大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・19』

2019-05-29 06:30:26 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
はるか真田山学院高校演劇部物語・19


 
『第三章 はるかは、やなやつ!1』


 早くも明くる金曜日にはキャストが発表された。一回本読みをしただけであっさりと。

 その前に『ノラ』ってお芝居を簡単に紹介しとくわね。

 話は二十二世紀。ガタが来たロボットを廃棄場まで、連れてくって、大橋先生の『好子ノラの原点(旧題 ロボット)』ってお芝居の拡大版。
 捨てられるロボクンがタロくん先輩。捨てに行く女子高生好子の役が、なんとわたし! なんと主役!
……原型の『好子』ではね。
『ノラ』では、脇役です、はい。
 実は、捨てに行く好子の方がロボットってかアンドロイド。
 いい、好子がアンドロイド! 
 で、オーナーである進一のお母さんが、このアンドロイドを細工して亡くなった娘「好子」そっくりに不法にプロミラミング。
 その無理がたたって、好子は故障ぎみ。放っておくとCPUが暴走するので、廃棄と決心。

 しかし自分を人間と思いこんでいる好子を廃棄家電のように扱うのも忍びない。
 そこで、息子(好子の兄)の進一がロボットに化け、その進一が化けたロボットを人間としての好子が廃棄の道行きという設定。

 ラストで真実が分かる。

 ロボットを廃棄するように見せかけて、好子の動力サーキットのスイッチが切られ、ああ、悲劇のドンデンガエシ! 
 好子はかくしてスクラップに……後悔にむせび泣き、ロボットのコスを脱ぐ進一。
……だが、ここで奇跡が起こった! 
 なんと、みんなの愛情が好子のCPUを丈夫にさせていて、修理可能なことがわかりハッピーエンド!

 先生はこの原型の『好子』に手を加え、もう二つドンデンガエシを加え、キャラも六人に増やし、なんと全員がキャスト!
 まあ、全員がキャスト希望だったから、希望どおりっちゃ、希望どおりなんだけど。こんなのスタッフ無しでやってけんのかなあ、と思いつつ台本を置いた。心配する心の隅で、演劇が楽しくなり始めている……。

 と、そこで着メロ。由香からだ……。

――ごめん、花屋のオニイチャンに聞いたら、扱ってはいないけど、今は青いバラもあるんだって。で、新しい花言葉は〈奇跡〉〈神の祝福〉〈夢かなう〉てのもあります!――

 さすがは由香。あのバラ園でのショック、上手く隠したつもりだったんだけどね。
 わたしも、あの後ネットで調べた。洋酒メーカーが開発に成功したって。
 でも、その青は群青からはまだ遠い。
 
 大阪に来て十冊目の本を、ベッドでひっくり返って読んでいると(わたしはじっとして本を読めないタチで、時に他人様にお見せできない格好で読んでいる。で、単にひっくり返ってとだけ描写しときます)机の上に気配……。
 なんと、マサカドクンが同じ格好で寝そべって……やおら立ち上がると、なにやら持つ格好をして、なんかドアを開けるしぐさ……ん?
 なにやら服を脱ぐしぐさ……なんかしっくりいっている。
 あ……これは、わたしのお風呂の入り方そのもの!
 髪の洗い方、泡のたてかた、そして……。
(中略)
 左足から湯船につかるとこまで。
 キサマ、そんなとこまで見てたのか! 
 やつが湯船代わりに入っていた菓子箱を愛用の広辞苑(いまどき、こんな物を持っている女子高生も珍しい)で、ドスンと封印してやった。

