命の神さまに感謝。目玉オヤジ大明神に会えたこともね。
早くも明くる金曜日にはキャストが発表された。一回本読みをしただけであっさりと。
その前に『ノラ』ってお芝居を簡単に紹介しとくわね。
話は二十二世紀。ガタが来たロボットを廃棄場まで、連れてくって、大橋先生の『好子ノラの原点(旧題 ロボット)』ってお芝居の拡大版。
捨てられるロボクンがタロくん先輩。捨てに行く女子高生好子の役が、なんとわたし! なんと主役!
……原型の『好子』ではね。
『ノラ』では、脇役です、はい。
実は、捨てに行く好子の方がロボットってかアンドロイド。
いい、好子がアンドロイド!
で、オーナーである進一のお母さんが、このアンドロイドを細工して亡くなった娘「好子」そっくりに不法にプロミラミング。
その無理がたたって、好子は故障ぎみ。放っておくとCPUが暴走するので、廃棄と決心。
しかし自分を人間と思いこんでいる好子を廃棄家電のように扱うのも忍びない。
そこで、息子(好子の兄)の進一がロボットに化け、その進一が化けたロボットを人間としての好子が廃棄の道行きという設定。
ラストで真実が分かる。
ロボットを廃棄するように見せかけて、好子の動力サーキットのスイッチが切られ、ああ、悲劇のドンデンガエシ!
好子はかくしてスクラップに……後悔にむせび泣き、ロボットのコスを脱ぐ進一。
……だが、ここで奇跡が起こった!
なんと、みんなの愛情が好子のCPUを丈夫にさせていて、修理可能なことがわかりハッピーエンド!
先生はこの原型の『好子』に手を加え、もう二つドンデンガエシを加え、キャラも六人に増やし、なんと全員がキャスト!
まあ、全員がキャスト希望だったから、希望どおりっちゃ、希望どおりなんだけど。こんなのスタッフ無しでやってけんのかなあ、と思いつつ台本を置いた。心配する心の隅で、演劇が楽しくなり始めている……。
と、そこで着メロ。由香からだ……。
――ごめん、花屋のオニイチャンに聞いたら、扱ってはいないけど、今は青いバラもあるんだって。で、新しい花言葉は〈奇跡〉〈神の祝福〉〈夢かなう〉てのもあります!――
さすがは由香。あのバラ園でのショック、上手く隠したつもりだったんだけどね。
わたしも、あの後ネットで調べた。洋酒メーカーが開発に成功したって。
でも、その青は群青からはまだ遠い。
大阪に来て十冊目の本を、ベッドでひっくり返って読んでいると(わたしはじっとして本を読めないタチで、時に他人様にお見せできない格好で読んでいる。で、単にひっくり返ってとだけ描写しときます)机の上に気配……。
なんと、マサカドクンが同じ格好で寝そべって……やおら立ち上がると、なにやら持つ格好をして、なんかドアを開けるしぐさ……ん?
なにやら服を脱ぐしぐさ……なんかしっくりいっている。
あ……これは、わたしのお風呂の入り方そのもの!
髪の洗い方、泡のたてかた、そして……。
(中略)
左足から湯船につかるとこまで。
キサマ、そんなとこまで見てたのか!
やつが湯船代わりに入っていた菓子箱を愛用の広辞苑(いまどき、こんな物を持っている女子高生も珍しい)で、ドスンと封印してやった。
それから、お風呂に入った。いちいちマサカドクンがやった通りにやっているのがシャクに障る。
最初は「湯船には右足から入ってやるぞ!」と決意したんだけど、「おっと……」と思ったときには、左足が湯船につかっていた。
でも、お風呂の入り方に、こんなに自己観察をしたことはない。思わず芝居の基礎練習をやってしまった。
湯船で沈没することはなかったが、大阪に来た二週間あまりがポワポワと頭に浮かんでくる。
ホンワカビューティーはおおむね成功……してはいたが、十日もたつと一部のクラスの子からは、東京のタカビーと思われてしまい、その子たちからはシカトされている。
仕方ないよね、わたしは未熟な坂東(関東地方の古い呼び方)の東エビスなんだからさ、でも大阪に来て「坂東」になってしまった。皮肉だね、世の中。
でも、由香という親友を得られたことには、運命の神さまに感謝。目玉オヤジ大明神に会えたこともね。