 それから、お風呂に入った。いちいちマサカドクンがやった通りにやっているのがシャクに障る。

 最初は「湯船には右足から入ってやるぞ!」と決意したんだけど、「おっと……」と思ったときには、左足が湯船につかっていた。
 でも、お風呂の入り方に、こんなに自己観察をしたことはない。思わず芝居の基礎練習をやってしまった。
 湯船で沈没することはなかったが、大阪に来た二週間あまりがポワポワと頭に浮かんでくる。
 ホンワカビューティーはおおむね成功……してはいたが、十日もたつと一部のクラスの子からは、東京のタカビーと思われてしまい、その子たちからはシカトされている。
 仕方ないよね、わたしは未熟な坂東(関東地方の古い呼び方)の東エビスなんだからさ、でも大阪に来て「坂東」になってしまった。皮肉だね、世の中。
  でも、由香という親友を得られたことには、運命の神さまに感謝。目玉オヤジ大明神に会えたこともね。
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高校ライトノベル・時かける少女BETA・12《アナスタシア・8》

2019-05-29 06:11:24 | 時かける少女
 時かける少女BETA・12
《アナスタシア・8》            


 
「すごいお堀!」

 馬車から見える皇居を見て、アナはびっくりした。クレムリンの高い塀も大概だが、この深くて広いパレスの堅固さに驚いた。
「これは防御のためじゃないの。先帝の時代に政権を取っていた幕府が、お城ごと献上したのよ」
「革命が起こったの……?」
 アナは、自分自身がこうむった革命の恐ろしさを思い出し、声を潜めてアリサに聞いた。
 身震いしていた。
「多少の血は流れましたが、フランスやアメリカほどではありません。このお城に関して言えば無血開城です」
「その……前の皇帝は……どうなったの?」
「今は公爵に列せられ、相応の待遇を受けておいでです」
「そう……………………よかったわね!」

 心の底からの声であった。自分の家族もそうあってほしいという願いがこもっていた。

 天皇への拝謁は短いものであったが、労りと励ましに溢れていることがアナにはよくわかった。
 そのあとは、一つ年下の皇太子殿下とを含む三人の少年皇族との話になった。真面目で寡黙な皇太子であったが、アナは好感を持った。侍従が「我が皇室は二千年の歴史があります」と流ちょうなロシア語で言うとアナは驚いた。ロマノフ家は高々300年にしかならない。
「わたしは、そんな昔から生きていたわけではありません」
 皇太子殿下は真面目な顔で付け加えられたれた。
「なぜ、日本の皇室はそんなに長く続いておられるのですか?」

 殿下は、少し考えて机の上の料紙に目を向けられた。

「あの紙の上の文鎮のようなものです」
「あのペーパーウェイトですか?」
「そうです」
「……ううん」
「直ぐにお分かりにならなくともけっこうです。今度またお会いしてお答え頂ければ幸いです。これで再会することができます」
 殿下はメガネの下で、かすかに微笑まれた。

「ねえ、アリサ。殿下がおっしゃったペーパーウェイトってどういう意味?」
「さあ、自分で考えなさい」
「もう、アリサったら!」
 言い合いをしているうちに馬車に乗って二重橋を出た。そこで馬車は止まってしまった。目の前に何万人という群衆が集まっていた。そして、前列の何千人かの人たちが「ウラー」という声でロシア人であることが分かった。
「そこにアナの舞台が用意してあるわ。今こそ、ロマノフの皇女として声を掛ける時よ」

 アナは感極まって言葉が無かった。

 宮中は日本人ばかりで、ロシア人は一人もいなかった。革命騒ぎで大使を始め身分のあるものは雲隠れし、逆にロシアからは革命を逃れてたくさんのロシア人が日本に亡命してきていた。その大部分の人たちがここに集まったのだ。

「みなさん、よく生きてここに集まってくださいました。わたしアナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァも生きています。日本のみなさんのお蔭で。そしてわたしは、ここで皆さん方に会って、さらに生かされました。神に与えられた任務を遂行します。偉大な祖国ロシアを共に再建しましょう。再建の主人公はあなたがた当たり前のロシア人です。ロシア人は誇り高い寛容な国民です。たまに飲みすぎて我を忘れることがありますが」
 どっと、笑いと拍手が起こった。
「ロシア人は、寛容で粘り強い民族です!」

 大歓声になって収集が付かなくなった。

「……もう、ちょっと聞いて!」

 オチャッピーな言いように群衆がしんとした。
「わたしははっきり自覚しました。ロシア人一人一人は紙です。ぱっと火が点きやすいけど、すぐに燃え尽きてしまうわ。でも、その一枚一枚が大事なんです。集まって大きな束になれば銃弾も貫くことはできません。まとまって火が点けば、樫木よりも長く燃えていることができます。わたしはそんな紙の束が風に吹かれてバラバラになって飛んでいってしまわないように、ささやかな文鎮になります。けして重石ではありません。みなさん、風に飛ばされないように団結しましょう!」

 ダーーーーン!

 その時歓声とともに一発の銃声がした……!
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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・046『トラクタービーム アンカービーム』

2019-05-29 06:02:28 | ノベル2
高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・046  
『トラクタービーム アンカービーム』




 牽引されています!

 ブリッジのドアを開けると航海長のツバキが飛んできた!

「牽引!? どこからだ!?」
「ケンタウルス座の方角ですが絞り込めません」
「舵がききません!」
「後進強速!」
「すでに後進強速いっぱいです」
「強力なトラクタービームです!」
「直近の惑星! いや、衛星でいい、アンカービームを打ち込め!」
「タイタンが近いです、打ち込みますか!」
「打ち込め!」
「了解!」

 返事をすると、航海長は館内放送のスイッチを入れた。

「タイタンにアンカーを打ち込む! 総員衝撃にそなえよ!」
 ブリッジのスタッフもシートに着きシートベルトをした。
 艦内各科から縛着完了のサインがあがってくる。
「アンカービーム発射5秒前 4 3 2 1 発射!」
 艦尾が振動してマックスのアンカービームが発射されたことが知れた。
 直後艦内の総員が艦首方向にもっていかれそうになる、タイタンにアンカーが撃ち込まれた衝撃だ。
 カワチは相当程度の衝撃を吸収して乗員や艦体に影響が出ないようにスタビライザーが組み込まれているが、ツクヨミとの激突同様に、その限度を超える衝撃であったのだ。
 ただ、ツクヨミの時とは違って予報がされていたので人的被害はゼロである。
「……総員、縛着のまま、縛着のままとせよ!」
「どういうことだい、航海長?」
「艦が完全には停止しません、まだ10ノットの速度で引っ張られています」
「タイタンの公転速度が落ちています」
「とてつもない牽引力です」
「カワチは丈夫な艦だがタイタンをぶら下げたまま飛べるほどじゃないぞ」

 艦長の言葉がスイッチであったかのように、カワチの艦体がギシギシと軋み始めた。

「このままでは艦がもちません!」
「タイタンの表層が千切れ始めています!」
「艦長、どうしますか」
 
 ギギギーーー

 艦体が悲鳴を上げる。
「艦を捨てましょう! このままではアンカーを切っても、その衝撃で艦内はグチャグチャになります!」
「……アンカーを切ろう」
「しかし」
 それ以上は言わなかった。艦長の命令は絶対であるのだが、それ以上に艦長の判断に信頼があるのだ。
 地球を出発して三月ほどになるが、その間に築いた信頼は大きいものがある。
「アンカーを切る! 総員艦尾方向への衝撃に備えよ! 艦尾方向への衝撃に備えよ! 5 4 3 2 切断!」

 とてつもない衝撃が来ると思われたが、衝撃は車の急発進程度であった。

「これは……」
「牽引ビームには意思がありますね、こちらを観察していてライブで操作しているようです」
「乗っかっていくしかないか」
「ビームの発生源がわかりました、プロキシマ・ケンタウリの惑星プロキシマbからです」
「プロキシマb?」

 プロキシマb、 それは地球に最も近いと言われる水のある惑星であった。

 カワチは光速の10倍の速度でプロキシマbに牽引されて行くのであった……。
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高校ライトノベル・連載戯曲 すみれの花さくころ(宝塚に入りたい物語)

2019-05-29 05:49:51 | 戯曲
連載戯曲 すみれの花さくころ・1
(宝塚に入りたい物語) 



※ 無料上演の場合上演料は頂きません。下段に連絡先を記しますので、上演許可はとるようにしてください
 


          

時  ある年のすみれの花のさくころ
所  春川町のあたり

人物 すみれ  高校生
   かおる  すみれと同年輩の幽霊
   ユカ   高校生、すみれの友人
   看護師  ユカと二役でもよい
   赤ちゃん かおると二役


 人との出会いを思わせるようなテーマ曲が、うららかに聞こえる。すみれが一冊の本をかかえて、光の中にうかびあがる。

すみれ: こんちは。あたし畑中すみれです。
 これから始まるお話は、去年の春、あたしが体験した不思議な……ちょっとせつなく、ちょっとおかしな物語です。
 少しうつむいて歩くくせのあるあたしは、目の高さより上で咲く梅とか桜より。
 地面にちょこんと小さく咲いている、すみれとかれんげの花に目がいってしまいます。
 その日、あたしは春休みの宿題をやるぞ! 
 というあっぱれな意気込みで図書館に行き、結局宿題なんかちっともやらないで、こんな本を一冊借りて帰っていくところ。
 あーあ、机の前に座ってすぐに宿題はじめりゃよかったのに。
 つい、なにげに本たちの背中を見てしまったのが運のつき。
 だから、この日、うつむいて歩いていたのは、いつものくせというよりは、自己嫌悪。
 だから、いつもの大通りを避けて、久しぶりで図書館裏。
 春川の土手道をトボトボうつむいて歩いていたのです……
 ところが、そこは春! 泣く子も黙って笑っちゃう春! 
 そのうららかな春の日ざしを浴び、土手のあちこちに咲きはじめた自分と同じ名前の花をながめている。
 ふいに母親譲りの鼻歌などが口をついて出てくるのです。
 春川橋の手前三百メートルくらいに差しかかった時、それが目に入りました。
 保育所脇の道から土手道に上がってくる、あたしと同い年くらいの女の子。
 セーラー服に、だぶっとしたズボン……モンペとかいうのかな。
 胸には、なんだか大きな名札が縫い付けて、肩から斜めのズタブクロ。平和学習で見た映画の人物みたい、一見して変! 
 近づいてくると、もっと変!……あたしと同じ鼻歌を口ずさんでいる! 
 まるで学校の廊下でスケバンのキシモトに出くわした時みたいな気になり。
 目線をあわさぬよう、また、不自然にそらせすぎぬよう、なにげに通りすぎようとした、その時……。

 舞台全体が明るくなり、ちょうど通りすぎようとしている少女、かおるも現れる。
 すれ違った瞬間かおるが知り合いのように挨拶する。


かおる: こんにちは……。
すみれ: こんちは(蚊の鳴くような声だが、かおるにはしっかり伝わる)。
かおる: こんにちは……!
すみれ: こ、こんにちは。
かおる: 通じた!……あたしのことが分かるんだ!?
すみれ: あ、あの……
かおる: わ、わ、通じた!通じちゃった!通じちゃったよ!!
すみれ: あ、あの……。
かおる: あ、あたし、あたし、咲花かおると申します。あたし、ずっとあなたみたいな人が現れるのを待っていたの!
 急にこんなこと言われたって信じられないかもしれないけど。あたし幽霊なんです!
すみれ: ゆ、ゆうれい!!??
かおる: 驚かないでね。人にも幽霊にも、霊波動ってものがあってね、血液型みたいに型があるの。
 あたしの霊波動はめったにない型、RHのマイナス型。百万人に一人ぐらいかな。
 この型に適う人でないと、あたしの姿も見えないし声も聞こえないの。
 人によって幽霊が見えたり見えなかったり、霊感があったりなかったりっていうのは、つまり、つまり、そういうことなの。
 そうなの、あなたの霊波動もRHのマイナスで、しっかりあたしのことが見えて、聞こえるわけなの……わかってもらえた? 
 やっぱり驚かしちゃった?
すみれ: あ、あの、あたし急いでいるから!
かおる: ま、ま、待って!

 すみれ駆け出し、かおるが追う。 



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